本記事のレポーター
- 谷口 展郎、堀口 研一、岩塚 卓弥、栗原 伸豪(NTT ソフトウェアイノベーションセンタ)
- 田端 一也、高橋 寛恒、樋口 隆寛(NTTデータ)
- 神谷 法正、関戸 将史(NTTコムウェア)
SpringOneとは
SpringOneは、VMware Inc.(以下VMware)が開発を牽引するOSSのアプリケーション・フレームワークであるSpring Framework(以下Spring)や、同社の商用プラットフォームVMware Tanzu(以下Tanzu)に関する最新情報、ユーザ事例を中心に、DevOpsやマイクロサービスといったソフトウェア開発のトレンドを扱うカンファレンスです。
毎年1回米国で開催されていましたが、2020年は世界的な新型コロナ禍の影響から初のオンライン開催となりました。参加費は無料で、必要なのは参加登録だけとなり、非常に参加しやすいイベントだったように思われます。実際に今回の登録者数は4万人以上で、単純に比較はできませんが、米国開催であった前回の約10倍の人数が参加するイベントとなりました。また、前回までは"SpringOne Platform"という名称で開催されていましたが、今回から"Platform"が外れてシンプルに"SpringOne"という名称になりました。
各セッションでは、リアルタイムで動画配信が行われるとともに、セッション後にはSlackやZoomを用いた発表者と参加者のコミュニケーションが行えるようにもなっていました。なおセッションの動画は、後日公開されました。
オンライン開催についての一参加者の感想としては、まず現地開催と比べて移動が楽になりました。また、Slackの活用により参加していないセッションの質問や反応が見やすくなった点や、動画配信により自分のペースでセッションを聞けるようになった点などに好印象を持ちました。
今回のSpringOneは、Pivotal Software,Inc.(以下Pivotal)のVMwareによる買収が完了してから初めてのSpringOneとなりました。とはいえ発表内容に大きな方向転換はなく、Spring技術者にとって、新規技術トピックや導入事例等々の幅広く楽しめるイベントであることに変わりはありませんでした。
キーノート・セッション
SpringOneではMain Stageで行われるキーノート・セッション(以下キーノート)と、個別の技術や事例に関してより詳細に語られる個別セッションが用意されています。ここでは2日間で計3回行われたキーノートから注目トピックをレポートします。
初日のオープニング・キーノートでは、VMware社Senior Staff EngineerのJuergen Hoeller氏がSpringの16年間の歴史を簡単に振り返りつつ、これまでSpringはJavaやビジネスのトレンドに合わせて進化し、幅広い分野のユーザに受け入れられ、現在ではSpringは大規模モノリシックからマイクロサービスまで幅広いアーキテクチャで利用されていると語りました。
更に今後の発展要素として、GraalVMやProject Leydenのサポートをトピックとしてあげ、GraalVMによりJavaアプリのデプロイメントを再考することになるかもしれないといった話もあるということで、今後の動向に目が離せません。
続いてMicrosoftのJulia Liuson氏が、Azure Spring CloudのGA版を紹介した点も大きなトピックでしょう。Azure Spring Cloudは、Spring開発者がクラウド・インフライントラクチャの管理をより、簡素化したいという要望を解決する製品であり、Julia Liuson氏が「Kubernetesでアプリを実行したいが、Kubernetesを直接操作したくないユーザにとって最適なツールである」と語りました。
初日午後のキーノートでは、VMwareのMadhura Bhave氏がSpring BootによるKubernetes機能のサポートについて語りました。また同セッションではVMwareのIlayaperumal Gopinathan氏によるSpring Cloud Data Flowのデモもあり、盛りだくさんの内容でした。
2日目のキーノートでは、BTのRajesh Premchandran氏が、自社のデジタル・トランスフォメーション(以下DX)に関する事例紹介を行いました。事例紹介はSpringOneの特徴の一つで、個別セッションでも複数の発表があり、技術の利用例だけではなく、企業文化や開発者のマインド等が語られることもあって、DXの成功事例やその理由を多面的に知ることができます。Premchandran氏はTanzuを利用した技術戦略、セキュリティ、人材といった観点から、DX成功のキー要素について述べました。
これら3回のキーノートからは、VMwareがマイクロサービスやクラウドネイティブ等のDXを実現するための技術を幅広くサポートする姿勢が感じられ、今後も企業のDX実現のための技術発展に寄与していくことに期待がもてました。
以降は個別セッションのレポートです。