「欲しいと思っていた機能は、Worklightですでに実現されていた」
1968年に創業したtdiは、製造、物流、流通、金融、医療など、さまざまな業界向けに情報システムのトータルソリューションを提供するインテグレーターである。同社ではユーザーのニーズに合わせた業務システムの開発、運用、サポートなどのビジネスを行っているが、その中で、対応すべきプラットフォームの拡大を1つの課題と感じていたという。
「モバイル開発という観点では、当社ではこれまでも携帯電話向けの組み込み開発やアプリケーション開発といった案件を多く手がけてきました。近年では、特にiPhoneやiPad、Androidといったスマートデバイス向けの開発依頼が増えており、各プラットフォームに向けた開発コストの増加と保守の煩雑化が進む傾向にありました」(黒澤氏)
それぞれのプラットフォームに向けた開発作業と保守作業の効率化を目指すにあたり、それを一括で行える環境、つまりMEAPの重要性を認識した同社では、一時期、MEAP自体を自社で独自開発することも視野に入れつつ、ソリューションの検討を行っていたという。
そうした中、2012年5月にIBMより「IBM Worklight」が発表される。黒澤氏は「実際にWorklightを見て、自分たちが欲しいと思っていた機能がすでに実現されていることに気づきました。これであれば、独自に開発するよりもWorklightを活用して実現していくほうが合理的だと判断したのです」と話す。
Web開発の標準的な知識で多機種展開が可能に
IBM Worklightは、ビジネスモバイル環境構築のためのミドルウェア製品群である「IBM Mobile Foundation」の一部となっている。
Worklight自体は、その中でアプリケーションプラットフォームとしての役割を持ち、開発環境(Worklight Studio)、実行環境(Worklight Server)、実行時のクライアントAPIから構成されるSDK(Worklight Device Runtimeコンポーネント)、運用管理のためのコンソール(Worklight Console)、企業内のアプリケーション・ストア(Worklight Application Center)といったコンポーネントから構成されている。
黒澤氏によれば、Worklight導入による最大のメリットとして「複数のプラットフォームに対応したアプリケーションを簡単に開発できる」点を挙げる。
「スマートデバイスが持つハードウェアの機能を使ったり、オフラインでの利用を可能にしたいと思うと、どうしてもネイティブアプリとして開発する必要が出てきます。しかしながら、各プラットフォーム特有の言語で開発しようとすると、その工数は大幅に増えてしまいます。Worklightを利用すると、HTMLやJavaScript、CSSといった標準的な技術を使って、複数のデバイスで動作可能な、かつ高機能なネイティブアプリケーションを開発できるようになります。プラットフォーム間、機種間の差異を吸収する仕組みは、Worklight側で提供されます」(黒澤氏)
実際に利用していく中で、特に気に入っているのは、サーバとの組み合わせで提供される「ダイレクトアップデート」機能だという。これは、すでに端末側に配布したアプリケーションを更新したい場合に、アプリケーション・ストアを介さずに、Worklightサーバーから最新バージョンを端末に配布し適用する機能だ。これは主に、アプリケーション展開後の運用を効率化するための仕組みだが、tdiでは、この機能を使って開発時の生産性向上も実現しているという。
「特にモバイル開発では、要件定義のフェーズからプロトタイプを作成し、クライアントとの間でUIの細部などを調整しながら開発を進めていくやり方が主流になっています。従来であれば、そうした修正にも時間がかかっていたのですが、Worklightを使った開発では、ダイレクトアップデートの機能を使い、打ちあわせの場で即座にプロトタイプに修正を反映できるようになりました。開発時にも展開後にも便利に使えるダイレクトアップデートは、一番気に入っている機能です」(黒澤氏)