この連載で扱うハッカースペースとはどういうものかについては、初回の記事をご覧ください。
MakerConとは?
DIYのイベントMaker Faireにつづいて、Maker Conference(MakerCon)というイベントも開かれるようになってきています。
MakerFaireはDIYのイベントです。「自分たちで何かをつくるプロセスを喜ぶ」DIYに、中心も周辺もヒエラルキーもなく、会場の制約などがあって必ずしも理想どおりにはいかないとはいえ、出したい人が全員出せるのが本来のフェアの姿と言えるでしょう。
一方でそれは「中心」や「論点」を見づらくさせることにもつながります。メイカームーブメントは社会的な注目が集まっていて、アメリカの主要な国策の一つにもなっています。まだ成長し続け、変化を続けているムーブメントでもあり、みんなが注目するトピックをキーマンが話して輪郭をハッキリさせたり、課題を認識させることを求めている人も多く、MakerConはそのために開かれています。
ニューヨークのMakerFaireで世界中のキーマンが集まるのをきっかけに、MakerFaireに2日先だって、2015年の9月24日、ニューヨーク科学ホールにて、MakerCon NY 2015が開催されました。8時間50分にもおよぶカンファレンスの動画はここで公開されていて、最前列でNecomimiをつけている僕の姿も見られます(笑)。
ニューヨーク市でのMakerCon
アメリカは、「自分たちでゼロから作った実験国家」という精神をまだ色濃く残している国です。誰でもアメリカ人に「なれる」し、どの都市も何千年もあるわけではなくて、人が住むためにデザインされたものです。
ニューヨークはその実験国家という側面の象徴でもあり、最先端でもあります。テクノロジーやコードは、未来を切り開く道具です。ニューヨーク市は市政府にCTO(Chief Technology Officer)を設け、アメリカの中でもさらにテクノロジー、情報産業に比重を置いた振興をする試みを始めました。
もうひとつ、ニューヨークは世界中から移民が集まる街でもあります。僕が滞在していたクイーンズ地区では、ストリートごとに韓国系、チベット系、イラン系など様々なエスニシティの生活が営まれていました。
ニューヨークでのMakerConは、そういう都市の性質を大きく反映したイベントとなりました。
「マッドサイエンティストも住める」ニューヨーク市CTOのスピーチ
MakerCon NYは、MakerMediaの発起人デール、ニューヨーク科学ホールの館長につづいて、ニューヨーク市CTOのMINERVA TANTOCOの挨拶からはじまりました。
ニューヨークはなによりもDiversity、多様性の街だ。人々も産業も広告も、あらゆる点で多様性があり、一つにまとまるということはない。それはデメリットでもあるが、イノベーションのヒントでもある。
この街ならどんなにマッドなサイエンティストも生活することができ、スタートアップの起業家と生活者と研究者が共に生活しながらイノベーションを生み出す、Living Labとしてなりたつ。この街には30万種類の職業があり、世界的な大富豪も住んでいる。
今後10年でニューヨークのすべての学校にコンピュータサイエンスのコースをつくる。ニューヨークには多くのIT企業があるが、それらの会社にサマーインターンのコースを設け、学生がエンジニアとしての体験を得られるようにする。
MINERVAのスピーチは、まとまりづらい多様性をむしろ武器にして未来を作っていくやりかたについて語られました。