「会社の中の知恵が集まる場所」として生成AI基盤「WeiseHub」を構築
生成AIは非常に重要なテクノロジーながら、その導入は決して簡単ではない。技術的な理解だけではなく組織全体での受け入れやセキュリティ、プライバシーへの対策も考えていく必要がある。2023年に全社的な生成AI導入プロジェクトを開始したWorks Human Intelligence(以下、WHI)も同様の壁に突き当たったという。

導入は4段階のステップで実施された。まず企画フェーズで予算確保とAzure OpenAI Serviceの契約を行い、次にPoC段階で2週間でAIチャット機能を実装し40名の新卒エンジニアで試験運用を行った。その後、200名規模でのトライアルを実施。活用効果の検証と利用ガイドラインの策定を進め、最終的に全社2,000名規模での申請制導入が実現している。

社内における生成AIの活用の基盤となっているのが、「会社の中の知恵が集まる場所」として名付けられた「WeiseHub」だ。Azure OpenAI Serviceをベースに、生成AIモデルとしてGPT-4oやClaude 3.5を採用し、ナレッジベースにはAzure AI Search、認証基盤にはMicrosoft IDを使用している。ユーザーはWebアプリを通じてこれらのサービスにアクセスし、アクセスログは分析ワークスペースで管理される。これにより、セキュアで効率的なAI基盤を実現している。
「WeiseHub」で提供している主要機能として、寺尾氏はまず「ナレッジ検索機能」をあげる。膨大な社内文書をベクトル検索技術で分析し、必要な情報を効率的に探し出すというもので、いわゆる「RAG(検索拡張生成)」を実現している。これを活用して製品マニュアルやFAQの情報などに素早くアクセスし、製品サポートや新人若手の製品理解に役立てている。またSlackの長いスレッドの内容をAIが自動要約して掲出するという「Slack要約機能」も有しており、必要に応じて人為的な修正指示もできるため精度の高い要約がかなう。これらの機能により、情報アクセスの効率化と意思決定の迅速化を実現している。
気になるセキュリティとプライバシーについては、情報流出対策としてAzure OpenAI Service / Amazon Bedrockを利用し、対話データがAIの学習に使われないように流出防止の仕組みを導入。また不正利用の防止のために、会話ログの保管やユーザー単位での利用のほか、トークン数のモニタリング、コンテンツフィルターの設定などによって一定の利用制限を設けている。利用ガイドラインでは、顧客データや個人情報の入力、人を評価する目的での利用など、禁止事項を明示している。