NET Frameworkの機能更新終了を契機として.NET 6への移行を目指す
その後実施された3つ目のセッションでは、サンエスシステムズの奥本浩司氏が自社の提供する製品の開発における.NET環境の利用をめぐる推移を紹介した。電気電子部品などを供給する企業に向け、欧州のRoHS(RoHS2)規制やREACH規制などに準じるかたちで、製品が含有する有害化学物質を管理するためのシステム「Eco-FRAME/CMS」を提供していることで知られる。
Eco-FRAME/CMSは、2010年12月にオンプレミス版としてリリースされた当初から、一貫して.NET FrameworkをベースにWindows Formsアプリケーションとして開発されてきた。
「その間、開発言語にはVisual Basic .NETをずっと利用してきたのに対し、プラットフォームとなるWindows環境がWindows 7から8、10、11と変化するなかで、開発フレームワークについては、.NET Framework 3.5から4.5.2、そして4.8へと順次アップデートしてきました」と奥本氏は紹介する。
また使用データベースについても、当初はOracle Databaseのみの対応だったが、その後SQL Serverに対応、さらに2018年にEco-FRAME/CMSのクラウド版をリリースしたタイミングでAzure SQL Serverにも対応してきた。さらにシステムアーキテクチャの面でも、当初のクライアントサーバー型から、2014年頃にはWCF(Windows Communication Foundation)を使用して、データベースアクセス処理をサーバー側に集約するスマートクライアント型へと進化させた。
このようなかたちで十余年にわたって随時拡充が進められてきたEco-FRAME/CMSの開発・運用プラットフォームだが、いままさに大きな転換点を迎えている。「契機としては、NET Frameworkの機能面での更新が今後行われない旨がマイクロソフトからアナウンスされたことで、.NETシリーズへのバージョンアップを念頭に現行システムの全面的な見直しに着手しました」と奥本氏は振り返る。
これに臨んで、.NET環境でも引き続きサポートされるWindows Formsの利用は据え置きとする一方、開発言語については今後改版が途絶えるVisual Basic .NETからC#へと移行。あわせて、クライアント、サーバー間の通信にはWCFに代えてgRPCを採用することを決定。現在、.NET 6のプラットフォームへの移行が進められている。
「それら決定に応じた、一連の開発を進める一方で、アプリケーションのUIのブラッシュアップにも着手し、メシウスの提供する『ComponentOne』を採用してより高機能な画面を目指した取り組みも進めています」と奥本氏は言う。
例えば、ExcelライクなUIを実現するC1FlexGridのフィルタリング機能や行/列ヘッダ固定機能、セル結合機能、あるいはC1InputPanelによって可能となる入力属性の拡張性、柔軟性の向上などは、顧客の細かなニーズに応えるうえでとりわけ有効な手段となっている。
「さらに将来に向けては、.NETによって拓かれるマルチプラットフォーム対応という方向性にもぜひチャレンジしていきたいと考えています」と奥本氏は語る。