ソフトウェア工学と機械学習工学が互いに手を取り合う場へ
オープニングで国立情報学研究所 石川冬樹氏が機械学習工学研究会(MLSE:Machine Learing Systems Engineering)の愛称として「メルシー」を提案した。近年機械学習や深層学習が発展し、機械学習を取り入れたシステムが普及しつつある。一方で機械学習システムの実装や運用には、従来のITシステムで培われてきたソフトウェア工学的な手法が適さない独特の難しさがある。
この課題が顕在化したのが2017年8月、情報処理学会 ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2017におけるパネル討論「機械学習とソフトウェア工学」だった。そこからFacebookなどを通じて情報交換を重ね、MLSE発足へとつながった。
MLSEでは機械学習システムに関する生産性や品質向上に関して、研究者だけではなく民間のエンジニアも交えて研究成果やプラクティスを共有する場を目指す。今後は月次のペースでセミナーやワークショップなどを各地で開催していく。
南山大学 理工学部 青山幹雄氏は「機械学習が工学となるために」と期待を寄せた。機械学習工学とソフトウェア工学が互いに手を取り合い、課題解決を通じて機械学習工学という新しい工学の体系化を目指す。ソフトウェア工学にある知見を機械学習工学に活用してみて、適合性などをソフトウェア工学にフィードバックして機械学習工学における開発方法論や要素技術を研究していく。
ソフトウェア工学から機械学習工学へ向かうと、データやアプローチがクローズドからオープンへと向かう。導き出されるものがアルゴリズムによる決定分から機械学習による非決定解になることも相違点となる。
青山氏は機械学習がシステム開発の新世界を開くことにも期待を寄せる。機械学習を利用したオープンシステムの例として自動運転システムを挙げ、新たな技術がもたらす社会的課題とその解決のデザインの重要性も説いた。