先進ITは新しいインフラではなく、革新を起こす道具として捉える
続いて本題となる先進ITに話が移り、コンシュマー系先進ITの主な3要素として「パブリッククラウド」「スマートデバイス(スマートフォン/タブレットPC)」「ソーシャルメディア」を挙げ、これらがエンタープライズITに集約してくると述べた。コンシュマー系の技術がエンタープライズ系に関わってくる理由としては、「経験経済の観点から個人にいかにイノベーションを提供するかが大事な時代。元来個人向けに開発された技術が企業に入り込んでくるのは必然と言える」と説明している。
特にスマートデバイスについては、IT投資動向調査で昨今市場規模と投資意欲が伸びている点や、業務効率向上・売上拡大目的でスマフォデバイスを使う企業が相当数出てきている(調査対象の25%)点などを強調した。
ソーシャルメディアの企業活用面では、注目すべきサービスとして「Twitter」と「Facebook」を挙げた。調査結果によると、他サービスに比べ「業務に使っている・使いたい」の割合が際立って高かったという。また、流行りものとして惰性的な広告手段として使われている傾向も少なくないが、ビジネス利用が始まったばかりにも関わらず、既に成果が出ている企業も一定数存在する、と潜在能力の兆候を示した。
「現在、これらの先進ITはインフラ的な印象があり、現在のビジネスにどう接続するかというアプローチがほとんどだが、まったく逆に、ビジネスイノベーションを起こすためにどう使うかを、前述のような枠組みで考えることで、IT部門からの提案につなげることが重要」と甲元氏は提言する。
最後に甲元氏は、「先進IT採用のリスクやデメリットについては言及していないが、ネガティブ面ばかり気にしていてはイノベーションは創出できない。マネジメント指向(リスク回避、管理、評価、承認)中心のマインドセットではITによるイノベーションが難しい。ビジネス指向(ビジネス成果創出、チャレンジ、模索、コラボレーション)に変えることが重要」と、先進ITをビジネスイノベーションに活用する考え方をまとめた。
先進ITによるイノベーション事例
続いて、インターシステムズジャパンの佐藤比呂志氏が、技術ベンダー視点で先進ITによるイノベーション事例を紹介した。同社はビジョンに「Creative technology partner with a passion for excellence and client success」を掲げる技術指向の高い会社で、代表製品の一つにオブジェクトデータベース「Caché」(キャシエ)がある。パフォーマンスの高いデータベースとして、特に医療系システムにおける適用例が多い。
シニア・マネージャー 佐藤比呂志氏
佐藤氏は、ブレイクスルーを呼ぶアプリケーションの要件、それを支える同社のコア技術、海外における先進事例紹介という順で、話を進めた。
ブレイクスルーを起こすための要件
まず、ブレイクスルーアプリケーションを開発する前提条件として、「昨今の不景気や世の中の変化の速さから、まったく新しいことがやるのが難しいのが現状。短時間でいかにイノベーティブなことをやるかが肝心」と前置きした。
ブレイクスルーアプリケーションの要件としては、スマートデバイスやソーシャルネットワークの急速な普及をフォローアップする「マスパーソナライゼーションの提供」、従来の企業利用の前提から外れていた非正規化データまで活用することによる「100%のデータ解放」、データの捕獲・共有・理解・実行というサイクルを繰り返すことで精度を高めていく「知的な行動」の3点にまとめた。
ブレイクスルーを支える技術
これらを満たす技術要件として、最新UIを活かす能力と疎結合なインターフェイス、高いスケ―ラビリティと反応性、非構造化データのリッチなサポート、量的・質的に高い性能をもつリアルタイム分析機能などを取り上げ、これらをカバーするのが同社の開発プラットフォームだと説明した。具体的には、多次元データベース「Caché」、ユニバーサル統合プラットフォームの「Ensemble」(アンサンブル)、先進的な分析エンジン「DeepSee」(ディープシー)の3つのコアテクノロジーだ。
時間が経つとシステムは複雑になる傾向がある。そのため、同社では「極力シンプルにすることでパワーを提供する」ことに注力している。これは、現在主流のオープンテクノロジーによるテクノロジースタックに対し、すべての機能を持った単一のリッチプラットフォームとして技術を提供している点にも表れている。「このアーキテクチャがもたらす、本来行いたいことに注力できハイパフォーマンスでもあるといった恩恵は、ブレイクスルーアプリケーションを作る上で大きな武器になる」と、佐藤氏は同社技術とイノベーションとの親和性を説明した。
海外の先進事例として、欧州宇宙機関による「最も大きく正確な銀河の3次元マップを作るプロジェクト」、NYSEとNASDAQに続く取引量を誇る「クレディ・スイス社の株式取引システムの改善」、空港の自動バッゲージチェックインシステム「BagDrop」での利用、最小の労力で複数メディア形式対応を可能にした「PCS Knowledge」ニュース配信システム、「オプタラート社の疲労管理システムでの適用」が紹介された。
最後に、佐藤氏はブレイクスルーアプリケーションを作る上で、開発プラットフォームの選択の重要性を強調して講演を締めくくった。
