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【Developers Boost 2019】セッションレポート

技術に極振りできない人へ――エンジニア自身の市場価値を高める「プロダクトファースト」なキャリア戦略とは?【Developers Boost 2019】

【B-1】プロダクトファーストに価値を創造するエンジニアとしての生き方

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 技術、マネジメント、アウトプットなどエンジニアの「市場価値」はさまざまだ。その中でどのように自分の価値を高めていけばいいのか悩む人も少なくないだろう。その「キャリア戦略」のひとつの方法として、BASE株式会社の川口将貴氏は「自分の所属する企業のプロダクトに対して真剣に向き合うこと」が自らの価値を高める上で重要だったと語る。その思いや経緯とは何か。

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BASE株式会社 Product Dev Division 執行役員CTO 川口将貴氏
BASE株式会社 Product Dev Division 執行役員CTO 川口将貴氏

漠然と就職、仕事に忙殺されつつ技術者の責任を認識

 ネットショップ作成サービス「BASE(ベイス)」を中心に、Eコマースプラットフォームの開発・提供を行うBASE株式会社。2019年8月時点で80万ショップものユーザーを擁するほか、子会社でオンライン決済サービスや資金調達サービスなども展開。「Payment to the People, Power to the People.」をミッションに一貫してペイメントの簡易化に取り組んできた。

 こうした順調な成長のもと、2019年10月に上場したばかりの同社において、川口将貴氏はその少し前の同年7月、入社2年目の28歳でCTOに着任した。順調なキャリアを築きつつあると言えるだろう。

 しかし、そんな川口氏も学生時代や20代前半はエンジニアとしてのキャリアについて不安や悩みを持っていた。20代は技術に投資して、30代になったらマネジメントもやりつつ、その後はいったいどうなっていくのか――。

 川口氏は大学でネットワーク情報学部に在学しながらも、「プログラミングは基礎のみ、さらにコンピュータサイエンスを学んでいないことも引け目に感じてきた」と語る。深夜までネットゲームに熱中したり、適当なWebサービスを作ったり、コンピュータウィルスに興味を持って触ったり――卒論に追われることもなく、「なんとなく」大学に行って「ふんわり」と大学を卒業してしまった。

 そのため「とりあえず就職」と活動を始めたものの、インターネットは好きであっても、「何をどう仕事にすればいいのかわからず」漠然としていたという。周囲の志向とも異なることから情報交換ができず、TwitterなどのSNSを楽しみつつ、それでも自由な雰囲気が気に入った会社から内定が出たのを機に、Web企業のゲーム系子会社へと入社した。

 川口氏は「自分の人生において、インターネットに強い影響を受けているという意識はあったものの、入社直前になって『ガチャ規制』があり、とにかく不安だった」と当時を振り返る。しかし入社直後から仕事に忙殺され、その不安すら忘れるような日々だったという。

 「そもそも学生にありがちな感覚として『会社のために尽くすのはダサい』と考えていたが、実際に就職した途端、死ぬほど仕事があり、ダサいとも言っている暇がなかった。自分の実力が不足しているために仕事も終わらない。そのうちにだんだんと書いたコードに対して責任が生まれ、人が読めるコードであることやメンテナビリティを意識するようになっていった」

 パフォーマンスが悪いコードはサービスに直接影響する。自分が書いたコードで多くの人が不利益を被ったり、サービスが利用できなかったりすることに気づいたのだ。そもそも新社会人として学ぶために他人のコードを読むことや、逆に読んでもうことも増え、その意味でも「動けばいい」ものではなくなったのだ。

 「『自分1人でやっている』というのが大きな勘違いであり、品質の良くないコードは『悪』であると社会人になって初めて気がついた」と川口氏は語る。そこがエンジニアとしての本当のスタートとなった。

技術でプロダクトの価値を高める楽しさに目覚めて

 改めて当時の開発環境を眺めてみると、川口氏が入社した時点で開発対象のサービスは既に8年モノとなっていた。全てが古く、SVNで管理されたコード、言語のバージョンは3世代前、フレームワークも古いためにセキュリティ問題も十分に対応されず……と、ボロボロの状態だった。技術的な正しさを重視する新卒としては、モチベーションが下がるのも必然だろう。

 しかし、それに対して危機感を覚えた川口氏は「自分で変えていく」ことを意識するようになる。新人としてできる範囲は限定的。しかし、できることからひとつずつ実行することを心がけたという。

 まずCIを導入して手作業を自動化することや、SVNからGitへの移行も主導した。これについては開発環境全体が変わるため周囲の反発が大きく、川口氏はGitの優位性や移行のメリットをまとめ、チームにプレゼンテーションするなどして理解を得ていった。また言語のバージョンのアップデートにも取り組み、コードの表現力向上を強調して「無駄が減って技術力が上がる」と上司を説得、周囲の協力もあり会社全体の取り組みへと広げていった。

川口氏が取り組んでいったこと
川口氏が取り組んでいったこと

 「環境改革を進める中で技術力が高まり、特にインフラ知識の強化につながった。さらに環境を変えられたことから自信が生まれ、技術でプロダクトを良くする楽しさに目覚めた。それが今に至るブレイクスルーになったと思う」

 そして、波及効果は全社に広がっていく。率先して取り組む人に触発され、技術を新しく使いこなす人が増えてくると、全体の開発速度が向上していく。障害対応から活きたインフラ知識が身につき、みんなでサービスを良くしようといった流れが生まれてくる。メンバーそれぞれが改善し、ユーザーの反響にも敏感になってくる。そうした変化について川口氏は「毎日が文化祭準備期間のような感覚で、忙しくも楽しかった」と振り返った。

 1社目で得られたこととして、川口氏は「自分で環境を変えていくことが重要と実感できた」と語る。しかし仕事が面白くなる一方、惰性で仕事ができるようになってきたことを感じ、新天地を求める気持ちが高まってきた。そして、上司の退社を機に転職を考えるようになったという。もともとインターネットに関係するサービスに関わりたいと考えていたことを思い出し、その中でも未知の分野に行きたいと考え、オープンなWantedly経由でいくつか選考を受けた。

 「最初の面接からBASEの前CTOを務めてきた、えふしんさん(藤川真一氏)が登場し、知っていた方が出てきて驚いた。会社としてもインターネットとの親和性が高く、『インターネットで世界を変えたい』と話が盛り上がり、PHPは経験がなかったからこそ『最弱』になって成長の伸びしろがあると思って入社を決めた」

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キャリア戦略を「プロダクトファースト」で考える

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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