巣籠悠輔氏
株式会社オートマティストで人材育成を担当。ディープラーニングに関する書籍の執筆を行う傍ら、2017年に設立された日本ディープラーニング協会の有識者会員として、日本初となるAIの資格試験を立ち上げるなど、人材育成に注力している。
曽我部完氏
2009年に株式会社グリッドを設立。2014年より人工知能の研究開発を始め、2015年に事業化。同社にてAIビジネスアカデミーを開講するなど、主に社会インフラ分野におけるIoT/AIの活用を推進している。AIビジネス推進コンソーシアムの発起人でもある。
木下紀子氏
株式会社富士通ラーニングメディア入社後、データベースを中心に基盤、MW系の講師を担当。テクノロジー中心に研修の企画を担当し、特にここ数年はクラウドを起点にビッグデータ・IoT・AIといったトレンドカテゴリの立ち上げを行う。 最近では、FUJITSU Digital Business College「AI・Analyticsコース」「Securityコース」の企画・運営に携わる。
吉田裕之氏
富士通株式会社入社後、富士通研究所・ソフトウェア事業本部等で、エキスパートシステム、ソフトウェア・エンジニアリング、オブジェクト指向、ディープラーニング、量子コンピューティング技術の研究開発に従事。
AI人材に求められる技術やスキルとは――やはりPythonは必須?
吉田:これまでのソフトウェア開発に携わるエンジニアと比較して、ディープラーニングや機械学習、AIを担当するエンジニアに求められるスキルや技術には違いがあるといわれています。まずは、ソフトウェアエンジニアがディープラーニングを活用するために必要な技術やスキルについて教えてください。
巣籠:ディープラーニングのコモディティ化といわれているように、ディープラーニングの実装自体は手頃にできるようになりました。必要なのは、なぜ、その実装をしているのかという理論がわかることでしょう。
曽我部:グリッドでは「AI人材」と一言でまとめず、AIプロジェクトが始まるときには、プロジェクトマネージャー(以下、PM)とAI開発を担当するエンジニアを分けて考えています。PMはお客さまと話をして、正しく課題を設定していくことを中心に担当します。そこが整理されて初めて、AI開発のエンジニアがデータサイエンスに取り組むことができるのです。
したがってPMに求められるのは「正しくゴールに向かう道筋を準備できる力」「対ビジネスサイドの人とディスカッションできるコミュニケーション能力」はもちろん、「統計スキル」や「プログラミング力」を持っていること。グリッドでは40代のビジネス経験を積んだ人材をアサインしています。
一方、AIの基盤技術の開発には、数学やアルゴリズムを理解した、比較的若いエンジニアをアサインすることが多いです。
木下:これからのビジネスは、データ駆動で推進されていく点が従来と大きく異なります。データ駆動にはデータを収集、蓄積、処理・分析し、フィードバックしていく一連の流れが欠かせません。
また、技術的な観点から見ると、分析力はもちろんですが、そのベースとなるデータの中身を認識しなければいけません。まずはそれらを理解することです。
私たちはAI人材を育成するための講座を展開しています。人気のコースを具体的に挙げると、AIのプログラミングに欠かせないPythonのコース。ビジネスの観点では、アジャイルやリーンスタートアップ、デザイン思考などを役割に応じて習得していくことが必要だと考えています。
吉田:以前はビジネス系のソフトウェア開発者がディープラーニングを学ぶイメージでしたが、最近はIoTで収集したデータを活用するためにディープラーニングを学ぶエンジニアも増えている印象です。その方々の得意言語はCだと思いますが、どうやってPythonを学べばいいでしょうか。
木下:そこは難しい問題です。Cで学んだことを生かせる教育を提供していく必要があると考えています。
曽我部:グリッドではPythonを書けることが採用の条件になっています。しかし、協力会社には未経験のエンジニアも多い。ただ、オブジェクト指向の言語がわかる人であれば、3週間程度の学習で問題なく書けるようになるイメージがあります。