人もデータもシステムも統合する時代へ
ライオンズ氏の講演が終わり、再び登場したウィック氏は、次に「インテグレーションはITにとどまるものではない」と話を切り出した。今やインテグレーションとはビジネスに関わるあらゆるもの——人、プロセス、データ、資産、アプリケーションなど——を統合することを意味しており、それはモバイルソリューションであってもソーシャルアプリケーションであっても変わらない。
今月、IBMビジネス・バリュー研究所がオックスフォード大学経済学部とともに行った「Global transformation from the inside out(根底からくつがえす全世界的な変革)」という研究結果を発表。グローバル企業のCIOやCFO、上級副社長など1000名を対象に調査したもので、「自社のグローバルビジネスを変革するのに必要なこと」について次のような回答が得られたという。
ビジネスプロセスの最適化
調査対象の35%が、プロセスの自動化をグローバルインテグレーションの鍵であると回答した。どのプロセスか、誰がやるかなどを問わず、あらゆるものをシームレスに統合していく。また、これは支社単位ではなく、グローバルに実施することが不可欠。
知識の共有
エキスパートが持っている知識を深く理解し、ビジネスプロセスに組み込むだけでなく、その適用箇所までつかんでおく必要がある。そのために調査対象の43%が、社内のソーシャルネットワークを利用して知識や情報を交換している。
企業文化
パフォーマンスの高い企業は、常に目標を高く持ち、改善を継続している。調査対象の50%が、常にそうした環境であればイノベーションが生まれるといっている。また、簡単ではないがデザイン思考により、ユーザーにすばらしい体験を提供することが最も重要である。
テクノロジー
調査対象の86%が、企業が変革を遂げるための鍵としてテクノロジーを挙げている。しかし、テクノロジーだけを高度化しても不十分である。先に挙げたビジネスプロセス、知識、企業文化まで変える必要がある。
ウィック氏はこうしたインテグレーションの施策を実践している会社として、米コリールライフサイエンス社を紹介。同社は遺伝子情報から、その人に最適な投薬計画を割り出すサービスを行っている。
患者には、ほおの内側を綿棒でこすって採取するだけ。そこから取り出したDNA情報をもとに、同社の長年のリサーチとIBMのパートナーシップにより開発されたシステムが、非常にシンプルで洞察に富んだ情報を生成。この情報によって、医師はこの情報により患者に効く薬や適切な投薬量、副作用の有無を把握でき、本当の意味でのテーラーメイド投薬を実現した。
同社では、2007年には1000万ドルかかったDNA解析を数百ドルで行う。ウィック氏に壇上に招かれた同社CEOのスコット・メギル氏はその理由について、グローバルインフラで何千ものDNAを数分で解析可能になったことを挙げる。
DNAの解析や医師に伝える情報の生成から、医療費に関わる米国の複雑な医療保険システムへの対応まで、一連のプロセスはIBM Business Process Manager(以下、WebSphere BPM)をオーケストレーションエンジンにして構築。IBMが今年3月に買収を完了したDBaaS(DB as a Service)「Cloudant」によって、NoSQLデータベースの力も活用できたという。これらのシステムは、すべてIBMのIaaSサービス「SoftLayer」上で稼働させている。
このソリューションはたった4か月で開発。ソリューションの着想から実装、収益を得るまでの期間は従来の数分の1に短縮されたといい、これを可能にしたのはwebSphere BPMのおかげであるとメギル氏は説明。また、このソリューションはIBMがベンチャービジネスの育成を目的に行ったコンテスト「SmartCamps」で優勝している。メギル氏は、コンテストの過程でIBMのベンチャーキャピタルのメンタリングを受けられたこと、IBMのエコシステムの力を体験できたことに謝意を表した。
