集え、荒武者! ワークショップ形式でアジャイル開発を学ぶ
2011年7月に刊行された『アジャイルサムライ――達人開発者への道』(ジョナサン・ラスマセン著、オーム社刊。以下、アジャイルサムライ)を複数人で読み解き知識を習得する“道場”と呼ばれる勉強会が都内近郊だけでも十数か所で開かれ、エンジニアの間で話題となっている。アジャイルサムライ熱が高まりを見せる中、DevLOVE主催の「アジャイルサムライ DevLOVE道場 第一回【萌芽】」が2011年8月25日に開催された。
![アジャイルサムライ読書会 DevLOVE道場、開幕](http://cz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6147/6147_fig1.jpg)
ワークショップ中心の全5回
DevLOVE道場は数ある道場の中でもワークショップを取り扱う初の道場となった。3~5人のチームを組み、「インセプションデッキ」と呼ばれるツールを用いながら、チームで1つのアプリケーションを作り上げる。全5回で、実際の開発は合宿となる予定だ。
チーム参加と個人参加のそれぞれで応募が行われ、参加者は総勢29名の8チーム。事前にチーム割りが発表され、個人参加者もTwitterなどのSNSを通じてコミュニケーションを取った上での参加となった。「無料の勉強会でキャンセルが1人も出なかったのは快挙」とDevLOVEをまとめる市谷 聡啓氏(@papanda)が話してくれたが、それだけ注目を集めているということだろう。
第1回はインセプションデッキの作成
インセプションデッキは数あるアジャイル開発の解説書の中でもアジャイルサムライで初めて取り上げられたツールだという。
インセプションデッキで事前にさまざまなことを決定しておけば、たとえば、実際に開発をはじめた後にメンバー間で意見の相違が起こっても、どの意見を採用すべきかは決定内容を確認すればいい。仮に変更という決断をするときにも事前に決定したこの指標が大切な指針となる。
![インセプションデッキ。回答が難しい手ごわい質問](http://cz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6147/6147_fig2.jpg)
![質問に答えるためのヒントを提示し、ワークショップを促す](http://cz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/6147/6147_fig3.jpg)
インセプションデッキ
インセプションデッキを作成するためには、全部で10個のワークをこなす必要がある(以下、アジャイルサムライより編集部にて概要を要約)。
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我われはなぜここにいるのか?
自分たちの顧客は誰なのかを踏まえてプロジェクトの理由や目的を確認し、その認識が顧客の持つ認識と同じかを確認するワーク。
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エレベーターピッチを作る
エレベータピッチとはエレベータに同乗するほどの限られた時間という意味。30秒間で分かりやすくプロジェクトについて説明できるように文章を作るワーク。
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パッケージデザインを作る
開発するサービスの概観を決定するワーク。見えない成果物であるサービスの広告を作ると仮定してデザインを考え、顧客に対する訴求要素について話し合う。
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やらないことリストを作る
プロジェクトで実現したいことを明確にするワーク。「やること」「やらないこと」をリスト化し視覚化させることで、プロジェクトのスコープ(範囲)を明確にする。
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「ご近所さん」を探せ
プロジェクトの関係者を洗い出し、ステークホルダーを確認するワーク。ここで確認漏れがあると、プロジェクトが終盤に入った段階で決定事項が覆ることもあるので注意が必要。
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解決案を描く
チーム全員で集まってプロジェクトの概要レベルのアーキテクチャ設計図を描くワーク。設計図を描きながらリスクを明確化し、リスクに対する解決策について全員の認識が揃っていることを確認する。
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夜も眠れなくなるような問題は何だろう?
おもにプロジェクトのメンバー間で起こりうるリスクについて事前に話し合うワーク。たとえば、開発リーダーやリードプログラマの退職などもリスクと捉え、最悪の事態を避けるための事前策を話し合う。
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期間を見極める
プロジェクトを完成させるのに必要な期間を大まかにでも決定する。
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何を諦めるのかをはっきりさせる
「期間、スコープ、予算、品質のうち、譲れる要素と譲れない要素を決めておくワーク。各要素の優先順位をできる限り明確にする。
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何がどれだけ必要なのか
プロジェクトについての期間、費用、アサインするメンバーについて考えるワーク。今までの決定事項をもとに決定していく。
これらは回答が難しい「手ごわい質問(Tough Question)」であり、本来ならば数日から2週間程度をかけて、じっくりと決めるものであると、今回のDevLOVE道場を仕切る梶浦 毅一氏(@ShiroKappa)は話す。それでも、意欲的な試みとして1時間という短い時間でこのテーマに取り組むことにしたという。「完全なものができないにしろ、ワークショップを通して座学だけの勉強会では得られない、現場に直結した知識を1つでも形にしていきたい」(梶浦氏)。