はじめに
本連載では、マルチプラットフォーム化が進む.NETと、そのWebアプリケーション開発フレームワークであるASP.NET Coreの全体像を俯瞰します。ASP.NET Coreは、アプリケーションの目的や開発スタイルに応じて選択することができる多彩なサブフレームワークを搭載しています。それらの基本的な性質や機能を読者に示すことで、ASP.NET Core導入の一助になることを目的とします。
対象読者
- Core以前のASP.NETに慣れ親しんだ方
- Web開発の新しい選択肢としてASP.NET Coreを理解したい方
- ASP.NET Coreの多彩なフレームワークを俯瞰したい方
必要な環境
本記事のサンプルコードは、以下の環境で動作を確認しています。
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macOS Monterey / Windows 10(64bit)
- .NET SDK 6.0.100
- Google Chrome 103
ASP.NET Core MVCとは?
ASP.NET Core MVCは、Core以前のASP.NETから導入されていた、MVCパターンによるWebアプリケーションフレームワークです。MVCパターンとは、アプリケーションの構成要素をモデル(Model:M)、ビュー(View:V)、コントローラ(Controller:C)に分割し、それぞれが独立して協調しながら動作する設計モデルです(図1)。Modelはデータ処理、ビューはUIの構築、コントローラはリクエストの振り分けや処理結果のビューへの反映を行います。多くのWebアプリケーションフレームワークで採用されている、標準的なパターンです。

ASP.NET CoreにおけるWebアプリケーションのためのフレームワークには、第2回で紹介したRazor Pagesがあります。Razor PagesはASP.NET Core MVCに対して後発の技術になりますが、新旧を以て優劣が決まるということにはなりません。実際の開発においては、両者の特性を理解してフレームワークを選択する必要があります。
Razor Pagesはページ指向のフレームワークで、MVVM(Model、View、ViewModel)パターンに基づいているのは第2回で触れました。ページ指向であるので、個々のページに対応するファイルをユーザに見せたい階層構造で配置すればよく、直感的でWebサイトをメンテナンスしやすいというメリットがあります。また、ページのファイルも、表示のためのビュー(.cshtml)とデータ処理のためのページモデル(.cshtml.cs)が対になるので、お互いの関係がわかりやすいというメリットもあります。
しかしながら、Webサイトを構成するページが増えてくると、それぞれのページの関係が把握しづらくなってくる、ビューとページモデルの分業がしにくいという問題もありますので、比較的小規模なサイト構築に向いていると言えます。
これに対してMVCでは、コントローラという元締め的な存在がユーザのリクエストを受け付け、その内容に基づいて必要なアクションを呼び出してモデルに対する処理を行い、ビューに結果を反映させるという処理を行います。それぞれが独立しているため、分業がしやすく相互に影響を受けにくいというメリットがあり、中規模以上のサイトに向いていると言えます。ただし、どうしてもコントローラに処理が集中することになり、コントローラの開発面と稼働面の双方で負担が大きくなるという問題があります。