代表作を持とう──あなたのキャリアを後押しする3つの習慣とは
23年の紆余曲折のキャリアを経て、中川氏は「自らを強いエンジニアにするための3つの習慣」を編み出した。それは、「職務経歴書を作り定期的に更新する」「強いエンジニアの真似をする」「『あなたの代表的な仕事は?』に即答できるようにする」の3つだ。
1つ目の職務経歴書(CV)を作りについては、中川氏いわく「自分のキャリアを記録することが非常に重要」とのこと。「人は書かなければ忘れる。私自身は職務経歴書を、3カ月に一度見直している。皆様は、最低でも半年に一度は見直してほしい」と呼びかけた。
中川氏の持論は、「イマイチな転職活動は、イマイチな職務経歴書から始まる」だ。かつて転職活動において、30社受けてオファーが0社だった経験を持つ中川氏。職務経歴書をメンテナンスして初めて、マネジメント経験など、わかりやすい資格やスキル以外の強みが相手に伝わる。
2つ目の習慣は、強いエンジニアの真似をすることだ。「私にはブログが合っていたが、『イベントのスタッフを務める』『登壇する』『OSSにコントリビュートする』『動画コンテンツを出す』など、何でも構いません。とにかく継続的にアウトプットをしアウトカムを獲得することで、ファンが増え、注目されるようになる 」と中川氏は説明した。
「強いエンジニアがコミットしたコードを眺めるのはもちろん、雑談したり、行動を眺めたりするだけでも、彼らから学べることはとても多いです。もし自社に強いエンジニアがいるなら、その人の真似をしましょう。もしもいなければ、SNSやブログでフォローしている方の真似をしましょう。そうしているうちに、毎日の過ごし方が変わってきます」と中川氏は語る。多くのエンジニアを手本としながら、自分がストレスなくこなせる習慣をひとつずつ身につけるのがおすすめだ。
3つ目の習慣は、「あなたの代表的な仕事は?」という質問に即座に答えられる準備をすることだ。中川氏は、「一言で言えば、『代表作を持とう』ということ。私の場合は、先ほど紹介したAIワクチン接種予測や、少し前に手がけた野球のデータ分析がそれに当たります。代表作を1つでも持っていると、職務経歴書の作成も面接でのやりとりも楽になります。これはかなり難しいことですが、挑戦する価値は十分にあると思います」とエールを送った。
仕事の中で 「代表作づくり」に挑戦できない場合はどうすればよいのか。中川氏がおすすめするのは、趣味での個人開発だ。
中川氏は個人開発での事例をブログに書いたり、技術カンファレンスでの登壇において事例共有を行ったりしたことによって、これらの活動が評価され、「Google Cloud Partner Top Engineer 2024」の受賞に繋がった。「こうした個人開発での活動はいつか評価される日が来るので、大変なことは承知の上で、ぜひ取り組んで欲しい」と中川氏は語る。
最後に中川氏は、将来について「分からない」としながらも、「自分の背中を堂々と見せ続けられるエンジニアでありたい。『I need to be myself, I can't be no one else.(私は私らしく、他の誰でもない強いエンジニアでいたい)』という気持ちを大切に、これからもやっていきたい」と今後の展望を語った。
多くのエンジニアがキャリアに悩み、時に立ち止まり、戻り、振り返りながら、次の道を模索している。この講演は、そんなキャリアに迷う人々にとってのヒントとなり、強いエンジニアとしての一歩を踏み出すきっかけとなるだろう。