SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

[最終回]私たちは皆サービスデザイナーだ――サービスデザインにおける共創とは

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「顧客と一緒に変化していくこと」がサービスデザインの本質

 ここ数年、先の見通せないVUCAと呼ばれる時代が到来し、先が見通せない世の中で私たちはさまざまな変化を経験しました。最近の新型コロナウイルスの出現では、なかば強制的に対人コミュニケーションのありかたを見直さなければならなくなりました。私たちはこの半年で、当たり前だったことが当たり前でなくなる瞬間に何度も立ちあっています。

 企業が顧客のニーズをピンポイントで捉え、価値のあるプロダクトを提供し続けるのは、このような状況下ではとくに難しいことです。大きな顧客基盤を抱えた資本力のある企業であったとしても、顧客や社会の変化に追随するのは容易ではありません。

 サービスデザインの本質は、顧客やユーザーの変化に頑張って対応し続けるのではなく、顧客と一緒に変化していくこと。同じ目的を顧客と共有し、サービスを中心としながら、新しい価値作りにつながる関係を構築するのです。

 一緒にモノを作るだけでも共創と言えるかもしれませんが、サービスデザインにおける共創とは、持続的で包括的なものです。一時的ではなく長期的な関係性が前提となるため、企業側は顧客に対して誠実かつ正直でなければなりません。大半の顧客が気づかなかったとしてもたった1人が違和感に気づけば、それは瞬く間に広がっていきます。

 そのため提供側はどのようなタッチポイントでも、スタッフ1人ひとりの対応が顧客体験に影響しているという意識は不可欠です。顧客とのタッチポイントから企業側にさかのぼっていけば、直接顧客と接していないスタッフでもその業務は顧客体験に影響を及ぼしているはずです。

人間中心の観点が示すのは「全員が価値の創造者」

 第1回目に紹介したサービスデザイン思考の6原則の最初は「人間中心」でした。ここで言う人間中心とは、顧客やユーザーだけではなく、提供者、その関係者、社会全体をも含むものです。提供側と顧客やユーザー側の相互のコミュニケーションによって価値が共創される、という認識に立てば、サービス提供企業に勤務するスタッフの体験価値向上を同じくらい重視する必要があります。あらゆる企業活動が顧客視点で行われるべきですが、顧客のニーズや要求に応えるだけでは、決していい共創関係とは言えません。

 顧客の立場でさまざまな企業やサービスに触れているときのことを考えると、顧客は提供者の意志に共感し、追随するものであるということが実感できるのではないでしょうか。サービス提供者として、ユーザーとどのような未来を作りたいのかを示しそれを貫き通す、という提供者視点を持つことも同じくらい重要なのです。

 ここ数ヵ月はとくに、新しい生活様式への対応という大きな軸が消費者の価値観を束ねているように思えます。そのため、自分たちが提供しているサービスの価値を顧客視点で判断できるいい機会かもしれません。

 人間中心とは、私たち1人ひとりが価値の提供者であり、価値の創造者であることを示しています。サービスデザインという取り組みの中で共創しているのであれば、私たちは誰もがサービスをデザインしている、サービスデザイナーだと言えるのではないでしょうか。

 時代や人が変化し続ける限り、サービスが完成することはありません。だからこそ顧客との対話を通じて、また、自身の生活者としての視点をうまくサービスにフィードバックしながら、新たな価値を提供していきましょう。

 さて、全4回にわたってお送りした「サービスデザイン はじめの一歩」は、これで終わりです。方法論でもあり精神論の部分もありましたがいかがでしたでしょうか。

 私たちは、サービスデザインの考えかたが当たり前になれば、さらに社会は良くなると考えています。この連載が、皆さまのサービスデザインへの取り組みのきっかけになれば幸いです。

この記事の続きは、「CreatorZine」に掲載しています。 こちらよりご覧ください。

※CreatorZineへの会員登録(無料)が必要になる場合があります。

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/13213 2020/11/16 08:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング