顧客の帳票作成ニーズに向け考案したコスト、工数を最小化のアプローチ
続く2つ目のセッションには、シーイーシーより、サービスインテグレーション事業本部 エンタープライズサービス事業部 マイクロソフトサービス部 主任の大田憲司氏が登壇。顧客の帳票作成システムを提供する上での開発課題と、.NETを活用したシステムの実装により顧客課題を解消した事例を紹介した。
シーイーシーは、製造業のバリューチェーン全体にわたるIT活用を支援するデジタルインダストリー事業と、あらゆる業種の顧客における事業発展や業務効率化、働き方改革の推進に貢献するサービスインテグレーション事業を2本柱で展開する、1968年設立のまさに“老舗”の独立系SIerである。
同社は、CRMとERPの領域の機能をあわせもって企業の業務を全方位的にカバーするMicrosoft Dynamics 365を活用したシステム構築にも、大きな強みを持つベンダーとして知られる。「Convergent(コンバージェント)」シリーズなどでそれらにかかわる開発サービスを提供するなか、同社では顧客の帳票作成システムの開発にて、ある課題に直面していた。
「お客さまからは『現行のExcel帳票と同じものを作ってほしい』など、帳票をめぐるニーズが寄せられるわけですが、既存のものをそのまま再利用することは難しく、基本的には一から作り直しとなるため、お客さまがイメージする難易度や工数と、実際に我々が投入しなければならない人材のスキルや工数の間には、ギャップがあるという問題を抱えていました」と大田氏は語る。当然、開発コストにかかわるベンダー側と顧客の間のすり合わせも困難を伴うものとなっていた。
これに対し同社が考案したのが、Dynamics 365からAPIを介してデータを取得する仕組みと、レイアウト作成の部分を分割し、より高度なノウハウを要するレイアウトの開発に、シーイーシーの中でも高いスキルを持った開発者を専念させながら、現行のExcel帳票を最大限に活用するアプローチだった。
これに関しては、OfficeのCOMを使ってExcelファイルを作ることもできるが、そのやり方ではリソースの解放漏れのリスクがあると判断。別のアプローチを検討するなかで、すでに述べたような要件を満たせるツールとしてシーイーシーが採用したのが「DioDocs for Excel」だった。採用のポイントについて大田氏は「クラウド上でExcelファイルを作ることができ、PDFフォーマットでの帳票生成にも対応しているほか、何よりもメシウス様の手厚いサポート面にも大きな安心感がありました」と説明する。
特にDioDocs for Excelには、データソースと連結するフィールドを容易に設定するテンプレートフィールドという機能が用意されており、必要なデータを任意の場所に取り込むかたちでExcel帳票を手軽に作成していける。こうした仕組みを活用することで、顧客自身が既存のExcelシートなども活用しながら、帳票を作成することが可能となり、結果的に開発コストの大幅な削減につながった。
「このとき、Dynamics 365からプラグイン経由でDioDocs for ExcelのDLLにどうアクセスするかについては、かなり頭を悩ませましたが、結果としては、Azure Functions上にDioDocs for Excelを利用したWebサービスを構築し、Dynamics 365からの要求で作成した帳票が返される仕組みにより問題をクリアしました」と大田氏は紹介する。
リリース後には、これまで利用していたAzure Functions Ver.3と.NET Core 3.1が2022年12月にサポート切れを迎え、バージョンアップを行う必要があったが、Azure Functionsのプロジェクトファイルに記載されているバージョンを新しいものに書き換えて発行するだけという簡単な対処により、バージョンアップを完了させることができた。