150ものWebサービスの効率化と機能強化を両立する手法として「SRE」を採用
「リクナビ」や「じゃらん」など、業界でも最大級の情報サイトを多数運営するリクルートグループ(以下、リクルート)。「BtoBtoC」でのビジネスモデルで創出されたデジタルサービスは、求人や不動産、グルメ、結婚、旅行など約150にも上る。その日本屈指の莫大なアクセスに耐えるサービス群のインフラを支え、常に進化させ続けているのが、河村氏と高岡氏が所属するリクルートテクノロジーズのサイトリライアビリティエンジニアリング部だ。
リクルートテクノロジーズではインフラ構築の自動化、迅速化を目的として、2014年頃からSREの取り組みを開始。河村氏を中心に、サービスに合わせた最適なインフラを迅速に提供できる環境づくりに取り組んできた。そして2017年4月にはSRE部が正式に立ち上がり、この春には1年が経過する。
日本におけるSREの導入はスタートアップなどで多数見られる。しかし、大規模かつ多数のサービスを手がける大手企業の導入としては、かなり早い時期での取り組みといえるだろう。背景には、最新の技術を積極的に取り込み、サービスの価値向上へとつなげようとするリクルートの基本的な考え方がある。
「リクルートのデジタルサービスにおけるインフラは、アンケートなどで一時的に使うサブサイトを除いて大部分がオンプレミスで構築・管理されています。業界の黎明期からデジタルサービスを展開していますから、その時々の技術や状況に応じてインフラも刷新・最適化を進めてきました。具体的には、サービスごとに分かれていたデータセンターを2008年に統合し、2012年には仮想化を実施しています。『まずはやってみよう』という弊社特有の行動指針は、SRE導入にも追い風となりました」(河村氏)
河村氏が入社した直後は、リクルートテクノロジーズに存在するインフラ部門が、「リクナビ」や「じゃらん」といった各事業会社のサービスに組織横断で機能を提供するスタイルだったという。しかし、機能の開発・管理を効率的に行おうとすればするほど、サービスごとに異なる要件には対応しにくくなる。
「そこで、もっと個別開発の中に入り込んで要件まで一緒に検討し、『サービスがあるべき方向』を理解して進む必要があると考えました。そしてオペレーションにSREの概念を取り込んで課題認識を共有するためには物理的にも近い距離の方が良いと考え、オフィスも体制も変えることになりました」(河村氏)
インフラや機能を共通化し効率的に運用しつつも、個別の要件には細やかに対応する。相反するニーズに対する最適解として、SREに期待するものは大きいという。
「かつては依頼を受けて動くことが多かったのですが、もっと率先的に動くべきではないかと。事業に貢献し、顧客企業のその先にいる消費者により良いサービスを提供するためには、インフラとアプリケーションの垣根を越えて共に考え、協力していくことが不可欠だと考えています」(河村氏)