この連載で扱うハッカースペースとはどういうものかについては、初回の記事をご覧ください。
工業都市トロンハイムでのMaker Faire
昨年に続いて、ノルウェーの工業都市トロンハイムのMaker Faireに行ってきました。
トロンハイムは1000年以上の歴史がある、ノルウェーを代表する工業都市なのですが、規模でいうと人口16万人と、日本でMini Maker Faireが行われている大垣市や山口市と同規模の小都市です。
人口こそ少ないですが、トロンハイムはArduinoで採用されているATmegaシリーズのプロセッサを作っているAtmelや、スマートホンのほとんどが採用しているARMアーキテクチャの研究所があり、ノルウェー科学技術大学(NTNU)がキャンパスを構える研究の街でもあります。Maker Faire Trondheimは出展102プロジェクト、来場者1万人を数える大規模なフェアでした。
ジェットカーが轟音をあげる
ノルウェーは世界有数の造船国です。NTNUは自動車、船舶などの工業に強みを持つ大学で、Maker Faireには毎回様々なプロジェクトを展示しています。
学生が作ったフォーミュラカーは、学生対抗のフォーミュラカー選手権で毎年優秀な成績を収めているとのこと。毎年一台のペースで新設計のフォーミュラカーを作っている、実際のF1並のプロジェクトです。
この電気スクーターも研究室からのプロジェクトで、既存のスクーターの駆動系を入れ替えて電気スクーターにしたもので、3つのArduinoで制御されています。
ある意味今回の象徴の一つになっていたのがこのジェットカー。一人乗りのカートにジェットエンジンを搭載したもので、最終日の夕方に起動実験が行われていました。
点火実験では、会場中央の広場にジェットカーが引っ張り出され、安全確保のためにエンジン後ろ50mほどが空けられた後、観客全員に耳栓が配られる物々しさ。
実際、点火・燃焼時の轟音はかなりのもので、起動時に空気を送り込むエンジン式のブロワがそもそも大音量を立てるのですが、ジェットエンジンに火がついてからはお互いの声もまったく聞こえない轟音。せいぜい数分の燃焼で、あっという間に真っ赤に焼ける排気口と、立ちこめる燃料のにおいは、会場のテンションを一気に上げていました。
こういう動力型のプロジェクトだけでなく、「リカンベント型の自転車にテントとベッドを積み込んで、キャンピングカーのようにした自転車」みたいなプロジェクトもあります。こちらは工業デザインの、製品開発に近い研究のプロジェクトのようです