変化への適応力を育てる「3つのスキル」「4つのマインド」
松本氏は、自身のキャリアを通して得た、変化への適応力を育てるための気づきを、スキル、マインド、環境の3つの観点で整理した。
スキル面でのポイントは、「経験を学びに昇華させること」「資格をキャッチアップの取っ掛かりにすること」「逆に変化をキャリアに依存させること」の3つだ。
まず、経験を学びに昇華させること。説明のために、松本氏は「コルブの経験学習モデル」を持ち出した。具体的経験、省察的観察、抽象的概念化、能動的実験というサイクルを回し、1つの経験から汎用的な学びを抽出することで、人は成長するという。過去のプロジェクトでの失敗が、違う場面で失敗を避けるための学びになるとも言える。
2つ目は、資格をキャッチアップの取っ掛かりにすることだ。資格のカリキュラムは体系的に整理されているため、新しい領域を学ぶ際の入口として有効である。また、未知の領域を学ぶプロセスそのものが、新しいことを学ぶというメタスキルの鍛錬になる。
そして3つ目が、キャリアへの「依存関係逆転の法則」の適用だ。依存関係逆転の法則とは、ソフトウェア設計の基本概念の1つで、2つの要素からなっている。1つ目は、「ビジネスロジックなどより重要なモジュールは、データベースなどの下位モジュールに依存してはならず、両者は抽象(インターフェース)に依存すべきである」ということ。そして、2つ目は「抽象は詳細に依存してはならず、詳細が抽象に依存すべきである」ということ。
松本氏は、この考え方をキャリアにも当てはめることを勧める。例えばキャリアが技術や社会的変化に依存していると、外発的な変化が生じた時に、キャリアを追随させるのが難しくなる。しかしキャリアが、ビジネススキルという「インターフェース」に依存していれば、個々の技術や職種は、その実装に過ぎなくなり、変化に対応するのが容易になる。松本氏にとっては、エンジニア時代に培った問題解決能力が、インターフェースにあたるという。そのため、エンジニア業務からITコンサルタント業務への転身も、それほど躓くことはなかったと、松本氏は振り返る。
マインド面でのポイントは、「好奇心を育む」「インポスター症候群と向き合う」「変化への適応は難しいものと開き直る」「一般的なエンジニアの枠に縛られない」の4つだ。
「好奇心を育む」ことはどんな効果をもたらすのか。松本氏は、機会があればとりあえず手を挙げる、迷ったら面白そうな方を選ぶといった習慣が、変化への感度を高めると指摘する。同氏は自身の習慣として、プライベートでバケットリスト(やりたいこと100個リスト)を作っていると紹介し、仕事にも取り入れてみることを勧める。
次に、「インポスター症候群と向き合う」とはどういうことだろうか。インポスター症候群とは、「自分は優れた人間ではないのに過大評価されており、周囲を欺いているかのような後ろめたさや申し訳なさを感じてしまう状態」を指す。エンジニアにはありがちな感覚だが、キャリアの変化が多いと、専門性の軸を作りにくいので、なおさら陥ってしまいがちだと、松本氏は指摘する。しかし、本当に実力がなければチャレンジを任されることはない。任されている時点で信頼されている証拠であり、楽観して自信を持つべきだと、松本氏は励ます。
3つ目の「変化への適応は難しいものと開き直る」について、松本氏は、失敗は当然のことであり、恐れて何もしないことこそがリスクだと指摘する。失敗した場合に実際に何が起こるのかを冷静に見つめれば、チャレンジのコストは思ったほど大きくないことが多い。
そして、最後に「一般的なエンジニアの枠に縛られない」ことを掲げた背景については、エンジニアの業務範囲の拡大を理由に挙げた。いわゆるエンジニアの仕事にこだわらず何でもやることが、逆説的にエンジニアとしての強さにつながる。ビジネスへの貢献を意識し、自分の枠を広げていく姿勢が重要だと説明する。

