柔軟な拡張性を備えた、コンテンツ制作に専念できる国産CMSサービス
――まずはミックスネットワークについて教えてください。
ミックスネットワークは1997年に創業し、2000年からCMSの研究開発を開始、2003年に最初のCMSをリリースしました。当時は米国からCMSという言葉が入り始めた頃で、CMSベンダーとして日本では老舗となる会社です。
――提供しているCMSサービスについて教えてください。
ミックスネットワークの大きなビジネスの柱の一つがCMSサービス『SITE PUBLIS』です。『SITE PUBLIS』は、Webでコンテンツサービスを提供しているお客様やSIer、制作会社、パートナー様などに対して、CMSだけでなくプラットフォームも含めて提供するサービスです。
コンテンツ配信は、最近ではスマートデバイスへの対応が急務となっています。これらへの対応は新しいビジネスチャンスにもつながる反面、特にAndroidで顕著ですが、次々に登場する端末のサポートが相当な負担にもなっています。
『SITE PUBLIS』を使っていただくことで、アクセスしてきたクライアントのブラウザやモバイルデバイスといった環境を判断し、最適な出力を自動的に行うことができます。これによってプラットフォーム対応にかかる工数やコストを削減し、利用者は本来の仕事であるコンテンツ作りにお金と知恵を注ぎ込むことができるようになります。
また、ミックスネットワークはプラットフォームのアプリケーション開発が本道ではありますが、Webサイトのデザインやスマートフォン対応といったクリエイティブ能力も持っています。これらが苦手というお客様にクリエイティブを提供したり、サイト企画や紙媒体と連動したクロスメディアキャンペーンのご提案も可能です。
『SITE PUBLIS』は、お客様がサービスを提供するためのインフラ部分、つまりプラットフォームをご提供するサービスです。クラウドインフラを利用するケースがほとんどになっていますが、ミックスネットワークでいろいろなクラウドベンダーの品質を見極めながら、お客様に最適なインフラサービスを組み合わせ、セットで利用していただくケースも増えています。コンテンツを提供するインフラからプラットフォームへの対応、コンテンツ作成への対応など、複数のレイヤーでお客様にメリットをご提供できるのです。
――「SITE PUBLIS」ユーザーの技術レベルや規模感などに特徴はありますか?
『SITE PUBLIS』は、最上位版の『エンタープライズ』、可用性の高い分散サーバーを提供する『アドバンスト』、オールインワン運営が可能な『スタンダード』、そして使いやすく低価格の『ベーシック』の4種類をラインアップしています。小規模から大規模まで幅広く対応していますので、お客様の技術レベルはさまざまです。
『SITE PUBLIS』は、基本的にブラウザのインターフェースからブロックを追加する形でコンテンツ要素を組み合わせていけるので、HTMLが分からなくても容易に利用できることが特長です。一方でカスタム機能ブロックも用意しており、外部連携したり、PHPのコードとして書かれたプラグインを追加したりすることで、より複雑な処理も行えます。このように幅広いユーザーレベルに対応していることも『SITE PUBLIS』が採用されている理由の一つです。
『エンタープライズ』ではスキルもリテラシーも高いユーザーが多い傾向はありますが、スマートフォンを始めとするマルチデバイスに対応できるプラットフォームであること、ユーザーやベンダーが柔軟に拡張できること、動的コンテンツで高いパフォーマンスを出すための仕組みがあることが受け入れられている理由のようです。
通常のWeb構築であれば、ベーシック、スタンダード、アドバンストというようにWebサイトの規模などに応じて対応できます。例えば小規模なWebサイトであればベーシックで、自治体などのWebサイトではアドバンスト、というように運用目的に応じてご活用いただいています。
なお『SITE PUBLIS』では、新しいデバイスへの対応は新機種データのアップロードによって行っています。次々に登場するスマートフォンの機種対応も素早く対応しています。
IaaSの選定理由は「立ち上げやすさ」「拡張性」「安定性」
――最近の企業サイトの傾向について、どのような印象をお持ちですか?
やはりスマートフォン対応、マルチデバイス対応したいというニーズが多くなっています。ミックスネットワークの導入事例では、au oneやTSUTAYA onlineなどのポータル系が多く、サイト規模はエンタープライズ寄りです。自社の商品データベースと連携してWebカタログを提供したいといった機能拡張のニーズも多いです。『SITE PUBLIS』は標準機能でもいろいろなことができますが、柔軟な拡張も可能であるためご好評いただいています。
自治体など公共サイトでの利用は昔から進んではいましたが、静的なコンテンツが中心でした。それが最近ではマルチデバイスで多機能なコンテンツをサービスとして提供したいというニーズが増えています。
また、パッケージではなくプラットフォームとして提供していることで、大手からメディア系まで幅広く受け入れられています。ミックスネットワークとしては、Webプラットフォームとしていろんな企業に導入していただきたいと考えており、すべてのサイトを『SITE PUBLIS』で動かしたいという理想もあります。
現在のところ、用途特化型サービスは考えていませんが、サービスとして展開するにはマルチプラットフォームが重要です。スマートフォンの次のデバイス、スマートTVやウェアラブルといったデバイスに向けてもWebでサービスを提供していくために、それを支えられるプラットフォームを意識しています。
――クラウドインフラにIDCフロンティアのサービスを選んだ理由は?
Webプラットフォームである『SITE PUBLIS』は、高度なサービスを安定して運用していくことが可能です。ソフトウェアとして販売するのではなく、サービスで提供することでお客様にも多くのメリットがあります。そこでクラウド、特にIaaSは導入、運用の容易さ、環境構築の速さなどにおいてメリットを十分に活かせると考えました。
IaaSサービスの選別は、『どう拡張していけるか』『最初の立ち上げをいかにスムーズにできるか』『安定して運用できるか』の3点を重視しました。いろいろなサービスを検討した結果、IDCフロンティアのクラウドサービス『セルフタイプ』を選びました。その理由は『安心して提供できること』と『使い勝手とコスト』でした。ユーザーからのニーズに合わせて、運用重視、コスト重視に対応できることもポイントでした。
IDCフロンティアではOSテンプレートなどが事細かく揃っていて、ロードバランサなどネットワーク機能も充実しています。データセンターが複数用意されていてBCP(事業継続計画)に対応できることも大きなポイントでした。お客様の「夢」に対応できるプラットフォームとして最適、最高だったのです。
コスト的には最安値とは言えませんし、『ベーシック』を載せるには高い部類に入るともいえます。安く上げる方法は他にもたくさんありますし、サーバリソースのスペックだけなら同じレベルで提供することも可能でした。しかし、ユーザーにリスクを理解してもらって使っていただくよりもIDCフロンティアのクラウドを使用することでお客様が安心して安定したサービスを利用でき、それにより運用コストを大きくカットできる方がメリットがあると考えています。
安いシステムに人手をかけるより、高いシステムで人件費を削る方がコストが結果的に下がります。ミックスネットワークが求めていたことと、IDCフロンティアが目指しているところがかなり近かったことが、協業に至った最大の理由であると考えています。特に、CMSのWebプラットフォームを月額で提供するクラウドサービス『PUBLIS CLOUD』はIDCフロンティアのようなところがないと提供できなかったでしょう。
――システム構成はどのようなかたちでしょうか。
基本は一般的に公開用Webサーバー、CMSサーバー、DBサーバーがあり、その上にロードバランサという構成です。これをどうサイジング、レプリケーションしていくかですが、クラウドのメリットを活かして冗長化を過度にやらないようにしています。物理的な故障はクラウドで担保されているので、余計な構成をせずに済みます。
基本的にクラウドは無駄を排除できるので、インフラ構成を考えるのが楽になりました。つまらない構成になったともいえますが(笑)。例えば仮想マシンごとの帯域においても、物理環境では減衰が発生しますが、クラウドでは減衰がないためバックボーンや仮想の帯域、スループットの計算がしやすくなります。I/Oの多い処理は劣化が出てきますが、スループットはクラウドの方が上昇します。
――IDCフロンティアへのリクエストはありますか?
セルフタイプを利用することで、想定していたほとんどのことができるようになりました。あえてリクエストを挙げるとすればオートスケールがあるとよいですね。例えば大学などは合格発表の時期にアクセスが急増します。その都度プラン変更をするのは手間ですから、キャンペーン対応などの形で自動的にスケールを戻せる機能があると便利です。もっとも、IDCフロンティアとは常に話し合って希望や悩みを伝えていますので、必ず答えを持ってきてくれると思っています。
――ありがとうございました。