エンタープライズアプリとスマートデバイスの連携
ここまでは主にクライアントとなるアプリ開発の解説であったが、ここからはサーバーサイドを含めたシステム全体について、東洋ビジネスエンジニアリングの苅田修司氏から紹介された。東洋ビジネスエンジニアリングでは、SAP ERPやSiebelといった他社製品、自社のERPのパッケージMCFrameなどを利用したERMシステムの構築を手がけている。
ERMやCRMといったアプリケーションはPCで利用することが前提というイメージがあるが、保守メンテナンスといったフィールドサービス業務ではモバイルが利用されている。こういったシーンではこれまでノートPCや携帯電話が使われてきたが、「ともに一長一短があった」と苅田氏は語る。携帯電話には常時接続性やショートメッセージによるリアルタイム性があるが、ノートPCのような情報処理性能には欠けている。
こういった問題が「スマートデバイスでかなりカバーされるのではないか。特に常時接続性とリアルタイム性が実現できること、大きな画面や直感的な操作といったリッチなUX・UIを提供できるフロントエンドが大きな特長と考えている」と期待される。
そこで、エンタープライズのフィールドサービス業務というビジネスシナリオにスマートデバイスを適用し、検証的なパイロットシステムを2010年ごろ実際に構築してみたという。このためには、まず図のような業務要件が必要だった。
このうち重要な点がリアルタイムのプッシュメッセージだ。作業指示の即時配信に必要で、指示の新規登録、更新、優先度の変更などがあった時点で端末側でも即時に内容が伝わる仕組みが必要である。合わせて、電波状態が悪くてメッセージが送れない場合のキューイングも想定しなければならない。
今ならiPhoneのAPNS(Apple Push Notification Service)、AndroidではC2DM(Cloud to Device Messaging)、Windows PhoneならMPNS(Microsoft Push Notification Services)とデバイスごとに仕組みがあるが、当時は選択肢としてE-mail、SMS、XMPP、SIPの4つが考えられた。
E-mailはユーザーにもなじみ深く、端末にクライアントが入っているが、メールから業務データを抜き出して次のモバイルアプリに渡す方法が難しく、メッセージの受信と、それをトリガーとしたデータの更新は別のプロセスに分けて構築した。
また、検証システムではAndroidをベースとしていたため、Googleサービスで利用されるXMPPとは相性がよく、生産性も高かったという。ここではOSSのXMPPサーバーを利用したが、Google AppEngile上でもXMPP APIを利用できるため、メッセージ基盤をオンプレミスにもクラウド上にも置くこともできるという。
検証の目的としてはもう一つ、SOA(Service Oriented Architecture)的なシステムの組み合わせ、部品化や疎結合化をモバイルにも拡張できるかがあった。これについては、どのような業務アプリケーション、どのような送信方式、どのような端末(Android、iOS、Windows Phone)でも、同じ動き、同じ業務シナリオを実現できることが実証できたという。
こうした検証の一方で、MCFrameでは端末としてiPhone/iPadを使う取り組みをしている。業務端末としてだけでなく、改善ツールやコミュニケーションにも利用していくため、サーバーサイドの技術とUIの二本立てで取り組みを続けているという。
さらに、端末が持つデバイス、カメラ、バーコードリーダー、各種センサーデータをスマートデバイス側のアプリで組み合わせて新しい価値を提供していきたいと語る。今後はファイルの連携(Officeなど)、地図情報の連携、動画の再生、記録の連携も含めて、これまでやってきたCRMのパイロットシステムを拡張していきたいとした。
最後に全体のまとめとして、手塚氏から「企業ではまとめて予算取りしてしっかりと作っていこうということが多いが、スマートデバイスはまだノウハウが溜まっていないこともあり、最初は小さなパイロットからはじめて、フィードバックしながら継続的に改善を繰り返すことが、全体の成功のためにキーファクターとなる」と語られた。
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