今、もっとも注目されているスマートフォン開発のジャンルでも、その開発の自由性からひときわ注目を集めているAndroid開発。2月18日のデブサミ2011では、Android女子部が「次世代のモバイルアプリ開発」をテーマにセッションを行った。
Android女子部とは、2010年12月に発足したAndroidが好きな女性なら誰でも参加できるコミュニティ。端末をデコレーションする「端末デコ講座」の開催や、年2回のABCでの女子部セッションへの登壇、女子部名義のアプリもリリースしている。
今回、女子部から登壇したのは、トヨシマメグミ 氏、都築博己 氏、あんざいゆき 氏、もりひめ 氏の4名。セッションは、アプリ作成者側の目線から、開発者へ伝えたいことをテーマに行われた。
女子目線で見る、がっかりなアプリとは?
今回、デブサミの講演に当たって、女子部では「ちゃんとAndroidアプリを使いこなしている女子が思うこと」をテーマに、アンケートを実施。いわゆる「がっかりアプリ」とはどんなものかについて検証した結果を、都築博己 氏が発表した。
アンケート結果によると、アプリケーションを選ぶ際には使いやすさ・機能・デザインの3点を重視。イケてるアプリには300円台までならお金を払うとのこと。女子部メンバーの考える「あと一歩!」のがっかりアプリの具体例が、以下だった。
- 文章編
- 日本語が明らかにおかしい、誤字、脱字
- 送りがなが一貫していない
- 作った人や開発する人にしかわからない難解なヘルプ
- 画面操作編
- 使い方がよく分からない、直感で操作できない
- タップ回数が不必要に多い
- ロングタップじゃないとメニューが出ない(最初はロングタップでメニューが出ると言うこと自体に気付かないため)
- 画面の移動がわかりにくい
- インタラクションがなめらかでない
- バックキーの挙動が画面によって違う
- デザイン編
- デザインがださい。アイコンがとにかく残念
- デザインがマンガだったり、マニアック
- そのほか
- メールやツイッターなど、即時に送信されない
- Intent連携機能が不足している
- 表示はできるのに編集ができない
- 機能が足りない
がっかり感をなくすための具体的な実装方法
上記の問題を解決するため、あんざいゆき 氏が、画面操作におけるがっかりポイントの具体的な改善策について解説を行った。
ユーザーがストレスを受けないような操作性を実装するためのポイントは、画面遷移の全体にかかる時間を減らし、ユーザーに終わりまでの道筋を明示しながら、ショートカットボタンなどでタップ回数を削減するということ。画面遷移の問題は、一般的にアンドロイド開発で行われる1画面に1Activityといった考え方ではなく、複数画面を1Activityで行うよう実装することで、遷移にかかる時間を短くできる。遷移にかかる時間は、タイトルバーやProgressDialogで表示することで「いつ終わるか分からない」というユーザーの負担軽減が可能。タイトルバーやPopupを活用すれば、タップ回数も削減することができる。
アプリ操作のアイコンも、画面に常にあるものは4個程度にし、それ以上多くなる場合やダッシュボード形式で表示する場合はタイトルをつけるようにする。アイコンが多いと、ユーザーが覚えられないからだ。
スマートフォンでの実装ならではの横画面の対応も、縦画面用のレイアウトをそのまま使用するのではなく、横画面用のレイアウトを用意する必要がある。そのほか、トリセツを見なくてもわかるよう、ダッシュボードの採用や、初回起動時の使用法の記載、ユーザーが全体を把握しやすいようタスクの達成までを3~5ステップ以内に押さえることなどが挙げられ、初めてのユーザーには分かりにくいロングタップは別の手段(QuickAction、Action Bar、Menu、Dialogなど)で置き換えられるかを考えることもポイントだと説明した。
さらに、あんざい 氏は「ANR(Application not Responding)は絶対に回避すべき」と述べ、UIに負荷を与えず、画像のダウンロードや認証処理などの重い処理を実装できるAsyncTaskクラスの使用方法を解説。アプリ連携関係の面では、ACTION_SEND、ACTION_SEARCH、ACTION_VIEWなどに対応すべきだと語った。
また、デザイン面では、余白を多めに、色のベースは3色まで、アイコンの大きさやコンテンツの位置を揃える、送りがなの統一、タイトルバーなどで各画面の一貫性をもたせることで清潔感と統一性を重視することが重要だと述べた。
これからのアプリで考えておいた方がいいこと
最後にもりひめ 氏が、自分の作成したアプリを埋もれさせないために「アプリを開発する上で考えておいた方がいいこと」について解説した。
まず、自分の作成したアプリをどんな人に使ってほしいかを想像し、最終的には「○○に使って欲しい!」と具体的な名前が出るぐらいまでイメージを具体化して落とし込むのがポイント。次に、そのアプリが使われるシーンを想像し、浮かんだアイデアを書き出していく過程で、イメージを具体化していく。
そして、使用する人、使用される場所に対して誠実な気持ちを持ち、楽しみながら自信を持ってマーケットに出すことが重要だと述べた。
また、Androidアプリ開発の押さえておくべき視点を、女子部作成「アプリ作成ガイドライン」として公開。このガイドラインは、女子部ブログ上からダウンロードできる。もりひめ 氏は、「開発者の皆様それぞれが思うオリジナルのルールに、このガイドラインでいいなと思った部分を取り込んでいただき、アプリ作成のための参考となれば」と語り、セッションを閉じた。