ヤフーは自社が運営するYahoo! JAPANを通じて、100以上のサービスを提供し、そのスマートフォンアプリのダウンロード数は4.8億にものぼる。デイリーユニークブラウザ数は9,300万以上、月間アクティブユーザーIDは4,158万、最大リクエスト数は200万/秒、月間ページビューはじつに757億というまさに日本最大のサービス基盤といっていいだろう。
一般にはサービスや企業へのマーケティングソリューション事業に強い会社のイメージがあるが、これだけの規模のインフラを運営するには相当な技術力が必要だ。テクノロジーカンパニーでもあるヤフーが主催する「Yahoo! JAPAN Tech Conference」(YJTC)は、エンジニアやデザイナー、それらを目指す学生に向けたイベントで、インフラからサービスプラットフォーム、UI/UXデザインまで幅広い専門セッションが講演された。
ヤフーが実践してきた課題解決
基調講演では、冒頭に10年後の社会やサービスインフラをイメージしたコンセプトビデオが上映されたりしたが、藤門氏の講演テーマは「課題解決こそ未来を創る」とするヤフー流ものづくりだ(基調講演の動画はこちらから)。
「ビデオのような未来が実現するかしないかとかそれを予測するというのはナンセンス。未来をどう創るのかが重要。ヤフーでは創業以来、課題解決をミッションとし、人が困っていること、やりたいことを実現し、その人の未来を変えてきた。その積み重ねこそが、ヤフーの考える未来を創ることに他ならない」
こう語る藤門氏は、課題解決で未来を創ってきた実績として、1996年の創業時の検索エンジンのポータルサイトの開発を挙げた。当時はディレクトリ型検索エンジンだったが、商用インターネットのポータルとして1つの形をつくり、現在もその地位を維持している。
2006年には携帯電話(ガラケー)向けのサイトをオープンさせ携帯電話ユーザーにインターネットの世界を広げた。iPhoneが登場した2008年にはタップ操作によるインターフェースにも対応した。2015年には、トップページのパーソナライズを強化した。パーソナライズの強化と並行して、メディア事業とコマース事業のビッグデータの活用を進めている。検索履歴、購入履歴を単体で処理するのではなく、統合的に処理することで高度なレコメンドやサイトのパーソナライズを実現している。
藤門氏は、
「トップページのパーソナライズでは、検索のデータと、クリックのデータを掛け合せて、ディープラーニングによる処理を行うことで、ユーザーに最適なコンテンツを提供している。この取り組みでUI/UXやサイトデザインを変更せず、滞留時間を7%向上させている」
とビッグデータを持つ強みを強調した。
ヤフーが目指すデータドリブンビジネス
ヤフーではビッグデータ基盤をビジネスコアと考えている。例えばHadoopの規模は120ペタバイト、ノード数は4100とアジア最大級だと言う。エンジニアだけでも2400名以上を擁する。藤門氏は、データこそがビジネスをドライブする「ガソリン(燃料)」であると強調し、関連の技術、人材に投資をしていると言う。
実践した事例として、乗り換え案内で過去の検索ログに未来の検索ログを使った自己回帰モデルによる混雑予想をする技術(その後実装された)などが紹介された。
ヤフーのもの(サービス)づくりは、表面的な市場ニーズからのみ生まれるわけではない。藤門氏がもう一つ紹介したのはヤフーのHTTPS化だ。これは、サイトやサービスをよりセキュアにするという、技術側のシーズによる導入という側面がある。また、HTTPS化し、HTTP2が使えるようになれば、最新のプロトコルによる機能も提供可能になる。HTTPS対応のプロジェクトは、エンジニア側からスタートしたものだ。