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【デブサミ2017】セッションレポート(AD)

研究開発チームが組織を変革する! サイバーエージェント アドテクスタジオにAI Labが誕生するまで【デブサミ2017】

【16-D-6】人工知能の研究開発チームがプロダクト・組織をどのように変えたのか

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「距離の近さ」と「研究開発のミッション」のバランス

 このようにさまざまな違いがあると、プロダクトと一体となり業務を遂行するうちに、研究開発チームもプロダクト側の意識に引っ張られてしまいがちだ。しかし、距離が近いことのメリットは非常に大きい。そこで、距離のメリットを担保しつつ研究開発チームとしてのスタンスを保持するため、個人の中長期的な目標を設定する際には研究開発チームから第三者が入ることになった。さらにそのメンバーは、開発した技術を他のプロダクトに横展開することを考える立場にもなるという。

 ただ、「この第三者の役割が大変難しく、できるだけ第三者本人への依存を減らす必要があった。そのためには各プロダクトでの情報を共有することと、ノウハウを蓄積して次の課題を効率的に解決するように計画することが大切だ」と、谷口氏は強調する。現在は「Adtech Developer Conference」という、アドテクスタジオのエンジニア全員が参加する社内向けカンファレンスが開催されており、1年間で利用した技術を他プロダクトに共有している。

 さらに、研究開発チームは人工知能の研究強化を目的として2016年1月よりAI Labに名称を変更、新たな活動を活発化させている。

 これを機に、研究開発の対象も変わっていった。これまでは広告はもちろん、ブランディングや位置情報、動画広告といった既存のプロダクトの課題に終始していたが、ディープラーニングや因果推論、統計モデリングといった基礎研究へ広がっていった。当然、研究の範囲が広がれば広がるほど、新しい技術を学ぶために勉強する必要に迫られる。そこで課題となるのが、学習や研究の効率化だ。

 そこで、大学や他の研究機関との産学連携を進め、現在は東京大学や東京工業大学など、大学の6研究室と協力関係を持っている。現時点では共同研究とアドバイザリー契約の2つの形があり、アドバイザリー契約では研究に関する具体的なアドバイスに乗ってもらうだけでなく、月1~2回のペースで研究に関する講義が社内で開講されている。

AI Labが連携している大学の研究室(2017年2月時点)
AI Labが連携している大学の研究室(2017年2月時点)

 こうした産学連携の効果について、谷口氏は「最先端の技術や情報を学習する機会が増えただけでなく、社外から『あの先生と研究されているんですね』と声をかけられたり、自分たちだけでは難しい高度な研究を進めることができたりと、多方面でメリットがあった」と、語る。

マジックワードを廃し、ビジネス側と綿密な関係を作る

 共通組織としての研究チームが、プロダクトチームと程よい距離を保ちながら研究開発としてのミッションを遂行する一方で、プロダクトチームにしっかりとジョインして成果を出した事例についても紹介された。

 「Dynalyst」というスマホゲームに特化した広告配信プロダクトでは、チームメンバーのうち研究開発に携わるメンバーが1割、開発が4割、そしてビジネスのメンバーが半数を占める。このプロダクトでは大量かつ高速に、効率よく広告配信を行う必要があるため、アルゴリズムが重要な役割を持つ。しかしアルゴリズム自体が複雑であるため、研究開発側からビジネス側へ十分な説明を行わないことも多かった。そのためビジネス側は、課題解決のための提案を「“ロジック”でなんとかならないか?」と、表現するようになり、“ロジック”という単語がマジックワードと化してしまった。

 さらに、機械学習に対して「難しそう」という固定概念がついてしまい、積極的に関わることをやめてしまったという。

 そこで、アルゴリズムに関する説明を行ったり、共通言語を増やすことを意識したりしながら、ビジネス側と連携してアルゴリズムを考える作業を行った。このように互いの仕事に対する理解が進んだ結果、ビジネス側が持つ、確度の高い仮説を活用して本番までの導入スピードを劇的に上げることができた。

 谷口氏は、「ビジネスにおける機械学習は、人ができることを、365日24時間、全案件に適応できることが強みであり、決して導入すれば勝手にKPIが向上するわけではない。やはり人のほうが優秀」と、語る。機械学習はあくまでレバレッジを効かせるためのもの、ということだ。

 最後に谷口氏は共通組織とプロダクト、それぞれの中での研究開発チームにおける組織作り・改革のポイントを改めて振り返り、発表を締めくくった。

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