ゲーム開発者を対象とした「CESAデベロッパーズカンファレンス(CEDEC) 2007」が、26日から28日までの3日間にかけて開催される。初日の基調講演で、株式会社セガの小口氏が語った、「人間にとっての遊び」「実際に楽しいゲームを作る方法」とは?
本日、ゲーム開発者を対象とした「CESAデベロッパーズカンファレンス(CEDEC) 2007」が東京大学(東京都文京区)にて開幕した。28日までの3日間にかけて、第一線で活躍するデベロッパー・クリエイターにより、めまぐるしい変化を遂げているゲーム産業の最新技術・ビジネス動向が語られる。
初日の基調講演では、株式会社セガ 代表取締役副社長の小口久雄 氏が、『あそびをつくる』と題して、開発現場・経営者両者の立場から「遊びを理解して、実際に楽しいゲームを作るにはどうしたらよいか」について次のように語った。
人間生活に必要なものとして「衣・食・住」のほかに「遊」が挙げられる。たとえば、刑務所は衣食住の要件を満たしているが「楽しさ」がない。楽しさを与えられない(遊びがない)ことは人間にとって相当の刑罰レベルであり、どのような人にも遊びの時間はかならず存在している。それが「酒やギャンブル」「学問」「仕事」なのかは人それぞれだが、「楽しい」ことが「遊び」となる。フロイトの快感原則論(すべての生物は快感を得るために、または不快感を避けるために行動する)の面からも、人は楽しいことを追及するようにできている。
では、楽しいとはどういうことか? 「楽しい」は感覚的・流動的なものなので、一概に定義することはできない。例えば、空腹の人にとって食事は楽しいが、満腹になると苦痛に変わる。楽しさはどんどん移り変わる。また、人間は常に新しいものを求めており、変わらないことも苦痛である。ゲームでも同様に、どんどん移り変わっていくことを考えないといけない。最後には苦痛になってしまうゲームが世の中には多い。
日本ではなぜ衣食住から「遊」が抜けているのか? 人生を楽しまない日本人。日本では昔から、遊びを控えることが美徳とされ、遊びにマイナスのイメージをもっているのではないだろうか。日本の自殺率は旧社会主義国に次ぎ世界10位であり、たくさんの苦痛に直面している割に、快感に触れる機会が少ないのかもしれない。人生を楽しめている日本人は少ないかな、と思ってしまう。掲げる国の構想も「美しい国、日本。」より、「楽しい国、日本!」の方がふさわしいのではないだろうか。
ビデオゲームの特性は「インタラクティブ(双方向、対話性)」なことであり、楽しいゲームとは「欲求が満たされるゲーム」だ。ゲームは欲求を満たす行為として作ってあげる必要があり、欲求を満たさないゲームは「作業」(クソゲー)である。欲求にはさまざまな種類があり、「闘争」といった本能的な欲求への依存度は強いが、今後新しいゲームを作るためには「心理・社会的な欲求」が鍵になるだろう。
大ヒット作のポケモンを見ても、「獲得」「闘争」「保存」「整理」といった数々の欲求がバランスよく盛り込まれているほか、行動の自由度も確保されている。自由度は重要で、例えば完璧に一連の手順をこなさないといけないようなものは、快感を通り越して苦痛に変わってしまう。
なお、市場では「戦うゲーム」があふれており、本能的な欲求による安パイに逃げる傾向があるが、クリエイティブさを発揮したゲームをもっと開発してもらいたい。ゲームの作り方として、欲求の種類から考えてみるのも一つの方法。またはイメージしたゲームがどのような欲求を満たすのかを調べて整理してみるのもよい。
一方で、楽しさには社会的秩序を乱すような反社会的行為も含まれ、ゲームにおける仮想現実と現実とを区別できずに記憶されてしまう面は否めない。我々の生活は平和と秩序が欠かせないため、十分に配慮する必要がある。かといって、これがすべてダメだという「ゲーム脳」といった決め付けはよくない。物事には良い面もあれば、悪い面もあるからだ。
小口氏は最後に、「遊ぶという行為は人間にとって極めて重要であり、必然的である。その理解があれば、我々の仕事の質が向上し、仕事すること自体も楽しくなっていくだろう」と締めくくった。
このように、ゲーム開発者に必見のセッションが連日催される。基調講演を含む無料のセッションは、まだ参加を受け付けているため、興味のある方はぜひ受講を検討してもらいたい。また、CodeZineでは、3Dグラフィックス技術を中心に、後日レポートの掲載を予定している。
日本最大級のゲーム開発者カンファレンス CEDEC 2007 - CESA DVELOPERS CONFERENCE
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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