価値を最大化するためのAIエージェント開発戦略
「質・量・スピード」への期待感
従来のAIシステムは、物体検知や感情分析など「一つのタスク」をこなすことに焦点を当てていました。近年、LLMの言語運用能力が高くなったことで、AIシステムへの期待感は大きく変わっています。その汎用能力の高さから「一つ一つのタスクが連結した業務」に焦点を当てる、すなわち自然言語を媒介する我々の業務に大きく貢献するようになりました。
AIエージェントシステムが享受する恩恵は、LLMの言語運用能力の高さだけではありません。外部の知識/計算資源・行動記録へのアクセス、環境への作用、非同期実行、24時間365日体制など多岐にわたります。これらの利点は、業務の「質・量・スピード」に影響します。
たとえば「属人化していたCS業務レベルの底上げ」「メッセージ開封率の向上」といった質に起因する成果。「これまでできなかった潜在層へのアプローチ」といった量に起因する成果。「高速な文章生成による既存業務の省力化」「即レスによる離脱率の低下」などスピードに起因する成果まで、さまざまなものが挙げられます。

業務効率化だけじゃない。業務代行への期待感
また、AIエージェントが盛り上がっている背景には「業務効率化」に加えて「業務代行」に対する期待感があります。業務効率化は業務プロセス内の特定作業(点)を高速化しますが、業務代行はプロセスそのもの(線)を引き受けます。これは単なる工数削減だけでなく、人間がより本質的な仕事に取り組むための時間創出という価値をもたらします。
人がいちいち指示をしなくとも、自分でやることを考え、さまざまな社内ツールやドキュメントを活用してタスクをこなしていく。そんなシステムがあったら有効な時間活用が促進されるでしょう。
どんな業務が代行の対象になるのか。どうやって人と分業するか。
AIと人間の最適な役割分担は、それぞれの限界、すなわち「ボトルネック」から見えてきます。AIはデータ処理の速さや量で人間を凌駕しますが、責任を伴う判断や、人の感情に寄り添うといった「質的」な領域に限界があります。一方で、人間は複雑でクリエイティブな思考を得意としますが、単純作業を長時間・大量にこなすことには「時間・量的」な限界を抱えています。

我々の業務に落とし込むと、上流/下流の業務ほど人の価値が生まれやすく、中流の業務ほどルーチン化されたり、量的な施策がもとめられたりする傾向があります。
たとえば、経営判断や採用計画など「上流の意思決定」では人への責任所在、アフターサービスや最終面接など人と人が接する「下流でのコミュニケーション」は人の熱量や信頼が重要視されます。こうした質を重要とする領域では『人』が成果につながりやすいです。このような領域は、エラーが一切許されなかったり、人間の感覚の言語化が難しかったりと、AIエージェントによる効果が出にくい場合が多いです。
一方で、大量にスカウトを送ったり、定型化される承認フローなど「中流の反復業務」においては、一定水準以上の価値を大量に提供する『AI』が成果につながりやすいです。こうした業務では、課題がある程度明確だが答えが一意でないもの、情報収集・要約などを反復するナレッジワーク、複数人がレビュー・承認するものなどが該当します。
AIエージェントを課題解決の手段と捉え、最適な協業形態を模索する
AIエージェントは業務代行者としての期待を寄せられていますが、それ単体でビジネス課題を解決できるわけではありません。ビジネス課題を解決できるかどうかは、社内の複雑な暗黙知、ユーザーの属性値、業務の特性などに強く依存します。すべての顧客に対して「完全な業務代行型」のサービスを提供すればよいという訳ではありません。
先ほど「上流の意思決定」「下流でのコミュニケーション」など人の貢献が成果につながる場面について触れました。
AIエージェントを設計する際は、業務代行のレベル感もセットで考慮します。ある程度業務に精通したユーザーであれば、ユーザーの判断能力にあえて依存させる形態、すなわちユーザーとの複数回にわたる接点を設ける体験の方が、成果物の品質を最大化できる場面もあるかと思います。

このように課題解決という側面でみると、AIエージェントは『手段の一つ』にすぎません。人への責任の所在、人の熱量や信頼が成果につながりやすい場面も多くあります。重要なのは業務やユーザーの属性、将来的なスケール性を見極めて成果創出を最大化することです。
2025年は「AIエージェント元年」と呼ばれていますが、DX推進や新規事業開発の現場でも、AIエージェント活用が加速すると予想されます。本連載が顧客課題の解決を前に進めるための手段を増やすきっかけになれば幸いです。
続編となる記事もぜひご覧いただけると嬉しいです!
