デザイン経営がもたらすスモールイノベーションとブランド価値
デザインプロセスや顧客中心の考え方を経営視点に取り入れる最大のメリットは、「ユーザーに本当に使われるプロダクトを生み出せる」点です。
カスタマーサポートやソーシャルメディアを通じて顧客からのポジティブなフィードバックが寄せられることで、組織全体のモチベーションも上がり、イノベーションが生まれやすい好循環につながります。
ソフトウェアプロダクトは、小さなイノベーションの集合体です。新しいアイディアが詰まったプロダクトにお客さまは情緒的な価値を感じ、リピート率といった我々の事業効率も良くなっていく。持続的な成長事業を生み出すために、人間を中心に置いた経営視点は欠かせないと思います。
ブランディングという点でも、デザイン経営には大きなメリットがあります。ブランド価値が高まれば、それだけで選ばれる理由になるからです。
創業時から手掛ける印刷事業は、サービスやプロダクトの使いやすさがブランド価値となり、競合サービスより高い値段であっても、業界No.1の成長をすることができていると自負しています。そのあとに展開している広告、物流領域については、巨大なマーケットであるがゆえに競合も多く、スピードとユーザビリティ、デザイン価値すべてのドライブが競合優位性の観点でもさらに重要です。
ラクスルの組織力のベースにあるのは、「遠心力」と「求心力」の両立です。
自分が携わる事業にとことんコミットし、外に向けて進化させる「遠心力」が求められる一方で、ガバナンスにおいて必要なのは、複数事業を束ねる「求心力」。
今後もさまざまな産業領域で競合優位性を高め、事業成長と一致団結のバランスをとるうえで、「ラクスル社が展開するサービス」という理由で選んでもらえる世界観を作っていかなければなりません。そのためにも、ブランディング構築を全事業へ横串で進めるといった、高度なデザイン投資が必要だと考えています。
事業をドライブするうえで欠かせないのは、論理的思考力に代表される「ビジネス思考」、プログラミングの概念等にもとづいた「システム思考」、そして「デザイン思考」の3つです。
しかし、アート的な感性を含むデザイン思考は、ビジネスの世界に入ると途端に重視されなくなってしまいます。私たちは子どもの頃から感覚的に絵を描いたり、音楽を楽しんだりと、五感で「心地いい・悪い」を捉えています。ロジカルな考え方が大切であるのと同じくらい、絵やビジュアルで描いて人の情緒に訴える遊び、アート思考もまた、とても重要な視点ではないでしょうか。
次回は、デザイン推進室発足の裏側についてお届けします。お楽しみに。