デリバリー全体のパフォーマンスを大きく左右する「運用」
本セッションの冒頭で、三好氏はシステムの「運用」をめぐる昨今の状況について、次のように見解を述べた。
「昨今、世間を賑わすシステム障害やシステムトラブルの事例を見てみると、その多くが運用の問題に起因していることが分かります。にもかかわらず、システム運用に関する議論はまだまだ不足しているように感じています」
こうした課題を解決するために、近年ではInfrastructure as Code(IaC)やDevOpsの手法やツールを導入して、運用の自動化を目指す動きも加速しているが、これも実際にツールを導入してみたものの、思うような効果を上げられずにいるケースが少なくない。これも多くの場合、事前に運用について十分な検討を行っていなかったことに起因していると三好氏は指摘し、「今あらためて運用設計の重要性について見直すべき時期に来ている」と述べる。
Google CloudでDevOpsに関する研究・調査を行っている組織「DevOps Research and Assessment(DORA)」が毎年公開している調査レポートにおいても、2022年12月に公開された最新版「State of DevOps 2022」ではソフトウェアデリバリーのパフォーマンスを測る指標として新たに「運用パフォーマンス」を新設しており、今世界的に運用の重要性があらためて脚光を浴びつつある。
その一方で同レポートの調査によれば、運用パフォーマンスも含めて総合的に優れたパフォーマンスを発揮している企業は全体の2割以下に留まっているという。
DevOps自体は5割以上の企業が導入しているとも言われている中、なぜこのようなギャップが生まれるのか。その主たる理由について、三好氏は「やはり運用パフォーマンスが全体のパフォーマンスの足を引っ張っている」と指摘する。
「例えばシステムトラブルからの復旧を例に挙げると、トラブルの検知やインシデント対応を担う運用のパフォーマンスが低下すると、開発部門に改修を依頼するタイミングも遅くなり、限られた時間内で急いで改修・デプロイせざるを得なくなります。自ずと失敗する確率も高くなり、結局のところシステム全体の復旧時間も長引いてしまうことになるのです」
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