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エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業

エンジニアとして知っておきたい人工知能の歴史とディープラーニングの課題

エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業 第7回


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 いよいよ普及期に入ったかに見える人工知能。期待の声が高まる一方、実現可能性に懐疑的な意見もあります。今回は、これまで挫折を繰り返してきた人工知能の歴史を振り返ります。そして、今度こそ普及の壁を打ち破るかもしれない画期的技術、「ディープラーニング」の特徴と課題について簡単に解説します。

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新刊のお知らせ

 2016年12月17日に、この連載をベースにした新刊『エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業』が発売されました!

 ITとビジネスの関係、コンピュータ、ネットワーク、プログラミング、データベース、セキュリティ、人工知能など、本連載で解説した内容も含め、エンジニアなら誰もが知っておくべきテーマを一冊で学ぶことができます。

人工知能のルーツと発展

人工知能における3回のブーム

 今回と次回は、今後エンジニアが密接に関わるであろう人工知能(AI)がテーマです。今回は人工知能の歴史と、ディープラーニングの初歩の初歩を解説します。

 「Artificial Intelligence(人工知能)」という言葉が初めて使われたのは、1956年のダートマス会議だといわれています。世界最初のコンピュータとされる「ENIAC」が開発されたのが1946 年なので、人工知能についての研究が始まったのはコンピュータが登場したすぐあとだと分かります。

 最近は「第3次人工知能ブーム」と呼ばれています。1950年代後半~60年代、1970年代後半~80年代、そして2010年以降と何度も訪れたブームは、それぞれの時代の問題点を整理しておくとスムーズに理解できます。

挫折した第1次・第2次ブーム

 第1次人工知能ブームは「探索や推論の時代」といわれています。人工知能という言葉が登場しましたが、できることは非常に限られていました。将棋やチェスのような探索を深掘りしたり、自然言語にパターンマッチングで応答したりといった研究がされ、いわゆる「人工無脳」が作られました。ニューラルネットワークや機械学習、ファジィ理論などが登場したのもこの頃です。

 日本でも多くの研究が行われたのが、第2次人工知能ブームです。エキスパートシステムを始め、人間が持つ知識をルールとしてコンピュータに実装する方法でした。商用の人工知能が話題になり、1990年前後に「ファジィ」や「ニューロ」といった言葉が家電にも登場したことから、多くの人が人工知能を知るきっかけになりました。

ディープラーニングが起こした第3次ブーム

 そして、現在の第3次人工知能ブームはディープラーニングが大きな話題になっています。「大量のデータから特徴量を取り出してモデル化する」という処理をコンピュータが行うため、人間が気づかない規則性や特徴などもコンピュータが把握できる可能性があります。

 ディープラーニングのような画期的発明だけでなく、オープンソース化やAPIの公開などが過去との違いとして挙げられます。オープンソース化されたことで、広く企業や大学などで研究結果を利用でき、APIの公開によって誰もが容易に使える環境が整いました。また、データ量の増加や処理速度の向上もブーム化した一因として挙げられます。

表1 人工知能ブームの年表
年代 特徴 技術・キーワード
1950年頃 第1次人工知能ブーム ダートマス会議
チューリングテスト
1960年頃 ニューラルネットワーク
ファジィ理論
意味ネットワーク
1970年頃 技術的な難問の登場 フレーム問題
組み合わせ爆発問題
1980年頃 第2次人工知能ブーム 遺伝的アルゴリズム
エキスパートシステム
バックプロパゲーション
1990年頃 ニューロ、ファジィなど
産業への活用
遺伝的プログラミング
データマイニング
チェスでAIがチャンピオンに勝利
2000年頃 人工知能が一般化される動きが出始める ロボットペットの登場
インターネットの普及
オートエンコーダー
2010年頃 第3次人工知能ブーム ディープラーニング
囲碁でAIがプロ棋士に勝利

過去の人工知能の技術を押さえておく

失敗に学ぶ

 最新の技術を使って実用化されたものに接する機会があまりなくても、人工知能の研究は少しずつ進められていて、その結果が今回の第3次人工知能ブームだといえます。過去の技術は無駄ではなく、これまでの技術の組み合わせで実現されています。最新の技術を学ぶときにも、ブームが過ぎ去った理由を把握しておく必要があります。何度も人工知能に挑戦しながら実現できなかった理由は、技術面だけではないことも理解しておきましょう。

 例えば第2次人工知能ブームで登場したエキスパートシステムは、専門家の知識をルールとして記述し、そのとおりに実行すれば専門家と同等の意思決定ができるようになる、というものでした。これは一部では成功しましたが、社会的な影響はほとんどありませんでした。失敗した理由としては、人間の頭脳の処理があまりにも複雑で、かつルールを生成するのに膨大な時間がかかるため、ルール化が進まなかったことが挙げられます。

失敗の上に成り立つ機械学習

 この失敗を教訓として、ルールを自動的に生成することで、人間の脳に近づける試みが続けられており、その一つのアプローチが機械学習です。これはパターンを自動的に学習する方法で、最近話題になっているディープラーニングもその一つです。

 学習の着眼点は「人間が教えなくても対応パターンを自動的に学習する」ことです。特にモデルを作る部分を人間が決めていたのが、人工知能により自動的に獲得するようになった点がポイントです。これらも過去の技術の上に成り立っているので、基礎となる技術を把握しておく必要があります。

次のページ
人工知能が目指す方向

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この記事の著者

増井 敏克(マスイ トシカツ)

増井技術士事務所 代表。技術士(情報工学部門)、テクニカルエンジニア(ネットワーク、情報セキュリティ)、その他情報処理技術者試験に多数合格。 ITエンジニアのための実務スキル評価サービス「CodeIQ」にて、情報セキュリティやアルゴリズムに関する問題を多数出題している。 また、ビジネス数学検定1級に合格し、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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