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エンジニアが創るクルマの未来とは

LLMを活用した完全自動運転とは? 「テスラ越え」を目指す開発の裏側

エンジニアが創るクルマの未来とは 第1回

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 手放し運転のCMが流れるなど、自動運転の未来がすぐそこまで来ていることが実感できるシーンが増えてきた。その一方で、米国ではテスラが自動運転システム関連で200万台リコールされる現実もある。そんな難しい課題に取り組むのが、2021年に設立されたスタートアップのチューリング(Turing)である。LLM(大規模言語モデル)を活用し、自動運転AIを搭載した完全自動運転EV(Electric Vehicle)の実現を目指すチューリング共同代表CTOの青木俊介氏に、なぜLLMを自動運転に活用しようと思ったのか、同社が目指す完全自動運転システムの概要、その開発に携わる面白さなどについて話を聞いた。

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「完全自動運転」を夢見て、チューリングの設立に至るまで

 チューリングは2021年8月20日、青木氏と将棋AI「Ponanza」の開発者、山本一成氏が共同で立ち上げた自動運転EVスタートアップである。代表取締役CEOは山本氏。青木氏はCTOを担う。そんな2人のエンジニアが設立したチューリングが掲げるミッションは「We Overtake Tesla(テスラを追い越す)」。同社は2030年に完全自動運転EVを1万台量産する、完成車メーカーになることを目指して日々、開発を続けている。 青木氏が自動運転システムの開発に取り組み始めたのは、米カーネギーメロン大学(CMU)に進んだ2015年から。カーネギーメロン大学は自動運転が生まれた地とも言われるほど自動運転システムの開発に積極的に取り組んできた大学である。2018年や19年には、ワシントンD.C.やハリスバーグ(ペンシルバニア州)で自動運転技術レベル4の自動運転プロジェクトに参加したり、ゼネラルモーターズやGoogleと共同で自動運転の開発にも携わってきた。

自動運転プロジェクトに参加して見えてきた現実

 米国自動車技術者協会(SAE)は、自動運転技術をレベル0〜5の6段階に区分している。青木氏が参加していたレベル4の自動運転プロジェクトは、決められた地域やルートなど、特定条件下においてシステムが全ての運行タスクを実施するものだった。その先にある「完全自動運転システム」とは、「●●に連れて行って」というと、人が運転することなく連れて行ってくれるシステムである。

 そんな完全自動運転の未来を思い描いて、CMUで自動運転システムの研究に従事してきた青木氏だが、「レベル4の先にレベル5、いわゆる完全自動運転の世界が実現するとは思えなかった」と明かす。

 憧れだったCMUでPh.D.(博士号)を取得でき、自動運転の研究者としても一定の成果を出せた。そこで「個人的な戦いには勝った」と思った青木氏は日本に帰国。何か大きなことにチャレンジしたいと思っていた頃に出会ったのが山本氏である。スタートアップやベンチャーの立ち上げにも関心を持っていた青木氏は、山本氏と共に自動運転システムを触ったり、食事を共にしたりしながら、事業アイデアを語りあったりしたという。「完全自動運転車を作ろう」と意気投合し、チューリングを創業した。

 作るのは完全自動運転EV。その実現のために活用するのがLLMである。「AI基盤モデルで自動運転させることは、創業当時から思い描いていたことだった」と青木氏は語る。人間ですら安全運転を心がけていても、事故を起こす可能性がある。「完全自動運転車というからには、人間よりも良い頭を作ることがよいと考えた」と青木氏は語った。

 2022年11月にChatGPT3.5、さらに半年も経たない23年3月にはChatGPT4.0がリリースされたこともLLM活用の後押しになった。というのもChatGPTはLLMをベースとしたAIモデル。テキストでやり取りするとはいえ、「自分たちがやろうと思っていたことに近いモノだと思った」と青木氏は振り返る。つまりLLMを活用すれば、人間より良い頭を作れると考えたのである。「LLMで自動運転車を動かそうとエンジニアに伝えた」と青木氏は語る。

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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