AIに取って代わられる仕事とは? エンジニアの生き残り戦略
開口一番、「ChatGPTに衝撃を受けた」と語る、深澤氏。「スキルのポートフォリオなどについて、視野を広げなくてはならないと実感した。エンジニアリングも大事ながら、仕事におけるソフトスキルとして何をどう身につければいいのか」と問いかけた。
深澤氏は、フリーランスエンジニアとしてスタートアップ複数社で開発を経験した後、7年前に株式会社AppBrewを創業し、現在は代表として組織を率いながら、美容プラットフォーム「LIPS」でコードも書くという現役のエンジニアだ。約70人の規模に成長し、「エンジニア出身の起業家というと聞こえはいいが、実際には何でも屋に近い」と語る。現役のコーダーとしてバリバリコードを書きつつ、プレゼンテーターや各部のマネジメント、人事関係の調整など業務は多岐にわたる。
そんな深澤氏にとってChatGPTの登場は、エンジニアリングにおける「スキルの再定義」を求められるほどの激震だったという。コード面接の有名問題、特定言語やフレームワークのAPIスニペット、SQLなどコードスニペットの高速化アイデア、コードとエラー文を入力してのデバッグなど、サブルーチンについてかなり役に立ち、「道筋を示してくれる」という。そして、「時に『嘘を言う』こともあるが、とても頼れる存在になってきた」と語った。
こうしたAIの進化の勢いは、かつて将棋や囲碁で人間に追いつけないと言われていたのが、あっというまに追い越したことを思い起こさせる。「XDayが近い中で、コーディングだけやっていていいのかと危機感を募らせるようになった」という。
それでは、そのような時代にエンジニアの業務やスキルはどのように変わっていくのか。深澤氏の整理によると、抽象度が低い所に関してはAIが人間よりも速いことが多く、人のコンテキストに合わせた部分ではまだ人が勝る。ただしGPT自体の先端技術の応用実装に関しては限られた人の領域であり、多くのエンジニアは抽象度が中〜高程度を広くカバーし、「人間のコンテキストを技術で落とし込む仕事」での活躍がメインになると予想される。
深澤氏は「人間的なコンテキストから見ると、AIではできないことも多く、人との代替は簡単ではない実感がある。こうした部分を考えられる人がAIを取り入れて生産性を高められるかどうかで、歴然とした差が生じてくるのではないか」と語り、「新しい抽象化技術や既存技術の新陳代謝は、加速することが予測される。単なる流行りなどと思わずに、いずれ人の仕事が抽象化されてAIに置き換わるであろうと実感しておくことが大切」と訴えた。