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【最新Kotlinアップデート解説】バージョン1.1からの変更点総まとめ

Kotlin最新アップデートまとめ ──非同期処理を実現する機能コルーチンを紹介

【最新Kotlinアップデート解説】バージョン1.1からの変更点総まとめ 第5回

並列処理とコルーチンコンテキスト

 コルーチンの基本とsuspend関数を紹介したここから、もう少し話を掘り下げていきます。

複数launchで並列処理

 ここでリスト7のlongProcess()の改造版として、longProcess()と全く同じlongProcess1()と、delay()の値を2000にしたlongProcess2()を用意し、これらを並列で実行したいとします。その場合は、実は、launchをそれぞれに実行するだけで可能です。コードとしては、リスト9の通りになります。

[リスト9]複数のlaunchを実行しているコード例
fun main() {
  runBlocking {
    printMsgWithTime("main開始")
    launch {  // (1)
      longProcess1()
    }
    launch {  // (2)
      longProcess2()
    }
    printMsgWithTime("main終了")
  }
}

 ここでは、main()関数内でrunBlockingを利用した例としていますが、別のsuspend関数内でcoroutineScopeを利用しても同じです。リスト9の(1)でlongProcess1()を実行するコルーチンを、(2)でlongProcess2()を実行するコルーチンをそれぞれ実行しています。

 この実行結果は、リスト10の通りになり、それぞれのコルーチンが並列処理となっているのがわかります。

[リスト10]リスト9の実行結果例
main開始: 03:57:15.786238; 3
main終了: 03:57:15.791290; 3
longProcess1開始: 03:57:15.792682; 3
longProcess2開始: 03:57:15.797494; 3
longProcess1終了: 03:57:16.798078; 3
longProcess2終了: 03:57:17.798583; 3

コルーチンコンテキスト

 これまでの実行結果の末尾には、全て3という数字が表示されています。これはスレッド番号を表し、全ての処理が同一スレッドで実行されていることを表しています。

 もしこれを別スレッドで実行したい場合は、launch()メソッドの第1引数として表2のコードを記述します。

 これを、コルーチンコンテキストといいます。実際、launch()メソッドの第1引数はCoroutineContextインスタンスとなっており、これが名称の由来です。

表2:コルーチンコンテキストの種類
コード 内容
Dispatchers.Unconfined メインスレッドで実行
Dispatchers.Default 共通のスレッドプールを利用して別スレッドで実行
Dispatchers.Main UIスレッドで実行(Android開発で有効)
Dispatchers.IO IO処理に向く別スレッドで実行(JVM上で有効)
newSingleThreadContext(スレッド名) 指定のスレッド名を利用して別スレッドで実行

 例えば、リスト11のように、Dispatchers.Defaultを利用したコルーチン実行コードを記述したとします。

[リスト11]別スレッドでコルーチンを実行
fun main() {
  runBlocking {
    printMsgWithTime("main開始")
    launch(Dispatchers.Default) {
      printMsgWithTime("Dispatchers.Default")
      longProcess()
    }
    printMsgWithTime("main終了")
  }
}

 すると、実行結果はリスト12の通りになり、スレッド番号が変わります。別スレッドでコルーチンが実行されているのがわかります。

[リスト12]リスト11の実行結果例
main開始: 04:25:20.081962; 3
main終了: 04:25:20.086837; 3
Dispatchers.Default: 04:25:20.087138; 26
longProcess開始: 04:25:20.087413; 26
longProcess終了: 04:25:21.092116; 26

まとめ

 Kotlinのバージョン2.0までに導入された新機能をテーマごとに紹介する本連載の第5回は、いかがでしたでしょうか。今回は、非同期処理を実現する仕組みとしてコルーチンを紹介しました。さて、この連載も、今回でいったんの区切りとなります。全5回に渡り、お付き合いいただきありがとうございました。今後も、Kotlinの進化に注目していきたいと思います。

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 齊藤 新三(サイトウ シンゾウ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。2018年11月時点での登録メンバは55名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook <個人紹介>WINGSプロジェクト所属のテクニカルライター。Web系製作会社のシステム部門、SI会社を経てフリーランスとして独立。屋号はSarva(サルヴァ)。HAL大阪の非常勤講師を兼務。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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