しのぎを削る日本版twitterクローン
2009年に最もブレイクしたWebサービスは、やはり「twitter」だろう。2007年のSXSWでブレイクしたtwitterは、2009年6月のイラン大統領選後の騒動でRetweet(RT)とハッシュタグによる情報の拡散と集積の力を見せつけて、確実に次の段階に入ったことを感じさせた。もっとも、それが日本国内に入ってきたときにRTのパワーを感じさせた事件が「ヒウィッヒヒー」だったというのは彼我の違いを感じさせなくはないが、流行り物が好きなギークやマーケッターだけでなく、確実に一般ユーザーにも「つぶやき」が広まっていることを感じさせる1年だった。
それを受けて、12月に芸能人ブログの雄であるアメーバがミニブログ(twitterクローン)市場に本格的に参入した新規サービス「Amebaなう」は、この1年を象徴するようなサービスだと言えるだろう。Amebaなうは開始直後にCSRF脆弱性が発覚し、タイムラインで「APIはないの?」「CSRFがあるよ」というほのぼのした会話もなされていたが、そういった一部のスパム騒ぎを除けば概ね良好な滑り出しだったと言ってもよいかもしれない。もっとも、芸能人ブログと同じような大きな成功を得られるかどうかは2010年の注目ポイントとなるだろう。
ところで、Amebaなうは日本初のtwitterクローンというわけではない。2007年にミニブログが紹介されてから、日本国内でも多くのtwitterクローンがローンチされ、うちいくつかは既に持ちこたえられず閉鎖を余儀なくされている。ひとり勝ちのtwitterが大きすぎるためだろう。Google Trendsでいろいろな国内ミニブログを見たところ、現状ではWassr(モバイルファクトリー)、はてなハイク(はてな)、つぶろぐ(excite)、Timelog(ファインアーク)、ログピ(paperboy&co.)の5サービスがしのぎを削っているようだ。
水面下でリニューアルが進む「はてなハイク」
この日本5大つぶやきサービス中の「はてなハイク」が、実はひっそりとリニューアル版のベータテスト中なのだが、これがなかなか興味深いサービスとなっている。ひっそりとというのは、完全招待制のクローズドベータでテストされているからだ。
ブログやソーシャルブックマークというWeb 2.0的なサービス展開で定評のある「はてな」であるが、リニューアル版「はてはハイク2」は既存の「はてなハイク」とはまったく別のコンセプトで企画された、ケータイ向けのサービスなのである。それもiPhoneのようなスマートフォンではなく、いわゆる「ガラケー(ガラパゴス携帯)」と揶揄される日本のフツーのケータイをメインターゲットに開発が進められている。
「はてなハイク2」の特徴は、ケータイがメインということのほかに2つある。1つは、ユーザーのソーシャルグラフにおいて、ミニブログ型のフォロー関係ではなく、SNS型の「ともだち」モデルを採用していること。招待したり申請したりしたユーザー同士が双方向に承認して、はじめて「ともだち」になれる。そして自分の発言は「ともだち」だけに見せることができるなど、公開範囲を設定できるところもSNSに近い。
もう1つの特徴は「はてなスター」との連携で、面白いと思った発言にはスターをつけることができる。これはtwitterのFAVと同じようなものだが、外部サービスを使わずとも自分のどの発言に誰がスターを付けたのかが分かるのは便利だ。また、この「はてなスター」をつけるためのケータイ用の新しいインターフェースも開発されており、スターを選ぶと画面を流れ星が横切る楽しいインターフェースになっている。
一方で、twitterとの相互マルチポストはおろか、はてなダイアリーやはてなハイクとの連携もできない。これは初心者がサービスに入ってきたとき、サイト外のサービスへのリンクがあっても戸惑ってしまうからだ。mixiの日記などでも、特にケータイから見ているときには、外部ブログを設定されていると見に行くのが面倒に感じるが、そういう心理を配慮してのことだ。
そのためかRSSやAPIもまだ提供されておらず、外部クライアントもない。PC向けのUIや、iPhoneアプリすらまだ用意されていない。ケータイのインターフェースに特化した、シンプルなつぶやきサービスに徹している。スキンが数多く用意されていたり、アイコンの「体」を着替えることができるといった、ケータイサービスらしい遊び心も盛り込まれている。
また、GPS連動も充実している。「イマココ!」機能で自分がいまいる場所を地図を表示できたり、GPS情報付きの写メを送れば写真と地図が両方表示される。「イマココ!」のログを軌跡として表示できる「イマココマップ」などには、はてならしいユニークさが表れていると言えるだろう。