MDDロボットチャレンジからマジカルスプーンへ
MDDロボットチャレンジの技術を教育に生かそうというのがマジカルスプーンと呼ばれる中学高校の情報教育向けプログラムです。ここでは、マジカルスプーンのマジックの段取りと、その種明かしをしましょう。
マジカルスプーンには、標準機Halunaの開発に伴って生まれたアイデアがあれこれと使われています。その1番重要なものが、超音波による符号通信です。
マジカルスプーンの授業では、生徒が自分たちの考えで設計した飛行船指令の命令コード体系を使ってHalunaの飛行制御を行います。実際の飛行では、設計され紙の上に書かれた命令コードをHaluna飛行船に送るために、一定のテンポで金属スプーンをたたくのです。金属スプーン同士をたたき合わせると、カン、カンというかん高い音がしますね。実は、この可聴音と共に40000ヘルツに及ぶ超音波が発生しているのです。飛行船を飛ばす地上基地は、40000ヘルツの超音波のパルスを受信して符号としてエンコードし、その意味する命令コードを無線(ZigBeeと呼ばれる産業用の2.4GHz帯Rf通信)で飛行船に伝送します。飛行船は、受信したコードをデコードして推力モータの制御を行うわけです。
つまり、設計した符号体系に沿って金属スプーンをたたくと飛行船ロボットHalunaは命令どおりに飛行するというわけです。中学生、高校生が自ら設計した情報論理が魔法のスプーンを通じて飛行船に届くというわけです。この妖しくも素晴らしいシステムがMDDロボットチャレンジの発展系であるマジカルスプーン教材なのです。
この通信制御方式は、MDDロボットチャレンジのためのHaluna開発において、重量増加ゼロのマンマシンIF機能追加を行なった方法の転用です。
4年前にMDDチャレンジ第1回が開催されました。初回のチャレンジでは、Haluna標準機の飛行前整備不良や準備不足によって飛行というよりも浮遊に近い結果に終わりました。第2回のMDDチャレンジのためには、飛行船のエンベロープ開発から周到な準備を行いました。また、搭載電子システムには、飛行前に次の飛行のモードを指定するためのインターフェースが必要でした。ただし、模型飛行船は1gの重量増加であっても飛行特性上不利になるため、ハードウェアを増やさずにマンマシンIFを増設したかったのです。
前述したように、飛行船Halunaには超音波ソナーが備わっています。このソナー、飛行中は位置や高度を求めるための重要な装備なのですが、飛行前には何の役目も果していません。そこに目をつけて、飛行前に超音波パルスをソナーのレシーバに送り込んでモードを決定するようなIFにできると目論んだわけです。超音波の発生源としては、犬笛、ゴキブリ撃退装置などいろいろな候補がありました。しかし、犬笛は可聴域のピーッという耳障りな音が筆者の家族のヒンシュクを買いました。ゴキブリ撃退装置は良い性能がでましたが、符号を生成するためには不向きでした。
結果として、原始的ですが練習さえ積めばスプーンが1番頼りになるとわかったのです。

マジカルスプーンの主旨と教育内容は、本連載の第2回の香山先生の解説を参照してください。マジカルスプーンが、模型飛行船という見ているだけでわくわくする教材を使って、情報科学や技術の基本を学ぶための方法であることがよく分かるはずです。
