並列処理とコルーチンコンテキスト
コルーチンの基本とsuspend関数を紹介したここから、もう少し話を掘り下げていきます。
複数launchで並列処理
ここでリスト7のlongProcess()の改造版として、longProcess()と全く同じlongProcess1()と、delay()の値を2000にしたlongProcess2()を用意し、これらを並列で実行したいとします。その場合は、実は、launchをそれぞれに実行するだけで可能です。コードとしては、リスト9の通りになります。
fun main() {
runBlocking {
printMsgWithTime("main開始")
launch { // (1)
longProcess1()
}
launch { // (2)
longProcess2()
}
printMsgWithTime("main終了")
}
}
ここでは、main()関数内でrunBlockingを利用した例としていますが、別のsuspend関数内でcoroutineScopeを利用しても同じです。リスト9の(1)でlongProcess1()を実行するコルーチンを、(2)でlongProcess2()を実行するコルーチンをそれぞれ実行しています。
この実行結果は、リスト10の通りになり、それぞれのコルーチンが並列処理となっているのがわかります。
main開始: 03:57:15.786238; 3 main終了: 03:57:15.791290; 3 longProcess1開始: 03:57:15.792682; 3 longProcess2開始: 03:57:15.797494; 3 longProcess1終了: 03:57:16.798078; 3 longProcess2終了: 03:57:17.798583; 3
コルーチンコンテキスト
これまでの実行結果の末尾には、全て3という数字が表示されています。これはスレッド番号を表し、全ての処理が同一スレッドで実行されていることを表しています。
もしこれを別スレッドで実行したい場合は、launch()メソッドの第1引数として表2のコードを記述します。
これを、コルーチンコンテキストといいます。実際、launch()メソッドの第1引数はCoroutineContextインスタンスとなっており、これが名称の由来です。
| コード | 内容 |
|---|---|
| Dispatchers.Unconfined | メインスレッドで実行 |
| Dispatchers.Default | 共通のスレッドプールを利用して別スレッドで実行 |
| Dispatchers.Main | UIスレッドで実行(Android開発で有効) |
| Dispatchers.IO | IO処理に向く別スレッドで実行(JVM上で有効) |
| newSingleThreadContext(スレッド名) | 指定のスレッド名を利用して別スレッドで実行 |
例えば、リスト11のように、Dispatchers.Defaultを利用したコルーチン実行コードを記述したとします。
fun main() {
runBlocking {
printMsgWithTime("main開始")
launch(Dispatchers.Default) {
printMsgWithTime("Dispatchers.Default")
longProcess()
}
printMsgWithTime("main終了")
}
}
すると、実行結果はリスト12の通りになり、スレッド番号が変わります。別スレッドでコルーチンが実行されているのがわかります。
main開始: 04:25:20.081962; 3 main終了: 04:25:20.086837; 3 Dispatchers.Default: 04:25:20.087138; 26 longProcess開始: 04:25:20.087413; 26 longProcess終了: 04:25:21.092116; 26
まとめ
Kotlinのバージョン2.0までに導入された新機能をテーマごとに紹介する本連載の第5回は、いかがでしたでしょうか。今回は、非同期処理を実現する仕組みとしてコルーチンを紹介しました。さて、この連載も、今回でいったんの区切りとなります。全5回に渡り、お付き合いいただきありがとうございました。今後も、Kotlinの進化に注目していきたいと思います。
