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【デブサミ2012】セッションレポート(AD)

【デブサミ2012】17-D-2 レポート
エンタープライズ領域におけるスマートデバイスアプリ動向

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 本稿では、「Developers Summit 2012」(デブサミ2012)において、2月17日に行われた株式会社ジェナ 代表取締役 手塚康夫氏、東洋ビジネスエンジニアリング株式会社 苅田修司氏によるセッション「エンタープライズにおけるスマートデバイスアプリ開発の未来」の内容を紹介する。  スマートフォンやタブレットPCのようなスマートデバイスは驚くべき速さで普及しており、個人ユーザー向けのサービス/アプリだけでなく、エンタープライズ分野でも存在感を示している。本セッションでは、国内ソフトウェアベンダーが集結するMIJS(Made In Japan Software Consortium)の手塚氏と苅田氏がエンタープライズにおけるスマートデバイスのアプリ開発について、市場動向から実際の構築手順まで幅広く解説した。

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株式会社ジェナ 代表取締役 / MIJS製品技術強化委員会 手塚康夫氏
株式会社ジェナ 代表取締役 / MIJS製品技術強化委員会 手塚康夫氏
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社
クラウドソリューションコンサルティング部 ITアーキテクト
/ MIJS製品技術強化委員会 苅田修司氏
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社 クラウドソリューションコンサルティング部 ITアーキテクト / MIJS製品技術強化委員会 苅田修司氏

スマートデバイスのトレンドとアプリ開発

 セッション前半ではジェナの手塚康夫氏から、スマートデバイス市場の現状とアプリ開発のポイントおよび事例が紹介された。

 手塚氏は「これまでのケータイはPCと比較するとモビリティの面で優れていたが、機能面/UI面では大きく劣っていた。しかしスマートデバイスは機能面/UI面もPCと遜色が無く、これは『進化』だ」として、今後ビジネスでモバイルを導入する際に、既存のフューチャーフォンは候補にあがらない。2015年には契約台数でスマートフォンがモバイルの過半数を占めると予想されるが(MM総研「スマートフォン市場規模の推移・予測(11年7月)」参照)、ビジネスの世界では2~3年前倒しされ導入がすでに進んでいると語る。

 デバイスの種類としては、2011年12月に米国で新規購入されたスマートフォンのOSシェアはiOSとAndroidの2OSが独占しており、そのシェアは肉薄している(Nielsenプレスリリース参考)。またタブレットPCではiPadが圧倒的に強い(IDCプレスリリース参考)。

 このようにスマートデバイスの普及が進むなかで、スマートデバイスアプリ開発ではどのような点に注意すればよいのだろうか。手塚氏は「企画」「設計」「開発・運用」の面からそれぞれ次のようなポイントをあげた。

 企画ではデバイスの特性を活かし、いかにシンプルにするかに重きをおくこと。デバイスが高機能なので、顧客が要件を盛り込みたがることも多いが、機能が5個必要なら5つのアプリにするなど、一つ一つはシンプルにつくるべきという。

 設計では、マルチタッチを活かしたスマートフォンらしさをいかに出すかがポイントになる。「動きがiPadっぽくない」という理由でNGが出ることもあるため、ケータイやPCとは違った独自なデザイナ/クリエイターのノウハウが必要となる。

 開発の際に注意しなければならないのは、OSがバージョンアップしたときの対応である。導入後に全台入れ替えが発生しないよう、アプリを管理者が一元的に配布管理するのか、ユーザー自身が主体的に入れ替えを行うのか、もしくはMDM等のソリューションを用いて管理するのかをあらかじめ想定しておく。

 そもそも企業におけるスマートデバイス利用では、主に以下の3つの用途におけるアプリ開発が主流だ。まず、製品・サービス・ブランドをB2Cでプロモーションする目的のアプリがある。工期は2~3か月で、数百万規模の予算となる。

 次に、既存のPC向けあるいはケータイ向けサービスをスマートフォン対応させる。工期は半年で、数千万かかることもある。特に工数がかかるのがAndroidの全機種対応で、OSのバージョンが同じでも端末ごとに確認が必要となる。

 そして、2012年度から増えると予想されるのが、社内システムと連携したエンタープライズ型。ジェナでは8割がエンタープライズ型開発という。事例として、医薬品を製造・販売する製薬企業で医療営業担当が医師にプレゼンする際に利用するプレゼンテーション支援アプリや、金融機関で金融商品を販売する営業が利用するセールス支援アプリがあげられた。

 興味深いのは、同じ営業ツールであっても対照的なアプローチが取られている点だ。製薬企業におけるアプリの利用では短い時間で効果的に医師にプレゼンするため、動画などリッチコンテンツを利用して視覚的・感覚的に伝えることを重視しているのに対し、金融機関におけるアプリの利用では表紙をシンプルに見せることで営業担当者がこれまでの紙のカタログと同じように使えるよう、iPadらしさをあえて抑えたという。

 さて、スマートデバイスのアプリケーションの開発はこれまでWebかアプリかの選択になってきたが、いまは第3の方法としてハイブリッド形式が注目されている。全体の枠組みはアプリ内にあるが、データソースはWebサーバーで定義するという手法で、今後より進むマルチデバイス対応に適している。

 こういった開発形式やデバイスだけでなく、開発提供においても受託からソリューションに向かうなど、スマートデバイスのアプリケーション開発では、今後2015年までの間に大きな「変化」が訪れるだろうと手塚氏は予想した。

スマートデバイスアプリ開発のトレンド推移
スマートデバイスアプリ開発のトレンド推移

エンタープライズアプリとスマートデバイスの連携

 ここまでは主にクライアントとなるアプリ開発の解説であったが、ここからはサーバーサイドを含めたシステム全体について、東洋ビジネスエンジニアリングの苅田修司氏から紹介された。東洋ビジネスエンジニアリングでは、SAP ERPやSiebelといった他社製品、自社のERPのパッケージMCFrameなどを利用したERMシステムの構築を手がけている。

 ERMやCRMといったアプリケーションはPCで利用することが前提というイメージがあるが、保守メンテナンスといったフィールドサービス業務ではモバイルが利用されている。こういったシーンではこれまでノートPCや携帯電話が使われてきたが、「ともに一長一短があった」と苅田氏は語る。携帯電話には常時接続性やショートメッセージによるリアルタイム性があるが、ノートPCのような情報処理性能には欠けている。

 こういった問題が「スマートデバイスでかなりカバーされるのではないか。特に常時接続性とリアルタイム性が実現できること、大きな画面や直感的な操作といったリッチなUX・UIを提供できるフロントエンドが大きな特長と考えている」と期待される。

 そこで、エンタープライズのフィールドサービス業務というビジネスシナリオにスマートデバイスを適用し、検証的なパイロットシステムを2010年ごろ実際に構築してみたという。このためには、まず図のような業務要件が必要だった。

スマートデバイスのフィールド利用要件
スマートデバイスのフィールド利用要件

 このうち重要な点がリアルタイムのプッシュメッセージだ。作業指示の即時配信に必要で、指示の新規登録、更新、優先度の変更などがあった時点で端末側でも即時に内容が伝わる仕組みが必要である。合わせて、電波状態が悪くてメッセージが送れない場合のキューイングも想定しなければならない。

 今ならiPhoneのAPNS(Apple Push Notification Service)、AndroidではC2DM(Cloud to Device Messaging)、Windows PhoneならMPNS(Microsoft Push Notification Services)とデバイスごとに仕組みがあるが、当時は選択肢としてE-mail、SMS、XMPP、SIPの4つが考えられた。

 E-mailはユーザーにもなじみ深く、端末にクライアントが入っているが、メールから業務データを抜き出して次のモバイルアプリに渡す方法が難しく、メッセージの受信と、それをトリガーとしたデータの更新は別のプロセスに分けて構築した。

 また、検証システムではAndroidをベースとしていたため、Googleサービスで利用されるXMPPとは相性がよく、生産性も高かったという。ここではOSSのXMPPサーバーを利用したが、Google AppEngile上でもXMPP APIを利用できるため、メッセージ基盤をオンプレミスにもクラウド上にも置くこともできるという。

 検証の目的としてはもう一つ、SOA(Service Oriented Architecture)的なシステムの組み合わせ、部品化や疎結合化をモバイルにも拡張できるかがあった。これについては、どのような業務アプリケーション、どのような送信方式、どのような端末(Android、iOS、Windows Phone)でも、同じ動き、同じ業務シナリオを実現できることが実証できたという。

 こうした検証の一方で、MCFrameでは端末としてiPhone/iPadを使う取り組みをしている。業務端末としてだけでなく、改善ツールやコミュニケーションにも利用していくため、サーバーサイドの技術とUIの二本立てで取り組みを続けているという。

 さらに、端末が持つデバイス、カメラ、バーコードリーダー、各種センサーデータをスマートデバイス側のアプリで組み合わせて新しい価値を提供していきたいと語る。今後はファイルの連携(Officeなど)、地図情報の連携、動画の再生、記録の連携も含めて、これまでやってきたCRMのパイロットシステムを拡張していきたいとした。

 最後に全体のまとめとして、手塚氏から「企業ではまとめて予算取りしてしっかりと作っていこうということが多いが、スマートデバイスはまだノウハウが溜まっていないこともあり、最初は小さなパイロットからはじめて、フィードバックしながら継続的に改善を繰り返すことが、全体の成功のためにキーファクターとなる」と語られた。

お問い合わせ

Made In Japan Software Consortium(MIJS)

東京都港区海岸1-16-1

ニューピア竹芝サウスタワー19F((株)ジェーエムエーシステムズ内)

http://www.mijs.jp/

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/6467 2012/03/19 14:00

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