8日に開催された「Firefox Developers Conference 2009」では、「アドオンでWebの未来を切り開く!」とのタイトルにふさわしく、UbiquityやJetpackの開発に携わるAza Raskin(エイザ・ラスキン)氏と、米Mozilla CorporationエバンジェリズムディレクターのChris Blizzard(クリス・ブリザード)氏が基調講演を行った。
Aza Raskin氏は、まず日本語で「みんな元気? ぼくは時差ボケで元気なかったけど、つけ麺食べたら元気出た」と場を和ませてから、近未来のブラウザの進化を「The next 3 years: You-centric browsing.」と題して語った。なお、Raskin氏は日本に留学経験があり、ラーメンが大好きだそうだ。
Raskin氏は、Webはいまやソーシャルな場に変化し、またそれを利用するユーザーにも変化があり、そのためブラウザもパーソナル化が進んでいるという現状から、次にはブラウザがエージェントとなってユーザーとWebとの間を積極的に仲介し、ユーザーにとってブラウザ自身がサービスとなるような「You-Centric(あなた中心)」という考え方を、「identity、social、integrated、make the web revolve around ...、hackability」という5つのキーワードで示した。
まず「identity(アイデンティティ)」とは、ユーザーのアイデンティティ情報をブラウザが把握するということだ。それは、HTML5の「local storage」によってローカルに蓄えられ、サーバーサイドのアプリケーションの書き方も変わる。効率がよくなり、シンプルなAPIで支払いなどを行うことが可能になると語った。
次に「social」とは、友人のことを示している。つまり、ユーザーが友人とどうつながるかもブラウザが理解できるようになるということだ。ソーシャルサイト間の壁をブラウザが取り払い、ブラウザ自身がソーシャルアプリケーションになる。メールやマイクロブログやRSSなどをローカルに収集し(参考:Mozilla Labs Raindrop)、自分のソーシャルグラフを利用したシンプルなAPIで、メールを送信するなどのコミュニケーションが実現できるようになるとのこと。
「integrated(統合性)」では、PCでできることはすべてWebで実現可能になると語った。Chris Blizzard氏の講演でも「scriptable hardware」として語られるハードウェアサポートにより、カメラをUSBに接続し、データを吸い上げ、レタッチして、Webにアップするまでがすべてブラウザ上でシームレスに可能になるという。すべてのデバイスは、Web上で利用できるようになるべきだと語った。
続いて、「make the web revolve around ...」として、「Ubiquity」が例に挙げられた。ここでは、Task-centric(タスク中心主義)によって、サービスのほうからユーザーに近づくべきと語られた。なお、Ubiquity利用者は40万人になるそうである。
最後の「hackability」のソリューションの1つとして、ここで「Jetpack」が紹介された。Jetpackは、現在広く開発されている「拡張機能(extensions)」より簡単に開発できるアドオンの仕組みで、セキュリティ上の利点もあり、リスタートも不要。Firefox 4ではデフォルトの機能拡張システムになるとのことだ。
なお、午後に開かれたRaskin氏とPiro(下田洋志)氏、Amachang(天野仁史)氏を交えたトークセッションでは、Firefox 4で旧来の拡張機能とJetpackの立場が逆転し、Jetpackが機能拡張の9割程度を占めるようになる、と語られた。ただし、Firebugのようなコアなものは無くならず、拡張機能と住み分けされるという。
Raskin氏は最後に、ブラウザはこの先3年間これら5つを一緒にした方向に進んでいく、それが「皆さんを中心に据えた(You-Centric)」ブラウザだとまとめた。
【関連リンク】
・Firefox Developers Conference 2009 - アドオンで Web の未来を切り開く!
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