スマートデバイスのトレンドとアプリ開発
セッション前半ではジェナの手塚康夫氏から、スマートデバイス市場の現状とアプリ開発のポイントおよび事例が紹介された。
手塚氏は「これまでのケータイはPCと比較するとモビリティの面で優れていたが、機能面/UI面では大きく劣っていた。しかしスマートデバイスは機能面/UI面もPCと遜色が無く、これは『進化』だ」として、今後ビジネスでモバイルを導入する際に、既存のフューチャーフォンは候補にあがらない。2015年には契約台数でスマートフォンがモバイルの過半数を占めると予想されるが(MM総研「スマートフォン市場規模の推移・予測(11年7月)」参照)、ビジネスの世界では2~3年前倒しされ導入がすでに進んでいると語る。
デバイスの種類としては、2011年12月に米国で新規購入されたスマートフォンのOSシェアはiOSとAndroidの2OSが独占しており、そのシェアは肉薄している(Nielsenプレスリリース参考)。またタブレットPCではiPadが圧倒的に強い(IDCプレスリリース参考)。
このようにスマートデバイスの普及が進むなかで、スマートデバイスアプリ開発ではどのような点に注意すればよいのだろうか。手塚氏は「企画」「設計」「開発・運用」の面からそれぞれ次のようなポイントをあげた。
企画ではデバイスの特性を活かし、いかにシンプルにするかに重きをおくこと。デバイスが高機能なので、顧客が要件を盛り込みたがることも多いが、機能が5個必要なら5つのアプリにするなど、一つ一つはシンプルにつくるべきという。
設計では、マルチタッチを活かしたスマートフォンらしさをいかに出すかがポイントになる。「動きがiPadっぽくない」という理由でNGが出ることもあるため、ケータイやPCとは違った独自なデザイナ/クリエイターのノウハウが必要となる。
開発の際に注意しなければならないのは、OSがバージョンアップしたときの対応である。導入後に全台入れ替えが発生しないよう、アプリを管理者が一元的に配布管理するのか、ユーザー自身が主体的に入れ替えを行うのか、もしくはMDM等のソリューションを用いて管理するのかをあらかじめ想定しておく。
そもそも企業におけるスマートデバイス利用では、主に以下の3つの用途におけるアプリ開発が主流だ。まず、製品・サービス・ブランドをB2Cでプロモーションする目的のアプリがある。工期は2~3か月で、数百万規模の予算となる。
次に、既存のPC向けあるいはケータイ向けサービスをスマートフォン対応させる。工期は半年で、数千万かかることもある。特に工数がかかるのがAndroidの全機種対応で、OSのバージョンが同じでも端末ごとに確認が必要となる。
そして、2012年度から増えると予想されるのが、社内システムと連携したエンタープライズ型。ジェナでは8割がエンタープライズ型開発という。事例として、医薬品を製造・販売する製薬企業で医療営業担当が医師にプレゼンする際に利用するプレゼンテーション支援アプリや、金融機関で金融商品を販売する営業が利用するセールス支援アプリがあげられた。
興味深いのは、同じ営業ツールであっても対照的なアプローチが取られている点だ。製薬企業におけるアプリの利用では短い時間で効果的に医師にプレゼンするため、動画などリッチコンテンツを利用して視覚的・感覚的に伝えることを重視しているのに対し、金融機関におけるアプリの利用では表紙をシンプルに見せることで営業担当者がこれまでの紙のカタログと同じように使えるよう、iPadらしさをあえて抑えたという。
さて、スマートデバイスのアプリケーションの開発はこれまでWebかアプリかの選択になってきたが、いまは第3の方法としてハイブリッド形式が注目されている。全体の枠組みはアプリ内にあるが、データソースはWebサーバーで定義するという手法で、今後より進むマルチデバイス対応に適している。
こういった開発形式やデバイスだけでなく、開発提供においても受託からソリューションに向かうなど、スマートデバイスのアプリケーション開発では、今後2015年までの間に大きな「変化」が訪れるだろうと手塚氏は予想した。