Devinとともに描く、AI時代の開発と協働の未来
ここからは、会場で行われたQ&Aセッションの内容を紹介したい。質問希望者が列をなすほどの盛況ぶりで、すべてには答えきれないほどだったが、特に印象的だったやり取りをピックアップする。

Q:3年後、Devinはどのような存在になっていると考えているか。どんな未来像を描いているのか。
A:3年前を振り返ると、GitHub Copilotのような補完ツールが主流で、LLMの使い道も限定的でした。そこからAI中心のIDE構想が進み、今は非同期エージェントの時代へと突入しています。
今後はインターフェースがさらに進化し、「記憶」の概念が鍵になると考えています。AIがコードや作業履歴を覚えることで、Devinは「入社直後のインターン」から「1年以上一緒に働いた同僚」へと進化するでしょう。私たちもその未来に向けて、プロダクト設計を進めています。
Q:AIをシニアエンジニアレベルに引き上げるために、現在直面している最大の課題は何か。将来的な人間との協働像についても聞きたい。
A:最も重要なのは次に挙げる2点です。1つは、大規模なコードベースの理解と保持能力。複雑な構造や依存関係を把握し、適切に拡張できるかが鍵になります。
もう1つは「質問すべきタイミング」を理解する能力。AIは自分の理解が不十分でも、そのまま作業を進めてしまうことがあります。適切なときに人に相談できるようになることが、良き協働者になるための進化だと考えています。
Q:Devinがジュニアレベルの仕事をこなせる今、ジュニアエンジニアである自分はどんな力を伸ばすべきか。
A:エンドツーエンドでアプリを作る経験を積むことが大切です。アイデアの構想から設計、実装、デプロイまでを通じて、自分の判断力を鍛えてください。それが、これからますます必要とされるスキルになります。
Q:AIがより自律的に賢くなる中で、人間との協働や「責任」の所在はどうなるか。
A:Cognitionで最も価値ある人材は、コードを書く人ではなく「仕事にオーナーシップを持つ人」です。成功・失敗の責任は人間にしか負えません。AIはあくまで補助者であり、プロジェクトの成否を左右するのは信頼できる人間の存在です。責任を持つ人がいるからこそ、AIの力も最大限に発揮されます。
Q:AIが多数のプルリクエストを作成する中で、人間によるレビューがボトルネックにならないか。どのように運用しているのか。
A:2つの方法で対処しています。1つは、タスクのインストラクションを非常に詳細に与えること。これにより、レビュアーは構造ではなく「意図」に集中できます。
もう1つは、レビューそのものをAIで自動化することです。Devinを使ったレビュー自動化により、多くのバグ検出に成功しています。将来的には、よりネイティブな統合も視野に入れています。
Q:AIが人間の理解を超えたコードを大量に書くことで、技術的負債が蓄積される懸念はないか。どう対処しているのか。
A:設計と実装を分けるアプローチを採っています。人間がシステム全体の設計や指針を担い、Devinがそれに沿ってコードを書く形です。これにより、設計思想を保ちつつ、AIの速度を活かせます。
Q:Cursorのような他社ツールへのロックインが不安だ。Cognitionは他社ツールとどう関わっていくのか。
A:私たちは競争に勝つことを目指していますが、現時点でDevinと他ツールを併用する事例もあります。Devin+Windsurfの統合体験を磨く一方で、他ツールとの併用も制限しておらず、Devin+Cursorの体制で運用している企業があることも認識しています。それでも最終的には、「Devin+Windsurfの組み合わせが最良」と感じてもらえる体験を提供していきたいです。
Q:DevinでのUI開発で、CSSの指定が煩雑に感じられた。Figmaとの連携によって改善されるか?
A:まさに今週水曜(2025年7月23日)に、FigmaとMCPサーバーを連携する新機能をリリースしました。これにより、FigmaのデザインをDevinが参照しながら開発できます。
たとえば「このFigmaに基づいて構築して」と指示すれば、Devinがコード生成からテスト、アプリの起動、プルリクエスト作成までを担います。今後のDevin活用において、Figma連携は非常に重要な要素になると考えています。
Yan氏は最後に、会場のエンジニアたちへエールを贈った。
「日本の開発者は、私たちが見てきた中でも群を抜いて学習が早く、AIを柔軟に取り入れている存在です。そんな皆さんの創造力を支える最高のツールとなれるよう、私たちも全力で進化を続けます。日本発のイノベーションが、これから世界をどんなふうに驚かせてくれるのか――とても楽しみにしています」
Devinはまだ若い存在かもしれない。しかし、そんなDevinと真剣に向き合う開発者たちこそが、次の時代を切り拓いていくのかもしれない。