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ニーズ高まる業務アプリの「ハイブリッド開発」
-その効率を高める方法

IBM Worklight導入事例: 情報技術開発株式会社

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2012/12/03 10:30

 スマートフォンやタブレットといった「スマートデバイス」の普及が進む中、アプリの開発者にとっては、「複数のプラットフォームに向けたアプリケーションを、いかに効率的に開発し、運用していくか」という課題が生まれている。その課題を解決するものとして注目を集めているのが「MEAP」と呼ばれる環境だ。今回、IBMが提供するMEAP製品である「IBM Worklight」をお客様への提案プラットフォームとして採用を決定した情報技術開発(tdi)の黒澤勇紀氏に、同製品を選んだ理由と具体的な活用方法について話を聞いた。

開発・運用コストがかさむスマートデバイス対応を「MEAP」で解決

 スマートフォンやタブレットといった「スマートデバイス」の普及が進む中で、その活用範囲も急速に拡大を見せている。特に近年では、これらのデバイスがコンシューマー分野だけでなく、企業にも導入され、業務アプリケーションのクライアントとして利用されるケースが増えているようだ。

 生産性の向上や、それに伴う競争力の強化といった観点などから、スマートデバイスの業務への導入は、多くの企業で優先度の高い経営課題の一つになるという見方もある。一方で、業務のためのシステムをスマートデバイスから利用できる環境を整えるにあたっては、解決すべき複数の課題も指摘されている。

 その課題の一つは、複数のプラットフォームに向けたアプリケーションを、いかに効率的に開発し、運用していくかというものだ。WindowsベースのPCや携帯電話(フィーチャーフォン)、さらには専用の業務端末といった環境に加え、スマートデバイスをクライアントとして活用する場合にはiOS、Androidといったプラットフォームを、新たなターゲットとして視野に入れることになる。

 特に、ユーザーがそれぞれ個人で利用している端末を業務に使うことを認めるBYOD(Bring Your Own Device)環境の展開や、汎用的な業務システムを複数の企業向けにカスタマイズ提供するようなビジネスを行うインテグレーターが、自社の製品をスマートデバイスに対応させたい場合などに、ターゲットとなるプラットフォームの拡大は、開発コストや運用コストの増大につながるリスクもはらんでいる。

 複数のプラットフォームで動作するアプリを作成したい場合、標準的なWebブラウザで動作する「Webアプリ」として開発するという選択肢もある。しかしながら、特にオフライン環境での利用が想定されていたり、端末が持つハードウェアデバイス(カメラやGPSなど)を活用して、機能や使い勝手の面で高い品質を求めたりする場合には、それぞれのプラットフォームに対応した「ネイティブアプリ」としての作り込みが必要となる。近年では、これらの手法を組み合わせた「ハイブリッド」な手法が採用されるケースも増えている。

 こうした多様なモバイルデバイス向けのアプリ開発、展開、運用を効率化するものとして期待されているのが「MEAP(Mobile Enterprise Application Platform)」と呼ばれるソリューションである。複数のプラットフォームに向けたアプリを、統一された環境上で開発し、展開、運用できるMEAPは、特に業務アプリ分野でのスマートデバイス対応を効率的に推進していくためのものとして注目を集めている。

 今回、IBMが提供しているMEAP製品「IBM Worklight」をお客様に提案し、こうしたアプリ開発の効率化を推進している情報技術開発(tdi)の黒澤勇紀氏に、同製品を提案した経緯や、具体的な活用シーンについて話を聞いた。

情報技術開発株式会社 ソリューション事業部
ソリューション推進部 クラウドソリューション推進グループ 黒澤勇紀 氏
情報技術開発株式会社 ソリューション事業部 ソリューション推進部 クラウドソリューション推進グループ 黒澤勇紀 氏

「欲しいと思っていた機能は、Worklightですでに実現されていた」

 1968年に創業したtdiは、製造、物流、流通、金融、医療など、さまざまな業界向けに情報システムのトータルソリューションを提供するインテグレーターである。同社ではユーザーのニーズに合わせた業務システムの開発、運用、サポートなどのビジネスを行っているが、その中で、対応すべきプラットフォームの拡大を1つの課題と感じていたという。

 「モバイル開発という観点では、当社ではこれまでも携帯電話向けの組み込み開発やアプリケーション開発といった案件を多く手がけてきました。近年では、特にiPhoneやiPad、Androidといったスマートデバイス向けの開発依頼が増えており、各プラットフォームに向けた開発コストの増加と保守の煩雑化が進む傾向にありました」(黒澤氏)

 それぞれのプラットフォームに向けた開発作業と保守作業の効率化を目指すにあたり、それを一括で行える環境、つまりMEAPの重要性を認識した同社では、一時期、MEAP自体を自社で独自開発することも視野に入れつつ、ソリューションの検討を行っていたという。

 そうした中、2012年5月にIBMより「IBM Worklight」が発表される。黒澤氏は「実際にWorklightを見て、自分たちが欲しいと思っていた機能がすでに実現されていることに気づきました。これであれば、独自に開発するよりもWorklightを活用して実現していくほうが合理的だと判断したのです」と話す。

Worklight ランタイム・アーキテクチャー
Worklight ランタイム・アーキテクチャー

Web開発の標準的な知識で多機種展開が可能に

 IBM Worklightは、ビジネスモバイル環境構築のためのミドルウェア製品群である「IBM Mobile Foundation」の一部となっている。

 Worklight自体は、その中でアプリケーションプラットフォームとしての役割を持ち、開発環境(Worklight Studio)、実行環境(Worklight Server)、実行時のクライアントAPIから構成されるSDK(Worklight Device Runtimeコンポーネント)、運用管理のためのコンソール(Worklight Console)、企業内のアプリケーション・ストア(Worklight Application Center)といったコンポーネントから構成されている。

 黒澤氏によれば、Worklight導入による最大のメリットとして「複数のプラットフォームに対応したアプリケーションを簡単に開発できる」点を挙げる。

 「スマートデバイスが持つハードウェアの機能を使ったり、オフラインでの利用を可能にしたいと思うと、どうしてもネイティブアプリとして開発する必要が出てきます。しかしながら、各プラットフォーム特有の言語で開発しようとすると、その工数は大幅に増えてしまいます。Worklightを利用すると、HTMLやJavaScript、CSSといった標準的な技術を使って、複数のデバイスで動作可能な、かつ高機能なネイティブアプリケーションを開発できるようになります。プラットフォーム間、機種間の差異を吸収する仕組みは、Worklight側で提供されます」(黒澤氏)

 実際に利用していく中で、特に気に入っているのは、サーバとの組み合わせで提供される「ダイレクトアップデート」機能だという。これは、すでに端末側に配布したアプリケーションを更新したい場合に、アプリケーション・ストアを介さずに、Worklightサーバーから最新バージョンを端末に配布し適用する機能だ。これは主に、アプリケーション展開後の運用を効率化するための仕組みだが、tdiでは、この機能を使って開発時の生産性向上も実現しているという。

 「特にモバイル開発では、要件定義のフェーズからプロトタイプを作成し、クライアントとの間でUIの細部などを調整しながら開発を進めていくやり方が主流になっています。従来であれば、そうした修正にも時間がかかっていたのですが、Worklightを使った開発では、ダイレクトアップデートの機能を使い、打ちあわせの場で即座にプロトタイプに修正を反映できるようになりました。開発時にも展開後にも便利に使えるダイレクトアップデートは、一番気に入っている機能です」(黒澤氏)

Direct Update機能: Worklight Serverから更新版を直接配布できる)
Direct Update機能: Worklight Serverから更新版を直接配布できる)

エンタープライズアプリに求められる要件に対応

 主にモバイルをターゲットとしたハイブリッド開発プラットフォームは、オープンソースのものも含めて複数のベンダーから提供されている。MEAP製品についても同様だ。その中で、同社がWorklightを選んだ理由について、黒澤氏は「企業が業務用途で利用するアプリケーションの開発、展開、運用に必要な環境が最も充実していた」ためだと話す。

 「たまに誤解があるのですが、例えば、Apache Cordova(PhoneGap)のような仕組みは、いわゆるMEAPを構成する1つの要素に過ぎません。Worklightでは、それ以外に、セキュア通信やキャッシュデータ暗号化といったセキュリティに関する機能、先ほどお話ししたダイレクトアップデートを含む、展開やアプリ管理の機能、バックエンドのシステムとのつなぎ込みといった、エンタープライズ向けのプラットフォームとして必要な環境がすべて用意されている点がポイントになります」(黒澤氏)

 バックエンドの業務システムとの接続のために、Worklightには「アダプタ」と呼ばれる機能が用意されている。このアダプタをWorklight Serverに置いておくことで、デバイス上のアプリから、バックエンドのシステムやデータベースへの接続を容易に実現できる点も、業務アプリを展開する際の大きなメリットだと黒澤氏は言う。

 「スクラッチで業務アプリを開発する場合でも、Worklightのアダプタのような機能は結局必要になります。Worklightでは、最初からそうした機能をサーバ側に用意していますので、開発効率やメンテナンス性を大幅に向上させることが可能です」(黒澤氏)

 さらに冒頭で述べたように、Worklightは「IBM Mobile Foundation」と呼ばれるミドルウェア群の一部に位置づけられている。このMobile Foundationには、モバイルデバイス管理(MDM)を実現する「IBM Endpoint Manager」や、クラウドやオンプレミス環境の統合を行うための「WebSphere Cast Iron」といった製品が含まれる。こうした製品群との統合によって、企業がスマートデバイスを大規模に展開する際に生まれる、多様なシステムニーズに対応できる点も、Worklightのメリットの一つとなる。

IBM Mobile Foundation V5.0とIBM Worklight V5.0との関係
IBM Mobile Foundation V5.0とIBM Worklight V5.0との関係

携帯電話や専用端末からのスマートデバイスへの移行は加速する

 日本において、早い時期からWorklightの活用に取り組んできたtdiでは、すでにいくつかの実案件に、このプラットフォームを採用している。例えば、流通業のある企業では、これまで携帯電話で運用していた業務システムを、Worklightによるスマートフォンアプリに数万台規模で刷新する予定だという。

 「従来の携帯電話から、より画面が大きくて使いやすく、GPSや加速度センサ、カメラといった高機能なハードウェアが活用できるスマートデバイスへと移行していきたいというニーズは高いようです。また、これまで専用端末を利用していたような業務でも、より柔軟に機能強化が行えるスマートデバイスに切り替えることで、迅速にイノベーションに打って出られるシステム環境を作っていきたいという要求が出てきています。これらのニーズに対しても、特にアプリケーション保守の部分について担保してくれるWorklightを使ったソリューションは、適しているのではないかと思っています」(黒澤氏)

 tdiでは今後、日本におけるWorklightの先行企業として、モバイル化を求める企業に対し、コンサルティングビジネスを展開していく。

 tdiでは、MEAPに関心のある企業ユーザーに対し、Worklightのハンズオンセミナーなどを通じて、技術的な詳細や具体的な活用法に関する情報を広く提供していくことを計画している。黒澤氏は「Worklightでは、JavaやObjective-Cといった個別の言語に関する知識がなくても、Web開発の経験があれば、すぐにスマートデバイス上で動く成果物が作れます。Eclipseプラグインとして使える開発者向けのエディションも無償で提供されていますので、興味がある人は、まず一度試してみてほしいですね」と勧めている。

IBM Worklight 無料ハンズオンセミナーのご紹介

 黒澤氏が講師を務めるハンズオンセミナーが来年頭に予定されています。話題のモバイル・アプリケーション・プラットフォームを体験してみましょう(※各日程とも同じ内容です)

 

参考資料

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著者プロフィール

  • 柴田 克己(シバタ カツミ)

    フリーのライター・編集者。1995年に「PC WEEK日本版」の編集記者としてIT業界入り。以後、インターネット情報誌、ゲーム誌、ビジネス誌、ZDNet Japan、CNET Japanといったウェブメディアなどの製作に携わり、現在に至る。 現在、プログラミングは趣味レベルでたしなむ。最近書いてい...

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