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翔泳社 新刊紹介(AD)

Google ColaboratoryとPythonでAI技術の基礎を学ぶ~『あたらしい人工知能技術の教科書』より

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 Udemyの人気講座「AIパーフェクトマスター講座」が、CodeZineを運営する翔泳社より書籍化。『Google Colaboratoryで学ぶ!あたらしい人工知能技術の教科書』として発売中です。今回はブラウザとPythonでAI技術の基礎を学ぶ本書から、その概要とAIの活用例について紹介します。

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本記事は『Google Colaboratoryで学ぶ!あたらしい人工知能技術の教科書』の「Chapter 0 イントロダクション」と「Chapter 1 人工知能、ディープラーニングの概要」から一部を抜粋しました。掲載にあたって編集しています。

はじめに

 AI(人工知能)は、我々人類をサポートする重要な技術になりつつあります。多くの国家、企業、もしくは個人がAIの動向を注視しており、AIを扱える人材の需要は日々高まっています。

 しかしながら、多くの人にとってAIは「手軽に参入できるもの」とはいい難いものでした。AIを学ぶためには、線形代数や微分、確率・統計などの数学をベースに、プログラミング言語を使ってソースコードを書いていく必要があります。

 本書では、この問題に対して「Google Colaboratory」を使って対処します。Google Coolaboratoryは誰でも簡単に使い始めることができて、プログラミング言語Pythonの実行可能なコードや文章、数式を手軽に記述することができます。環境の設定などを気にせずにいつでも即、本格的なコードを実行することができるので、AIを初めて学ぶ方にもお勧めのPythonの実行環境です。

 この環境で、ディープラーニング、CNN、RNN、生成モデル、強化学習などのいわゆる「人工知能」と呼ばれるものを、なるべく包括的に、基礎から体験ベースで学びます。様々な人工知能の技術を順を追って幅広く習得し、コードを実行して結果を確認します。本書を最後まで終えた方は、AIをとても馴染みのある技術に感じられるようになるのではないでしょうか。

 AI技術は、今後の世界に大きな影響を与える技術の1つです。様々な領域を領域横断的につなげる技術でもあり、どの分野の方であってもこの技術を習得することは無駄にはなりません。新しい時代に進むために、一緒に楽しく人工知能を学んでいきましょう。

本書の使い方

 本書は、可能な限り多くの方がAIを学べるように、AI技術を順を追って学べるように設計されています。また、扱うプログラミングのコードは高度な抽象化よりも直感的なわかりやすさを重視しています。変数名やコメントにも注意を払い、可能な限りシンプルで可読性の高いコードを心がけています。

 本書は一応読み進めるだけでも学習を進められるようにはなっていますが、できればPythonのコードを動かしながら読み進めるのが望ましいです。本書で使用しているコードはウェブサイトからダウンロード可能ですが、このコードをベースに、試行錯誤を繰り返してみることもお勧めです。実際に自分でコードをカスタマイズしてみることで、アルゴリズムの理解が進むとともに、人工知能全般に対するさらなる興味が湧いてくるかと思います。

 本書では開発環境としてGoogle Colaboratoryを使用しますが、この使用方法についてはChapter2で解説します。本書で使用するPythonのコードはノートブック形式のファイルとしてダウンロード可能です。このファイルをGoogleドライブにアップロードすれば、本書で解説するコードをご自身の手で実行することもできますし、チャプター末の演習に取り組むこともできます。

 また、ノートブックファイルにはMarkdown記法で文章を、LaTeX形式で数式を書き込むことができます。可能な限り、ノートブック内で学習が完結するようにしています。

 本書はどなたでも学べるように、少しずつ丁寧な解説を心がけておりますが、一度の説明ではわからない難しい概念に出会うこともあるかと思います。

 そういうときは、決して焦らず、時間をかけて少しずつ理解することを心がけましょう。ときには難しい数式やコードもあるかと思いますが、理解が難しいと感じた際は、じっくりと該当箇所を読み込んだり、Webで検索したり、検証用のコードを書いてみたりして取り組んでみましょう。

 専門家だけではなく、全ての人にとってAIを学ぶことは大きな意義のあることです。好奇心や探究心に任せて気軽にトライアンドエラーを繰り返し、様々なAI技術を身につけていきましょう。

身近なAI

 AIは既に社会における様々な領域で活用され始めています。それを実感していただくために、我々が身近に感じることのできるAIの活用例をいくつか紹介します。

 まずは、天気予報の例を紹介します。この分野でも、AIは既に活用され始めています。AIを使えば、今までのようなデータに加えて、雲の色や形からも天気予報ができるようになります。これにより、既存の天気予報の精度の向上が期待できますが、例えば個人個人がスマートフォンを雲にかざすことで局所的な天気の動向を予測することも、いつか可能になるでしょう。また、AIは自身の予報が間違った際に、その間違ったということ自体を教師データにして、次の予報の精度を上げることが可能です。自身の予測結果を元に継続的にモデルを改善することで、予報は継続的に改善していきます。

 食品産業でもAIは活用され始めています。消費者の味覚を満足させるようにAIが成分を調整したお菓子や飲料などが、既に販売されています。また、ユーザーの購買履歴などから嗜好を分析し、好みに応じて食品をレコメンドする仕組みが開発されています。

 また、スポーツの分野でもAIの導入は進んでいます。例えば、野球では膨大な配球や走塁などのデータの蓄積があるので、このようなデータを効果的に分析できるチームは次第に有利になりつつあります。実際に、福岡ソフトバンクホークスは、AIによる作戦立案や練習メニューを積極的に導入しようとしています。野球における膨大な数の不確定要素から最適解を導き出すのは、まさにAIが得意とするところです。

 他の競技、ゴルフやバスケットボール、体操などでも、AIは既に監督やコーチとして力を発揮しつつあります。AI時代では、人間はAIからアドバイスをもらったり、最適解を示してもらえるようになります。そのような意味で、AIは名監督かつ名コーチとなるでしょう。

 AIはスポーツにおける審判としても活躍を始めています。特に、フィギュアスケートやアーティスティックスイミングのような、人間にしか採点ができないと考えられてきた競技でも、AIによる判定システムが研究開発されています。このようなシステムが確立されれば、より公正なジャッジが可能になるでしょう。

 以上のように、AIは既に社会に溶け込んだツールとなりつつあります。今後もさらに多くの分野で、様々なAI技術が活用されていくことでしょう。

画像や動画を扱う

 画像や動画に対する処理は、AIが最も得意なことの1つです。

 画像に何が映っているかを判断する画像認識のタスクは、ディープラーニングの登場以前から取り組まれてきました。近年、ディープラーニングはこの分野にブレークスルーをもたらしました。ディープラーニングでは特徴量を自動で抽出可能なので、精度の高い物体認識が可能になります。このようなディープラーニングがそれ以前の機械学習の手法よりも優れている理由は当初よくわかっていませんでしたが、最近はその理論的な裏付けが徐々に進んできています。

 なお、このような画像認識では、Chapter7で解説する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)がよく使われます。

 画像認識の具体的な応用ですが、例えば顔認証の技術は、スマートフォンのロック解除や防犯に使用されています。みなさんのお手元のスマートフォンでも、既に顔認証は身近な技術になっているのではないでしょうか。

 他にも、クラウドサービスやスマートフォンにおける写真の分類や仕分け、ウェブ画像検索などで画像認識は活用されています。撮影した写真のストックが、いつの間にか適切に分類されていることに驚いた方も多いと思います。

 また、画像認識を医療に応用することにより、病巣部の検出やオンライン診断などが可能になります。特に、病巣部の検出で画像認識技術は大きな成果を挙げています。例の1つに、国立がんセンターは、画像認識を早期の胃がんの検出に活用しています。早期の胃がんは形状が複雑で多様であり、専門家でも判断が難しいという問題がありました。そこで、ディープラーニングによる画像認識技術を利用することにより、高精度の検出方法が確立されました。

 他にも膨大な医療データの活用など、AIの活用は医療において大きな可能性を秘めています。

 そして、AIによる画像や動画の生成も行われています。Chapter9、10で解説するVAEやGANなどのAI技術を使えば、現実にはない画像や動画を自動で生成することが可能になります。

 このようなデータの生成技術を利用し、モネやゴッホの画風を学習させることで現実に存在しないゴッホ風の家の絵を描くことも可能になります。他にも、線のみの絵や白黒写真を自動で着色する技術や、テキストから画像を生成するような技術も研究開発されています。

 また、このような技術により、撮影していない動画コンテンツを生成することも可能になります。最近では、既存の動画中の物体の入れ替えや、モーションの変更なども技術的に可能になってきています。一方で、偽の動画と音声を生成し、まるで本物の政府要人の発言のような動画が作成されたこともあり、悪質なフェイクニュースとして問題になりました。これらの話題は、AIの躍進により新たな仮想現実のフロンティアが生まれる一方で、デジタルなデータが本物と紐付いているかどうか、判定するのが極めて難しくなることを意味します。

産業上の応用

 AI技術の中でも特に産業と直接結びつきやすい、「異常検知」の例を紹介します。異常検知とは、大量の計測値を機械学習させて、複雑なパターンが異常であるかどうかを検知する技術です。様々な産業で、不正な取引の検知や、工場における装置故障の検知、機器の監視などに活用されています。

 機械学習は大きく教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3つに分けることができますが、異常検知にはこのうち教師あり学習と教師なし学習が主に使われます。教師あり学習にはディープラーニングなどがありますが、過去のデータからパターンを見い出し、未知のデータが異常かどうかを確率として表します。十分に過去のデータが蓄積されている場合はこの教師あり学習が有効です。しかしながら、工場の装置異常などあまり頻繁に発生しない出来事、すなわち十分に過去データが蓄積されていない場合は、主成分分析などの教師なし学習が使われます。

 異常検知の製造業における活用例ですが、産業機械の稼働状況に異常がないか監視したり、画像をチェックして異常な製品を検出したりするのに使われています。また、構造物を遠隔監視し、事故につながる危険がないか早めに検知するシステムにおいても、AIによる異常検知が使われています。

 非製造業においてですが、例えば、ファイナンスの分野では不正の検出に異常検知が使われています。実際に、三井住友フィナンシャルグループなどは不正検知アルゴリズムにディープラーニングを採用し、不正な取引を自動で、なおかつそれまでよりも精度よく検出する仕組みを開発しました。また、防犯の分野においては、監視カメラ動画から侵入者を検知する仕組みが開発されており、医療の分野では、喘息の発作の検知などに異常検知が使われています。

 次に、「設計」における活用例を紹介します。AIは設計の分野でも活躍しています。

 例えば、飛行機の翼の設計では、強化学習などを用いて最適な揚力が得られる翼の形状の最適化が行われています。

 建築においては、3次元モデリング技術に基づいて、AIが短時間で複数の施工計画を提案する技術の研究が行われています。

 化学の分野では、高分子化合物の設計にAIが使用されています。高分子化合物は形状が複雑であるため、意図したものを作るのはなかなか困難でした。そこで、理化学研究所と東京大学のチームは実際に高分子化合物をAIに設計させ、望んだ特性を持つ化合物の合成に成功しています。今後、このようなAIによる高分子化合物の設計技術が進めば、医療や農業など様々な分野において技術の革新が進むことでしょう。

 また、強化学習の産業への応用も進んでいます。DeepMind社によるデータセンターの電力削減の事例が有名です。この事例では深層強化学習が使われているのですが、データセンター設備の稼働状態や気候などに応じて冷却設備の設定を最適化することで、冷却設備の消費電力を40%削減できたとの報告がありました。そして、強化学習のファイナンスへの応用も研究されています。資産管理やリアルタイムトレードなど、現実の問題に適用した事例も増えてきています。しかしながら、行動を選択する理由が説明しづらく、ブラックボックス化してしまうことが難点ではあります。

 以上のように、AIは様々な産業で人間の代わりを務める可能性を秘めています。今後も多くの産業で、AIの活用が模索されていくのではないでしょうか。

Google Colaboratoryで学ぶ!あたらしい人工知能技術の教科書

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Google Colaboratoryで学ぶ!あたらしい人工知能技術の教科書
機械学習・深層学習・強化学習で学ぶAIの基礎技術

著者:我妻幸長
発売日:2021年9月8日(水)
定価:3,740円(本体3,400円+税10%)

本書について

本書はUdemyで大人気の講座『AIパーフェクトマスター講座 -Google Colaboratoryで隅々まで学ぶ実用的な人工知能/機械学習-』をもとにした書籍です。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/14735 2021/09/15 07:00

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