紙との連携やデータの活用で広がる「デジタルインクの実用化」
データの軽量化と再現性に優れ、OSやプラットフォームの境界を越えてデジタルインクを活用できる「WILL」。その活用、応用によって、どのようなことが実現できるのか。新村氏は「ぜひ一緒に考えてほしい」と呼びかけながら、具体的な活用イメージとヒントを紹介した。
まず一つ目の着眼点は「アナログとデジタルの融合」だ。2014年のワコムの調査では、まだまだ「手書き」が好まれる傾向があり、それは基本的にはいつの時代も変わらないと考えられている。そこで、紙の書き心地を活かしたまま、デジタルデータのメリットを利用する、つまりは”いいとこ取り”をしようというわけである。
たとえば「紙の下に敷く、センサーが入ったクリップボード」や「ペン先がボールペンになっているデジタルペン」などで、紙に書く感覚でデジタル化ができればどうだろう。紙に書いたものをデジタルに変換し、さらに文字変換を行えば、正しいかどうかの判定が用意になる。さらには書き順など、これまで見えていなかったものについても情報を得ることができる。
これが実用化すれば、テストの答案の丸付けも簡便になり、宅配便の受け取りサインも効率的に管理できる。紙で書く必要があるシーンで、紙で書きつつ、デジタル化することで、新しい価値を得ることができるというわけだ。
そしてもう一つ「照合アルゴリズムの活用」も大きなポイントだろう。たとえば、従来のサイン照合は、「目に見える視覚情報」であるため、まねることがさほど困難ではない。しかし、デジタルデータであれば、目に見える筆跡に加え、空中筆跡、筆圧、速さなど、非視覚情報も含まれており、それらを活用する「動的サイン照合」によって、より精度の高い照合が可能になる。ただし、日本を含めたアジア言語の場合、ストロークが短く、特徴が出にくいため、さらに精度を高めるための今後の技術開発が必要だという。
とはいえ、そうしたデジタルデータを保有していること自体が、セキュリティを高める効果があるようだ。たとえば、スペインの銀行ではデジタルインクによるデータ保有によって、偽造などの抑止力が高まり、たとえ偽造事件があっても裁判になる前に解決するようになったという。
新村氏は最後に「今後、デジタルインクは多方面で活用され、様々な価値を生み出すことは間違いない。ぜひとも、皆さんの技術力と多彩な連携の中から新しい価値を見出して欲しい」と、会場に向けてデジタルインクのさらなる活用を訴え、セッションを終えた。
なお、「WILL(Wacom Ink layer Language)」は下記のサイトにて情報を提供しているとのこと。興味のある人は、チェックしてみてはいかがだろうか。