アクセシビリティはAI時代にますます重要となる
松村氏のバトンを受け、エンジニアの立場から具体的な実装手法を語ったのは山内晨吾氏だ。山内氏は、民間企業での経験を経て「行政領域への興味」からGovTech東京に入職。同氏がまず強調したのは、行政サービス特有の「責任」の重さだ。民間サービスが市場シェアやユーザー数を追うのに対し、行政サービスが追うべき指標は「リーチ(到達)」、すなわち、どれだけ多くの人に届けられているか、そして結果として誰ひとり取り残されない状態にどれだけ近づけているかである。
「アクセシビリティは機能のひとつではなく、スタートライン。サービスが届くための必須条件です」と山内氏は断言する。GovTech東京が開発する「東京都公式アプリ(通称「東京アプリ」)」は、各種申請や給付、防災情報の発信など、あらゆる行政手続きの入り口となることを目指している。そこでは、子どもから高齢者、そして障害のある人まで、多様なユーザーが迷わず最後まで操作を完結できなければならない。特定のユーザーが操作不能になるということは、政策自体が届かないことを意味する。
山内氏は「政策を作って終わりではなく、それをあらゆる人々にちゃんと届くように設計する。それが私たちの役割です」と述べ、行政DXにおけるエンジニアリングの面白さとやりがいに言及。単にアプリのUIを整えることだけではなく、東京アプリというサービスを「誰にとっても使いやすい」ものとして設計することの重要性を強調した。そのために重要となるのがアクセシビリティなのである。
加えて、アクセシビリティ対応をすることは、AI時代においても重要となる。例えば、画像に適切な代替テキストを付与することは視覚障害者への情報提供であると同時に、AIが正しくコンテンツを理解するための「オリジナル情報の提供」でもある。人にもAIにもアクセシブルな環境を作ることが、これからのエンジニアに求められる設計思想と言えるだろう。
