はじめに
JSON(JavaScript Object Notation)形式のデータは、XML形式よりもシンプルな記法でデータ構造を記述できることから、Webサービスで広く用いられています。
JSONはJavaScriptのオブジェクトのリテラル表現がもととなっているため、JavaScriptではそのまま読み書きすることができます。一方、C#などの.NET Framework上の言語では、JSONデータをいったん.NETのオブジェクトに変換した上で処理を行う必要があります。
この記事では、.NET Frameworkの言語からJSONデータを読み書きするためのライブラリとして、.NET Framework標準のDataContractJsonSerializerと、CodePlexで公開されているDynamicJsonを取り上げ、それぞれの使用方法について解説します。特にDynamicJsonを使うことでJSONデータの扱いが格段に楽になるので、注目してください。
対象読者
.NET Frameworkでの開発経験があり、JSONデータの処理に関心がある方。
必要な環境
- Visual Studio 2010(Visual C# 2010 Expressでも可)
.NETでのJSON処理
.NET FrameworkでJSONデータを読み書きするには、表1のような方法があります。
DataContractJsonSerializer | DynamicJSON | |
対応する.NETバージョン | 3.5以上 | 4以上 |
事前のデータ定義 | 必須 | 任意 |
公開URL | .NET標準 | http://dynamicjson.codeplex.com/ |
DataContractJsonSerializerは.NET Framework標準のクラスで、.NETのクラスとJSONデータを相互に変換する機能を提供します。DataContractJsonSerializerは通信用のフレームワークであるWCF(Windows Communication Foundation)の機能向上に伴って.NET Framework 3.5で導入されたクラスです。
WCFは.NETのクラスをWebサービスとして公開する機能を持っており、.NETクラスのXMLデータへの変換に対応していました。さらに.NET Framework 3.5からはJSONデータへの変換がサポートされるようになりましたが、ここで使用されているのがDataContractJsonSerializerです。なお、DataContractJsonSerializer自体はWCFとは無関係に使用できます。
DynamicJSONはneue cc(ノイエ シーシー)氏開発のオープンソースのライブラリで、Microsoftのコミュニティ開発サイトであるCodePlexで公開されています。DynamicJSONは.NET Framework 4の新機能である動的な型(dynamic型)を使うことで、対象とするデータ構造の定義なしにJSONデータの読み書きを行うことができます。dynamic型とJSONの相性は非常に良く、さまざまなWebサービスで公開されているJSONデータを.NET Frameworkで処理する上で、有用なライブラリとなっています。
本稿では、これらの2つの方法でJSONデータを処理する手順を解説します。
本文で解説した方法のほか、JSONデータを扱うためのライブラリとしては、CodePlexで公開されているJSON.NETがあります。JSON.NETは.NET Framework 2.0など古いバージョンにも対応するライブラリで、.NETのクラスとJSONデータを相互に変換する機能などを持っています。