出会いがもたらす「おもしろさ」と失敗を楽しむ哲学
おだか氏は、「おもしろそうドリブン」を実践する中で、外部からの影響の重要性にも触れる。自身の歩みにおいて、多くの出会いが新しいおもしろさや成長のきっかけを与えてくれたことを痛感しているためだ。特に、自分の考えや行動を変えるきっかけを与えてくれるロールモデルの存在は大きかったという。
「自分がこれまでやってきたことの延長線上にないものは、想像するのが難しい。多様なインプットを通じて、刺激を与えてくれる人や考え方に触れることが大切だ」。おだか氏によれば、その対象は著名な人物だけでなく、隣の席の同僚や上司のような身近な存在でも良いという。影響を受けたエンジニアやマネージャーの言動を真似し、「この人ならどう振る舞うだろう、何を考え、どう発言するだろうか」と思考することで、新たな視点やアプローチを学べるのだ。
ただし、一人のロールモデルに固執しすぎることにはリスクもある。理想像に執着すると、現実とのギャップに失望することがあるためだ。そこでおだか氏は、複数の人物から学び取った要素を組み合わせた「合成ロールモデル」を作ることを推奨した。
さらに、おだか氏は「失敗からの学び」の重要性も語る。失敗は「今回の試みは間違っていた」と気づく機会であり、次の成功につながっているという。

ただし、失敗を成長の糧とするには、自分の行動や成果にオーナーシップを持つことが不可欠だ。外部要因に責任を転嫁せず、「自分の領域は自分が責任を持つ」という姿勢が、次の改善への行動を後押しする。おだか氏は「たとえ外部環境が仕事に影響を与えたとしても、その中でどう成果を出すかを考えることがオーナーシップの本質だ」と付け加える。
エンジニアリングの分野では、小さな試行錯誤を繰り返し、そこから学びを得る試みが欠かせない。「失敗を恐れず、積極的に試行錯誤を重ねることが、イノベーションやスキル向上に不可欠だ」と述べるとともに、チームや組織が失敗を許容する文化を持つことの必要性にも言及した。
「うまくいかなかったら、まずは『チャンス!』と大きな声で言ってみる。その後、すかさず『こうすればもっと良くなる』と声をかけることで、メンバーが落ち込むのを防げる」。このアプローチには、心理的負担を軽減し、チーム全体の士気を高める効果がある。また、「仮に失敗を許容しない職場環境に陥っているとしたら、それ自体がリスクだ」とも述べ、組織の自己点検を促した。
おだか氏がキャリアの最終目標として掲げるのは、「おもしろさを追求し続けること」だ。その背景には、座右の銘である仏教用語「四諦八正道」がある。人生は苦しみに満ちており、それは欲望や執着から生まれるからこそ欲を手放し、正しい見識を持って正しい行いを心がけるべきという教えだ。おだか氏はこの哲学に触れつつ、「興味の赴くまま、おもしろいと感じる方向へ進んでいけば、気づけば成長しているものだ」と語った。
セッションの締めくくりに、おだか氏はこう呼びかけた。「キャリアは人生そのものだ。今日と同じ日は二度と来ない。だからこそ、今自分が『おもしろい』と感じることに全力を注いでほしい。いくらでも失敗できるし、失敗の価値は計り知れない。とにかく『おもしろさ』を追い求めて、結果オーライの人生を目指してみてほしい」。
理想的なキャリアを築くのは並大抵のことではなく、検討すべき要因も多岐にわたる。しかし、あえて複雑な思考を捨て「自分にとっておもしろいか、そうでないか」でキャリアを捉え直してみることで、進むべき道はおのずと見えてくるのかもしれない。