※本記事で紹介する役職名は、2026年2月19日に実施したイベント時点でのものです。
行政サービスに欠かせない、誰一人取り残さないための「当たり前品質」
「私たちが向き合っているのは、あるとうれしい『魅力品質』ではなく、ないと困る『当たり前品質』への挑戦です」と松村氏は静かに語り始めた。
視覚障害当事者である松村氏は、DXの進展によって障害者の生活が劇的に便利になったことを歓迎しつつも、現在も存在する高い壁を指摘する。ネットショッピングは特にコロナ禍において、単独での外出が困難な人々にとってライフラインとなり、電子マネーは紙幣や硬貨の区別が難しい人々には不可欠なものとなった。
一方で、アクセシビリティが考慮されていないスマホアプリやWebサイトも依然として多く存在し、スクリーンリーダー(音声読み上げ機能)利用者は自力で予約ができないなどの現実がある。これはほかに替えが効かない行政サービスにおいて、特に重要である。
松村氏は、新型コロナウイルスのワクチンが自力で予約できなかったという自身の過去の経験から、「支援技術利用者の存在がシステムの設計段階で認識されること、そして開発側に当事者が参加することを通じて構造的に解決することが必要です」と述べる。そのうえで「開発サイドがアクセシビリティについて悩んだ際、気軽に聞ける人がそばにいる。その存在が現場を変える第一歩になると信じています」と語る。
松村氏がGovTech東京に入職したのは、まさに開発チームの内部からアクセシビリティの啓発を進めるためだ。共にプロダクトを作る仲間として当事者が隣にいること。その距離の近さが、後付けの対応ではない、システム設計の初期段階からアクセシビリティが根付いたプロダクトを生む鍵となる。
