はじめに
ここまで3回にわたって「受け手」として1on1をどう活かすかをお届けしてきました。今回はついに「やる側」へシフトしていくタイミングです。1on1を主導する立場になることで、実は自分自身の成長スピードも一気に上がっていきます。
「え、まだ自分がメンターとか早い気がするんだけど……」と思った方こそ、ぜひ読んでみてください。
後輩が入ってくるのは思ったより早いですし、自分の中の“経験の引き出し”も意外と使えることに気づけるはずです。
この記事では、そんな「1on1をやる側にまわる」ための準備や考え方、小さく始めるコツなどを実体験ベースでお届けしていきます。
第4回の立ち位置
この連載では、1on1をどう受けるか、どう活かすかを3回にわたってお届けしてきました。そして今回がラスト、第4回です。
ここでは、これまでの「受け手」から一歩進んで、「やる側=1on1を主導する側」になるための考え方や具体的なステップについて紹介します。
「いやいや、まだ自分が教える立場なんて早いよ!」と思うかもしれません。でも実際には、2〜4年目くらいになると、翌年の新卒やインターン、中途で入ってくるメンバーなど、後輩ができる場面は少しずつ増えていきます。
そのときにいきなり任されてアタフタするよりも、今のうちに「1on1ってどう回せばいいんだっけ?」という型を知っておくと安心です。
今回は、そんな「メンターとしての最初の一歩」をどう踏み出すかにフォーカスしてお届けします。
「メンターになる」ということ
後輩ができるタイミングは突然やってきます。来年入ってくる新卒や、短期インターン、あるいは年上の中途入社メンバーなど、ふと気づいたら「自分が先輩ポジションかも?」という場面は案外早くやってきます。しかも、それは自分が「もう準備できた」と思えるタイミングとは関係なく、ある日突然やってくるものです。そんなときに、あらかじめ1on1の進め方を知っておくと、ぐっとスムーズに動けるようになります。
そして、「やる側」に回ることの一番のメリットは、自分のコミュニケーションがワンランク上がること。アジェンダをどう組むか、どう聞けば相手が話しやすくなるか、言葉の選び方にどれだけ気を遣うか……実際に自分が回す側になってみると、こういった難しさに直面します。でもそれこそが、学びのチャンスです。
実際、学習効果の高さで知られる“Protegé Effect(プロテジェ・エフェクト)”という考え方があります。これは「人に教えることで、自分の理解がより深まる」という心理効果のことです。ラーニングピラミッドでは“読むだけ”が10%の定着率なのに対し、“人に教える”は90%に達すると言われています。
さらに、こうした取り組みはチームや組織全体にもいい影響をもたらします。誰か一人に依存しない「育成文化」があるチームは、変化にも強く、バス係数(=その人が抜けたら回らなくなるリスク)も低く抑えることができます。みんなが少しずつ教える側になることで、組織全体が底上げされていきます。
そして最後に、こうした経験は自分のキャリアにも影響してきます。いきなりリーダーやマネージャーになるわけではなくても、「後輩と向き合って成長をサポートする」という体験は、まさにリーダーシップの超入門編ともいえるもの。今のうちから少しずつ経験を積んでおくことで、将来の自分にとって大きな財産になるはずです。