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Chatworkのプロダクトマネジメントに学ぼう

プロダクトマネージャーはいつから必要? Chatworkに学ぶPMの設置と採用で意識すべきこと

Chatworkのプロダクトマネジメントに学ぼう 第1回

資金調達とスケールの壁、新プロダクトマネージャー就任

 リリースから数年、順調に事業は成長。ベンチャーキャピタルから大きな資金調達にも成功し、開発チーム・ビジネスチームも計30人ほどだったのが、半年で倍になるなど、急速に拡大していきました。

 このタイミングでも、私のプロダクトマネージャー兼リードエンジニアという役割は相変わらず同じでしたが、さすがに自分がボトルネックになってきているのを感じました。

 私のプロダクトマネージャー兼リードエンジニア体制による効率的なプロダクト開発が、Chatworkの初期成長を支えていたのは間違いありませんでした。しかし、会社の取締役CTOでもあり、新たに株主が増えた取締役会への対応や組織のスケール、たまっている技術的負債への対応など、プロダクトに使える時間がどうしても少なくなっていたのです。

 「このままではマズイ」という危機感がありました。取締役である自分は、どうしても経営側の役割に重点をおかざるを得ません。自分の代わりにプロダクトを引っ張っていってくれる、プロダクトマネージャーが必要だと思いました。

 専任のプロダクトマネージャーに役割交代していく適切なタイミングとしては、スタートアップでいうところのシリーズA前後、プロダクトのコンセプトがしっかりマーケットの芯を食っている(Product Market Fitしている)とある程度確信でき、プロダクトにもマーケティングにも大きく投資するタイミング(0→1から1→10へ)が良いのではないかと思います。

 もちろん、1人目のプロダクトマネジメント人材は非常に重要ですので余裕を持って動き出す必要があり、社内登用と社外採用の両面で並行して人材獲得を目指すのが良いと思います。

 当社でも、人材エージェントさんなどにお願いし、優秀なプロダクトマネージャーの方を探しましたが、当時はプロダクトマネージャーという職種自体の認知がほとんどなく、かなり頑張りましたが、採用は困難でした。

 そこで、社内に白羽の矢が立ちました。当社のシリコンバレーに設立していた子会社へインターンとしてジョインし、社員となっていた石田隼を日本に呼び寄せ、プロダクトマネージャーになってもらうことにしたのです。

 石田はもともと学生時代に友人とUXコンサル会社を立ち上げた経験があり、エンジニアリングやビジネスの経験はほとんどないものの、シリコンバレーに長くいたこともあってか、非常にすぐれたUXやUIのセンスがあり、何よりプロダクトへの強いパッションがありました。

 会社の全社総会で、石田のプロダクトマネージャー就任を発表。その時、全社に伝えたのは、今後プロダクト仕様への意思決定は役員よりもプロダクトマネージャーの意思が優先されるということ。プロダクトマネージャーは「製品のCEO」とも言われる非常に重要なポジションですが、その点を役員が全社員に向けてはっきりとオーソライズ(公認を宣言)することが大切だと思います。

プロダクトマネジメント室の立ち上げ

 石田がプロダクトマネージャーとなり、私のプロダクトマネージャーとしての権限を委譲することで、プロダクトへの意思決定のスピードは大幅に上がることになりました。しかし、今度はすぐに石田のタスクがパンパンに。大きくなり続けるプロダクト規模に対応するため、プロダクトマネジメントのチームが必要となりました。

 そこで、私の直下の組織として石田をマネージャーとした「プロダクトマネジメント室」を発足しました。当社では、技術を統括する「プロダクト本部」と、ビジネスを統括する「ビジネス本部」がありますが、発足当時はあえてそのどちらの本部にも所属しない形でプロダクトマネジメント室を設置しました。

 年間のプロダクトロードマップは経営会議での決議をとるものの、ロードマップに載っている個々のプロジェクトの詳細は、私とプロダクトマネジメント室の会議体である「プロダクト企画定例」にて独立して議論、開発着手からリリースまで決議できる機関設計にしました。

 私がプロダクトマネージャーの管掌役員として意識したことは、プロダクトに関わる関係部門に、“健全な牽制関係”を保つことです。開発部門は、どうしても開発効率を意識して、技術的負債の解消や、開発しやすい順番で機能実装していきたいと思ってしまいます。ビジネス部門は、どうしても収益の最大化を意識して、グロース施策ばかりをやってほしいと思ってしまいます。

 もちろん、開発効率も収益もどちらもとても大切ですが、プロダクトにおいてKPIには現れにくい「ユーザー価値」をしっかり作り出すことも大切で、そのバランスをハンドリングして中長期のビジョン達成を目指すのがPM組織のミッションだと考えています。

 プロダクトマネジメント室は2021年1月よりCEO直下からプロダクト本部下となり、「プロダクトマネジメント部」として7名(内2名産休中)が在籍しています。部署は多様なバックグラウンドやキャリアを持つメンバーで構成されています。前職はエンジニア、マーケター、システムエンジニア、UIデザイナー、Webディレクターなどさまざまです。

 今の日本においては、経験豊富なプロダクトマネージャーを何人も外から採用することはまだまだ難しいと思います。プロダクトマネージャーのメンバーを揃える時は、プロダクトマネージャーにとって必要なスキルセットの一部(開発、ビジネス、UIデザインなど)をバックグラウンドに持つプロダクトマネジメント志向がある方をバランスよく採用し、相互にスキル交換をはかりながらプロダクトマネージャーとしての経験値を高めていくのが良いのかなと思っています。

 当社のプロダクトマネジメント室は発足から2年ほどがたち、自分たちなりの方法論や育成プログラムなどもおぼろげながらできてきたので、また今後の連載のなかでも共有していければと思っています。

最後に

 駆け足ではありますが、約10年にわたるChatworkの歴史のなかで、プロダクトマネージャーという役割がどう変化し、PM組織が生まれていったのかをご紹介しました。

 次回からは現役プロダクトマネージャー陣による実践的なノウハウなどをお伝えしていきますので、お楽しみに!

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この記事の著者

山本 正喜(Chatwork株式会社)(ヤマモト マサキ)

 Chatwork株式会社 代表取締役CEO。 電気通信大学情報工学科卒業。大学在学中に兄と共に、EC studio(現Chatwork株式会社)を2000年に創業。以来、CTOとして多数のサービス開発に携わり、Chatworkを開発。2011年3月にクラウド型ビジネスチャット「Chatwork」の...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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