スキルを身につけて自身の価値を高め、単価の高い都市部の案件獲得を
最初の質問は「フリーランスのエンジニアになる是非」について。久松氏は、2022年の11月ごろから世界的に景気が後退しており、GAFAに代表されるビッグテックや勢いのあるスタートアップがレイオフや採用活動の縮小をしていることを指摘。また、日本の雇用形態では正社員は解雇されにくく、派遣社員やフリーランスはされやすいため「この瞬間だと、フリーランスになるのは危ういと」とコメントした。
もちろん、フリーランスで次々と経験を積んでいる人もいる。そのような人に共通する傾向について久松氏は「地方在住のフリーランスの方にインタビューするのですが、エージェントを使っていなくて、SNSのDM経由で仕事の依頼が来るようになっています。SNSでの発信やGitHubにコメントを残す識者として認識されるのが、指名されるポイントです」と語る。
アイドルである音井氏も、以前はSNS経由で仕事の問い合わせをもらうこともあり、自身が大学生であることや専攻や職務経歴など得意分野について発言すると、それらに関連した仕事については声をかけやすいのではと話した。
國司氏は、「状況は厳しいかもしれないですが、キャリアを築いていく中でスキルを身につけて市場価値が上がると、フリーランスとしても楽しく働いていけそうです」とまとめた。
次は「実家が地方です。本当に地方で働くエンジニアはいるのでしょうか?」という質問。久松氏は、地方でサーフィンをしながらエンジニアとして活躍するといったイメージの人は5%ほどで、残りは介護・看護など家庭の事情で地元に戻って働いているのが実情だとした。リモートワークの普及によって、親の介護をしながら働くことも一般的になって、1年半の間に8名から43名に増員した企業の例もある。
ただし、障害発生時の現地対応が必要なSREや、マネージャーなど管理職の場合は何かあればオフィスや現場に駆けつける必要があるため、都内近郊に住む人が多いとした。
音井氏は愛知県出身で、アイドル活動のために上京している。アイドルにならなければ地方で働いていたかもしれないとしながら、現在はテレワークやオンライン配信も可能なので地方にいながらアイドル活動ができるかもしれないと述べた。
久松氏は、地方の地場の顧客が注文する案件は契約金額が低い傾向にあるが、弁護士や公認会計士、地方の大手企業なら都市部の顧客の案件と比べても契約金額は遜色ないことを説明。地方の仕事だけでなく、都市部の顧客の案件を確保していくことの重要性を唱えた。
未経験者は基礎学習が重要──キャリアを重ねる中で必要なのは専門性
続いて学生の方から、「どんな資格を取ればエンジニアになったときに有利ですか」という質問があった。久松氏は、基本情報技術者試験やITパスポートの学習実績があると差がつくとした。國司氏は、ネットワークの領域、インフラエンジニアの領域であればCCNAとLPICレベル1という資格があるが、CCNAを取ってからLPICに移るよりも、上位のCCNPを取って、技術的な軸をしっかりと身に付けてから、その後サーバーの領域の勉強をしていくのが近道だとしながら、未経験者には資格よりも業務を知ることが重要だと次のように述べた。
「サッカーでたとえると、CCNAなど資格の勉強はリフティングをしているだけです。それだと試合に出て活躍できないと思います。ルールを知り、上手い人のプレイを見てイメージすることが大事です。IT業界にはどんな会社があって、どのようにお金が流れているのか、ITシステムもネットワークやサーバー、データベースなどいろいろなものが組み合わさっているので、基礎的なルールを調べるほか、経験者に教えてもらうことをおすすめしています」(國司氏)
音井氏はアイドルをはじめたころマイクの持ち方やダンスの基礎などを学んだとし、それらの基礎は大事であると語った。久松氏は「まっとうな師匠、先輩を見つけるのが近道です」とアドバイスした。
次は「プロジェクトマネージャーとスペシャリストはどちらがいいか」という進路に関する質問。
久松氏は、スペシャリストになるならITの領域は技術の流行り廃りが激しいため、1つの技術を極めるのではなく、複数の専門領域を持つような工夫は絶対必要と説明した。コミュニケーションや調整ごとが苦にならない場合はプロジェクトマネージャーが向いているし、需要も高い傾向にあるとした。
國司氏は、プロジェクトマネージャーであっても専門性を持つ必要があると指摘し、久松氏もこれに同意し、マネジメント一色になるよりは手を動かして「現役感」を保つことが良いと話した。音井氏も、アイドルがたくさんいる中で生き残るには専門性やユニークさが必要とコメントした。
仕事や学習の試行錯誤によって得意分野を見極めながら、進路の選択肢を増やしていく
最後の質問は、音井氏に向けたもので、「アイドルとしての生存戦略や差別化について」。音井氏は、TikTokやTwitter、Instagramなどでの配信も行っており、そのなかで自分に向いているものを伸ばしていく戦略を見いだしたと説明し、「例えば、私は英語を話せることを求められます。自分が求められることが何かを研究して伸ばすというのが戦略です。このような分析ができるのがアピールポイントです」とコメントした。
久松氏は、アイドルやアンジニアに限らず、メインの業務に加えて副業を展開していくのがポイントだと述べた。エンジニアも進路を決めるときに、「現職を辞めて退路を絶ってしまうのは危うい」と指摘した。
國司氏はセッション中にAKKODiSコンサルティングについての説明も行った。同社はITや機械、電機の領域でエンジニアリングやコンサルティングをしており、企業理念「人財の創造と輩出を通じて、人と社会の幸せと可能性の最大化を追求する。」を掲げている。
國司氏は、試聴するエンジニアに対して次のように呼びかけた。
「人の可能性を信じて投資し、育成を通じて社会を変えていこうと考えている会社です。技術やコンサルティングやマネジメントなど、さまざまな育成の環境が整っており、技術を学んでキャリアを築けるような体制を作っています。多くの仲間と共に、ビジョン実現に向けて頑張っていきたいと思っていますので、当社のWebサイトからご応募いただければ、と思います」