対象読者
IoTに興味があり、C#と電子工作の基本的な知識がある方を対象とします。C#や電子工作のごく初歩的な説明は割愛していますので、「C#ではじめるラズパイIoTプログラミング」の記事なども併せて参照してください。
はじめに
今回の記事から、BluetoothやWi-Fiを利用して環境データをモニタリングするプログラムを作成します。本記事では環境センサーであるBME680で計測した値を、Bluetooth Low Energyを使って送信するところまでを解説します。
環境センサーBME680
まずは、環境センサーのBME680を使います。BME680はBOSCH社が開発した環境センサーで、温度、(相対)湿度、気圧に加えて、アルコールなどのガスを測定できることが特徴です。
BME680のガスセンサーは、金属酸化物半導体(MOS)を利用しています。センサーの金属酸化物半導体に特定のガスが接触すると、半導体の抵抗値が変化します。この抵抗の変化を測定することで、ガスの存在や濃度を検知します。こういったガスセンサーは、空気清浄機やエアコン、アルコールチェッカーなどで用いられています。
BME680を搭載したセンサーモジュールは、Amazonなどで入手可能です。今回は、秋月電子通商で販売されている「BME680使用 温湿度・気圧・ガスセンサーモジュールキット」を利用しました。
このセンサーモジュールには、三端子レギュレーターが組み込まれており、電源として2.5~6Vの範囲で利用できます。そのため、ESP32の電源に直接接続して利用可能です。
モジュールの端子は4つだけです。電源以外は、I2C用のSCL、SDAとなっています。モジュールの出荷設定時のI2Cアドレスは、0x77です。今回は設定変更せず、そのまま利用します。アドレス変更などの詳細は、販売ページで公開されているマニュアルを参照してください。
配線とソース
ESP32は、I2C接続でも任意のGPIO端子で利用可能です。前回同様、GPIO18、19を利用します。GPIO18とセンサーモジュールのSDA、GPIO19にはSCLを接続します。
また.NET nanoFrameworkには、BME680に対応したクラスが用意されていますので、前回の距離計センサーの制御と同じようなコードで測定できます。
最初にNuGetパッケージマネージャで、次のパッケージをインストールしておきます。
- nanoFramework.Hardware.Esp32
- nanoFramework.Iot.Device.Bmxx80
センサーの値を取得して、1秒ごとにデバッグ表示するコードは、次のようになります。
public static void Main() { // I2C接続に用いるGPIOの設定(1) Configuration.SetPinFunction(18, DeviceFunction.I2C1_DATA); Configuration.SetPinFunction(19, DeviceFunction.I2C1_CLOCK); // I2C通信のアドレス設定(2) var connectionSettings = new I2cConnectionSettings(1, 0x77); // I2C通信オブジェクトの生成(3) using var i2c = I2cDevice.Create(connectionSettings); // BME680オブジェクトの生成(4) var bme680 = new Bme680(i2c); // デフォルトの設定にリセット(5) bme680.Reset(); while (true) { // 即時測定(6) var value = bme680.Read(); // 有効値のときのみ(7) if (0<value.GasResistance.Value) { Console.WriteLine($"ガス: {value.GasResistance.Kiloohms:F2}KΩ"); } Console.WriteLine($"気温: {value.Temperature.DegreesCelsius:F1}℃"); Console.WriteLine($"気圧: {value.Pressure.Hectopascals:F1}hPa"); Console.WriteLine($"湿度: {value.Humidity.Percent:F1}%"); Console.WriteLine(""); Thread.Sleep(1000); } }
I2C接続の設定手順は、前回同様です。I2C接続に用いるGPIOの設定後(1)、設定オブジェクトを生成して(2)、通信オブジェクトを生成します(3)。
Bme680クラスのコンストラクタで、通信オブジェクトを指定して初期化します(4)。次に設定をいったんリセットして(5)、測定します(6)。すると1秒ごとに、次のように表示されます。
ガス: 303.22KΩ 気温: 30.1℃ 気圧: 1014.5hPa 湿度: 41.0%
なお、ガスの抵抗値は、正常に測定できない場合があるので(値が0)、その場合は、表示しないようにしています(7)。
観測値の精度ですが、気温は手持ちの気温計と比べると1~2℃高めの値になるようです。湿度はやや低めの値になりました。(海面)気圧は、気象庁のアメダスと近しい値になっていました。
ガス(抵抗)の値は、起動後しばらくは変動が激しく、10分ほど経ったところで部屋の中では300~400KΩ台の値になりました。消毒用アルコールやお酒、飲酒後の息などを吹きかけてみたところ、すぐに抵抗値が下がり100K以下になったので、簡易なアルコールチェッカーとして使えるかもしれません。