エンタープライズアプリに求められる要件に対応
主にモバイルをターゲットとしたハイブリッド開発プラットフォームは、オープンソースのものも含めて複数のベンダーから提供されている。MEAP製品についても同様だ。その中で、同社がWorklightを選んだ理由について、黒澤氏は「企業が業務用途で利用するアプリケーションの開発、展開、運用に必要な環境が最も充実していた」ためだと話す。
「たまに誤解があるのですが、例えば、Apache Cordova(PhoneGap)のような仕組みは、いわゆるMEAPを構成する1つの要素に過ぎません。Worklightでは、それ以外に、セキュア通信やキャッシュデータ暗号化といったセキュリティに関する機能、先ほどお話ししたダイレクトアップデートを含む、展開やアプリ管理の機能、バックエンドのシステムとのつなぎ込みといった、エンタープライズ向けのプラットフォームとして必要な環境がすべて用意されている点がポイントになります」(黒澤氏)
バックエンドの業務システムとの接続のために、Worklightには「アダプタ」と呼ばれる機能が用意されている。このアダプタをWorklight Serverに置いておくことで、デバイス上のアプリから、バックエンドのシステムやデータベースへの接続を容易に実現できる点も、業務アプリを展開する際の大きなメリットだと黒澤氏は言う。
「スクラッチで業務アプリを開発する場合でも、Worklightのアダプタのような機能は結局必要になります。Worklightでは、最初からそうした機能をサーバ側に用意していますので、開発効率やメンテナンス性を大幅に向上させることが可能です」(黒澤氏)
さらに冒頭で述べたように、Worklightは「IBM Mobile Foundation」と呼ばれるミドルウェア群の一部に位置づけられている。このMobile Foundationには、モバイルデバイス管理(MDM)を実現する「IBM Endpoint Manager」や、クラウドやオンプレミス環境の統合を行うための「WebSphere Cast Iron」といった製品が含まれる。こうした製品群との統合によって、企業がスマートデバイスを大規模に展開する際に生まれる、多様なシステムニーズに対応できる点も、Worklightのメリットの一つとなる。
携帯電話や専用端末からのスマートデバイスへの移行は加速する
日本において、早い時期からWorklightの活用に取り組んできたtdiでは、すでにいくつかの実案件に、このプラットフォームを採用している。例えば、流通業のある企業では、これまで携帯電話で運用していた業務システムを、Worklightによるスマートフォンアプリに数万台規模で刷新する予定だという。
「従来の携帯電話から、より画面が大きくて使いやすく、GPSや加速度センサ、カメラといった高機能なハードウェアが活用できるスマートデバイスへと移行していきたいというニーズは高いようです。また、これまで専用端末を利用していたような業務でも、より柔軟に機能強化が行えるスマートデバイスに切り替えることで、迅速にイノベーションに打って出られるシステム環境を作っていきたいという要求が出てきています。これらのニーズに対しても、特にアプリケーション保守の部分について担保してくれるWorklightを使ったソリューションは、適しているのではないかと思っています」(黒澤氏)
tdiでは今後、日本におけるWorklightの先行企業として、モバイル化を求める企業に対し、コンサルティングビジネスを展開していく。
tdiでは、MEAPに関心のある企業ユーザーに対し、Worklightのハンズオンセミナーなどを通じて、技術的な詳細や具体的な活用法に関する情報を広く提供していくことを計画している。黒澤氏は「Worklightでは、JavaやObjective-Cといった個別の言語に関する知識がなくても、Web開発の経験があれば、すぐにスマートデバイス上で動く成果物が作れます。Eclipseプラグインとして使える開発者向けのエディションも無償で提供されていますので、興味がある人は、まず一度試してみてほしいですね」と勧めている。
黒澤氏が講師を務めるハンズオンセミナーが来年頭に予定されています。話題のモバイル・アプリケーション・プラットフォームを体験してみましょう(※各日程とも同じ内容です)。
- 日程: 2013年1月24日(木)、2月8日(金)、2月15日(金)
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