はじめに
マイクロソフトがVisual Studio2010 Beta2を公開し、F#は「F# October 2009リリース」が入手可能になりました。ダウンロード、詳細情報は下記のサイトを参考にしてください。
VS2010 Beta2のF#に関する主な変更点は、次のとおりです。
- Visual Studio2010 Beta2 で.NET 2.0/3.0/3.5/4.0 とSilverlight 2/3のアプリケーション作成が可能
- オフラインヘルプ機能
- エラーコード、ユニオンと他F#型(type)のデバッグ表示の改善
stdin(205,14): error FS0001: This expression has type string but is here used with type int
stdin(205,14): error FS0001: This expression was expected to have type unit but here has type int
F#自身に関して言えば、例えば、ある属性の記述が省略可能になったなど、シンプル化がすすみ(5ページ目コラム「【参考】」参照)、構文がより整理されています。
「C#プログラマのためのF#入門」の第4回目は、継承とインターフェイスをテーマに、F# October 2009リリース(以降、Beta2)で新たに改善された機能も含めて紹介します。
継承
クラスを宣言する際に、inheritキーワードを用いて継承関係を定義できます。継承できる親クラスはC#同様に1つだけです。親クラスの指定がない場合は、Objectクラスの派生クラスになります。
継承のルール
親クラスにて宣言されたlet束縛やコンストラクタのパラメータはその親クラスにてprivateであり、派生クラスからでもアクセスできません。
type クラス名(...) = inherit 親クラス名(...)
下記のリスト3はtestBaseClassクラスを継承するtestChildClassを宣言しています。testChildClassをインスタンス化すると、その親クラスのtestBaseClassとtestChildClassのコンストラクタによるlet束縛とdo式が両方実行されます。
//親クラス type testBaseClass(x0 : int) = let mutable x = x0 + 5 do printf "親クラスのコンストラクタ %d \n" x //派生クラス type testChildClass(y: int) = inherit testBaseClass(y * 2) do printf "派生クラスのコンストラクタ %d" y //派生クラスのオブジェクトを作成すると親クラスと派生クラス両方のコンストラクタが実行される let testObj = new testChildClass(3);;
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親クラスのコンストラクタ 11 派生クラスのコンストラクタ 3
派生クラスをインスタンス化すると、派生クラスだけではなく継承関係にある親クラスのコンストラクタも実行されます。派生クラスから親クラスのオブジェクトを呼ぶ場合はbaseキーワードを使用して下記のように記述します。”abstract member”や”override”を使用したメソッドの宣言は後半で解説しますので、ここではこれらがメソッドであり、”base”キーワードを使用すると親クラスのオブジェクトを呼び出せることだけを理解してください。
open System type testBaseClass() = //親クラス abstract member testMethod : int -> int default this.testMethod x = x + 1 type testChildClass() = inherit testBaseClass() override this.testMethod x = 10 + base.testMethod x //base.の後に呼び出すオブジェクト名 let testObj = new testChildClass() Console.WriteLine(testObj.testMethod 5);;
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